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三つの変革期と創業期

日本の近代化が始まった明治期に多くの新しい産業や企業が誕生した。印刷産業もその一つであり、活版印刷による近代印刷術の導入と発展により、印刷の近代化が始まった。第一の変革期には時代の要請として印刷が必要であった。
明治に入って「文明の近代化のためには西洋紙と、西洋流の印刷に拠るのが一番の近道である」(渋沢栄一)という発想があった。近代国家を形作るには、「紙幣」(経済の統一)、「教科書」(教育)、「新聞」(マスコミ)を自前で供給できることが前提となる。そのための共通点は「印刷技術」である。
印刷物を通じて社会の共通の概念やルールが伝播・教育され、社会が形成され国が発展した。この時代は、国作り、経済・文化の基盤作りといった「志」と自然に結び付いていた。

第二の変革期は、第2次世界大戦の敗戦である。新しい夢や自由、平和を求めて多くの企業が再スタートあるいは創業する新たな創業時代を迎えた。社会の変革期を背景に個人としての生き方、働き方を創業の精神として企業や産業が誕生、成長した。見事に大量生産・大量消費の仕組みを作り上げ、それを支える技術は社会貢献でありかつ企業の目的とも合致していた。

ところがやがて大量生産・大量消費という社会、産業界の大前提が崩れはじめ、90年代に入ると本格的な情報化、デジタル化、ネットワーク化に加え環境問題、経済成長、企業成長のあり様が問われ始め、過去の2回の社会変革にも勝るとも劣らぬ激動の時代を迎えている。この変革期は第三の創業期といってよいだろう。

日本には100年を超える企業は、たぶん生業・家業含めてだろうが、10万社もあるとされ、これは世界でも珍しいという。創業者がいなくても企業は存続している。人が変わり、時代が変わっても企業は存続できる。
ではなぜ企業が永く存続できるのか。企業が永く存続できるためには2つのことが必要である。市場社会が認めてくれる価値を提供し続けることとそれを可能にする人材育成である。

現在を第三の創業期とすれば、100年企業にとっては3回目の新たな企業理念構築の時である。現在の創業期を乗り切るには、かなりの創造的エネルギーが必要である。なぜなら過去においては、印刷産業の成長・発展が個々の企業のそれとして歴史を刻んできたが、これからは、印刷産業自体の大きな曲がり角の中で、個々の企業はおのおのの生き方で成長を見つけださねばならない。
経営者が新たな50年、100年企業に向けてどのように創業の原点を見つめ直し、新たな継続への企業理念を再構築するか、それを社員とともに共有できるか、いままさにメタモルフォーシス(変態)を遂げなければならない時だ。



6月29日(金)開催のJAGAT大会では、JAGATの40周年ということも踏まえて、今回も触れた「長寿・持続・継続・進化」というキーワードにこだわりながら、「印刷産業の継続と進化のために「今」考えておくべきこと」をテーマに講演会を行います。
そして、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の代表取締役社長を長く務めておられた新将命氏に特別講演をお願いしています。ぜひ、ご参加をお待ち申し上げております。


→詳細はこちら JAGAT大会2007 6月29日(金) 椿山荘(東京・目白)


【JAGAT大会2007・特別連載1】変えていいことと変えてはいけないことの選別――長寿企業としての経営戦略

【JAGAT大会2007・特別連載2】企業の永続的発展の要件

【JAGAT大会2007・特別連載3】未来志向の企業風土

【JAGAT大会2007・特別連載5】未来を描くための「再定義」


経営情報配信サービス『Techno Focus(テクノフォーカス)』No.#1498-2007/6/18号より要約。

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(2007年6月)

2007/06/20 00:00:00


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