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RGBデータの利用拡大と効率運用

―印刷白書2007ダイジェスト:プリプレス[RGBデータの利用動向]―

RGBデータによるワークフローの変化

デジタルカメラの普及に伴い、印刷用原稿としてRGBデータの入稿が主流になった。従来のポジフイルム等と比較すると、撮影から入稿までのスピードアップやスキャナ分解が不要になるなど大きなメリットがある。
しかし、入稿するRGBデータは、色見本がないことなど目に見えないデータの不安定さや、ルールが整理されていないなど問題点もある。

したがって、デジタルカメラのRGBデータ入稿では、得意先や制作会社、印刷会社間の役割分担やワークフローなどのルール作りが重要なポイントになる。
さらに、デジタルカメラデータの印刷利用への課題として、RGBからCMYKへの色変換がある。RGBデータの品質をいかに損なわず、あるいは品質を補い、効率よくCMYKデータに変換することが求められる。

また、今後の印刷業界において、より一層の関わりが見込まれるものに、3DCG(3-Dimensional Computer Graphics)がある。3Dデータは、CGをはじめ、各種コンテンツ制作に急速に浸透し、映画やCM、インターネットで配信されるコンテンツ、テレビゲームなど身の回りでも数多く活用されている。また、自動車や工業製品等の多くが3Dで設計されている。

印刷業界におけるCG利用のメリットは、不可能なビジュアルやイメージの可視化、CADデータからの印刷物制作等がある。例えば、CGデータを利用することにより、完成前の新商品でも製品の特長や機能などをユーザーに分かりやすく伝えることができたり、製品や試作品を準備して、実際に撮影する必要がなくなるため、コスト低減や制作期間短縮等のメリットがある。メーカー側の保有するCADデータの有効活用などを中心にCGの利用範囲はより拡大するだろう。

進むAdobeRGBの有効活用

RGBの色空間(カラースペース)は、sRGBやAdobeRGBなどがある。sRGBは、IEC(国際電気標準会議、International Electrotechnical Commission)が策定した色空間の国際標準規格である。CRTモニターの色表現をベースに策定されており、モニターやプリンタなど機器の違いに左右されない、意図したとおりの色を再現するための表現形式を定めている。

一方、AdobeRGBは、Adobe Systemsが提唱したカラースペースである。一般的なモニターなどで採用されているsRGBに比べて、より広い色域を持っており、印刷やWebサイトなどマルチ展開するのに適した色空間といえる。
印刷業界では、AdobeRGBが数多く使われ始めてきた。従来、画像データはCMYKでレタッチしていたが、RGBワークフローと呼ばれるように、RGBデータで画像をある程度最適化、確立しておき、印刷やWebサイトなど媒体によって適宜変換するフローも実現されてきた。この流れは、画像処理やマルチユースを考慮した場合効率がよい。

このようなRGBを色の基準とする考え方は、今後増えていくと考えられる。RGBの画像処理についてのノウハウや判断は、印刷会社のプリプレス部門に携わる画像処理技術者が優位性を持つので、RGBで画像を扱う経験をより積むことが必要であろう。
また、AdobeRGB色空間対応など広色域モニターを使用することにより、より印刷色に近い色域表示が可能になる。アプリケーションやOSのカラーエンジンによる色変換の影響を受けないので、AdobeRGBの色表示のまま最終確認まで可能になるベースができるのである。

したがって、カメラマンや得意先、印刷会社など複数の環境下のモニター上で印刷色をシミュレーションする、いわゆるソフトプルーフの活用など色の共有ができるようになる。国内の色標準として使用されているJAPANカラーやJMPAカラーが再現可能になると、印刷会社からの校正刷りや出力物を見なくても、上流工程で最終印刷に近い品質確認ができる。よって校正のやり取りが必要がない一方通行の流れが実現する可能性もあり、今後の印刷業界のワークフローにも大きな変化をもたらすであろう。

印刷色の付加価値とは

デジタルカメラ、AdobeRGBデータの流通、インクジェットプリンタなど、従来のプロセスカラー4色印刷の色域を超えるデジタルカラーが広がりを見せている。オフセット印刷においても、6〜7色インキを使用して色再現領域を拡大することにより、顧客ニーズに応えたり印刷の差別化をアピールするケースが増加してきた。これらの背景には、CTPの普及や印刷条件の標準化などにより実用性が一段と進化したことが挙げられる。

また、プロセス4色のオフセット印刷においても色再現域をより拡大させたインキ技術の開発が進められ、印刷物の色再現、付加価値の向上に寄与している。
しかし、これらのベースとして印刷会社に必要なものは、印刷工程の数値による標準化とプリプレス分野のカラーマネジメント、すなわちICCプロファイル等による色管理技術を実践することである。

JAGATが毎年発行している印刷白書の2007年度版「印刷白書2007」は6月下旬発行予定。一般販売価格は30,000円、JAGAT会員企業には1冊を無料配布。

(2007年6月)

2007/06/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会