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MicrosoftとAdobeの宿命の対決がまた始まる?

WindowsがVistaになり、AdobeがMacromediaを統合し、パブリッシングも新たな時代を迎えて、MicrosoftとAdobeの宿命の対決がまた始まるような見方がある。MicrosoftやAppleがAdobeのPostScriptType1に対抗するアウトラインフォント技術を発表した時のような激突があるのだろうか? Microsoftの歴史は闘争の連続で、Basic/Dosで類似のものを蹴散らし、Officeアプリケーションに勝ち、ブラウザでも市場を制覇した。しかしその間に成功しなかったものも多くある。DTPのようなものではPublisherがあり、WebではFrontPage、などのようなニッチなアプリケーションに関しては力が入っていなかったように見える。

Microsoftの市場支配に対してOfficeなどの互換ソフトウェアを開発する試みはあまり成功したことがない。Microsoft自身も互換ソフトウェア開発にはあまり興味がないらしく、それは他社のシェアの一部を得られるだけのビジネスであったり、また他社のバージョンアップを追っかけるような不利な立場での戦いになるからであろう。それよりも今後ひらけてくる分野を制覇することに開発力を注いだほうがよいという判断だろう。

アウトラインフォントのTrueType vs Type1 の時も、今回の WPF vs AIR(旧Apollo)でも、これらはまだ世の中には使われていない技術であり、それが新たなコンピューティングのスタイルを作り出すものであるという点では、両社とも譲れない戦略性をもつものだ。同時にこのことはユーザにとっても大きな変化が起こることを予測させるもので、フォントが結局OpenTypeによってTrueTypeであってもType1であっても関係なくなったように、将来はWPFでもAIRでもないものに集約されて、誰も抗しがたい必然的な進展をもたらすことが考えられる。

現状では WPF vs AIR は似てもいるし違うところもあるが、長期的にはWebアプリとDesktopアプリが区別なくなるWeb2.0的な流れにあることがわかる。従来はあるアプリケーションから別のアプリケーションにデータを引き継ぎながら制作作業をしていたのが、先にアプリケーションの連携が構築されて、そこにデータを持ち込むと瞬時に結果が出るようなイメージが描けるだろう。WebのCMSのシステムとコンテンツの関係やバリアブルプリント、今の情報誌の自動組版などのようなオンデマンド型のシステムである。

当面はブラウザのプラグインでインターネット上のアプリケーションを動かすところから始まるが、アプリの連携したものを広義のアプリケーションというように見ると、アプリケーションの中にインターネットがあって、ワークフローを内在させて、広域に分散したサーバとクライアントが有機的に結合して自動でデータを移動させて一つの仕事を成し遂げるような関係になろう。

テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 2007年4月号より

2007/06/16 00:00:00


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