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Webブランディング戦略

JAGAT技術フォーラム座長
和久井孝太郎

従来、企業や組織のブランディング戦略では商品やサービス自体の良さに加えて伝統的に紙メディアが重要な役割を果たしてきたが、Web2.0時代に入ってWebサイトを活用したいわゆるWebブランデングの成功事例がいくつも報告されるようになってきた。その一つとして野村證券の例がある。

野村證券では1996年1月に1Webサイト(会社案内20P)を立ち上げ月間アクセス数1.5万件であったものが、2005年3月現在15Webサイト、総ページ数20,000P、月間アクセス数7億件に達し、外部への説明力、部内のコミュニケーション力ともに飛躍的に向上したと言われている。

野村證券のプロジェクトにおいて重要な役割を果たしたのが白鳥陽裕氏率いるNRIウェブランディア株式会社のメンバーである。

この会社のホームページには、次のようなことが書かれている。

企業ブランドとは、企業と市場・顧客との対話によって生まれ、培われていきます。そして、ネットワーク社会においては、Webサイト戦略が重要な鍵を握っています。NRIウェブランディア社は、企業ブランド・マネジメントの専門会社として、1995年に誕生しました。

私たちが目指すもの

  1. クライアント企業とそのステークホルダーとの関係の好循環を醸成し、企業の競争力に貢献すること。
  2. 価値の高いコンテンツを企業と共に大量に創出し、社会全体の知識レベル向上に貢献すること。
  3. ネットワーク社会の正しい発展を模索し、日本経済の発展に寄与すること。

私たちが大切にしていること

  1. 我々の知恵は、お客様と共に開発してきたものです。
  2. 我々の技術力は、コンテンツを見る人の立場で考え、生み出されたものです。
  3. 好奇心、純粋な気持ちを忘れずに、もっともっと価値あることを探し続けます。

このような思いは、ITC革命のさなかにある全ての企業と組織、そして個人にも当てはまるものである、と筆者は考える。

同社のWebサイトの「リサーチレポート」に、論文『Webサイトを活用したコーポレートブランド戦略』が載っている。その中のFig.4は、Web2.0時代にWebサイト・リニューアルを検討している関係者にとって大いに参考になる。


Fig4:さまざまなリニューアル(出典:NRIウェブランディア株式会社Webサイト)

Fig.4には、会社でもその他の組織でも、ブランド価値を高めるために必要な努力の主な項目が配置してある。このうちで、左下隅にはシステム管理や顧客情報管理(プライバシー保護)等が配置されているが、これは会社や組織の基本的なシステムに関連するものであり、現在の法体系や社会常識に照らして確りと管理されるべきものであり、できて当たり前、できなければ社会的に制裁を受ける類の項目である。

すなわち、ブランドを守るために重要な項目であるが、このことによって高いブランド価値が新たに醸成されるといったものではない。

高いブランド価値を醸成するために不可欠なのは、右上隅に向けての各項目である。企業の場合には、社会の本質的なニーズにあった企業理念が必要であり、そのための経営戦略が不可欠である。

従って組織内の人間、なかんずくリーダーたちの哲学と能力の高いことが最も重要であり、Webサイトのリニューアルにも組織の理念と戦略を確りと反映させる必要がある。Webサイトのリニューアルは、Web制作関連業者にまる投げして「うまくやって下さい」という姿勢で目的達成は不可能である。そして、Web2.0をブランド戦略に活用する理由は、そこに強力な新しいコミュニケーションツールがあるからだ。

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2007/05/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会