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Web2.0時代のサイト構築術[報告2/2]

〜Ajax、Web標準などのWeb構築最新事例〜

5/29開催 クロスメディア研究会 拡大ミーティング

◆前半はこちら

株式会社エイチツーオー・スペース 代表取締役 たにぐち まこと氏

■Web2.0

次は話を変えて、これからWebがどういった方向に向かっていくのかというお話をしたい。
最近よく使われる言葉にWeb2.0というものがある。Web2.0というのは、2005年頃にはやっていたサイトを包括して、Oreillyという会社の社長が「Web1.0のバージョンアップということでWeb2.0と名づけようではないか」とセミナーか何かで話したことから爆発的に広まった言葉である。

では、Web2.0と定義付けられた代表的なサイトにはどのようなものがあるか見ていきたい。

・FLICKR
ひとことで言えば写真管理サービスである。まだ英語のサイトしかないのだが、このサービスの優れたところは、写真を管理するだけでなく、自分の友人や家族と写真を共有してコメントをつけたりできるところである。

・Wikipedia
フリーの百科事典サイト。このサイトの画期的なところは、制作者が特定されておらず、ログインをすると誰でも自分が知っている言葉を登録でき、それに対して他の人がどんどん編集を重ねていくことで1個の百科事典を作るできるところである。

・YOUTUBE
映像配信サイト。誰でも映像を登録できて、それを見た人がコメントを付けたりすることができるのが特徴である。

これらを見ていくとわかるように、これまでのWebは必ずコンテンツを提供する側がいて、そのコンテンツ提供者が様々なコンテンツを集めて発信するというものだったが、これらWeb2.0的と言われるWebサイトは、情報の提供者と受信者が区別されないサービスになっていることである。YOUTUBEやWIKIPEDIA、FLICKERなどこれらサービスの運営者はシステムだけを提供し、後は何もしない。これがWeb2.0的なサービスの共通的な特徴である。

・Web API
Web2.0のもう一つの大きな特徴に、Web APIがある。APIとは、Application Programming Interfaceの略称で、Webでアプリケーションを作るための掛け橋を提供している。

今非常に注目されているサービスに、Googleマップというサービスがある。このサービス自体は地図はゼンリンという地図会社とGoogleが提供しており、これだけではWeb2.0的なサービスとは言えないが、このサービスの優れているところは、Google MAPS APIというWeb APIを提供することにより、誰でも自分のWebサイトでGoogleマップを使えるようにしたというところである。

Google MAPS APIにサインアップして、規約を読み、地図を使いたいサイトのURLを入力するだけで入会手続きが完了し、HTMLのサンプルコードが提供される。これをコピーして貼り付けるだけで、Googleマップを使うことができる。

ただしこのままでは、たぶんGoogleの本社かと思うが、それが表示されてしまい使いにくい。そこで、希望の緯度経度を入力したり、拡大率を指定することで、希望の場所を中心地にして表示することがきる。さらに拡大率を変更したり、航空写真をみたいということであれば、その機能を提供するプログラムを組み込めば、それらの機能を提供するボタン等を取り付けることができる。御社の地図を地図デザイナーにデザインしてもらわなくても数秒で設置することができ、希望の拡大率で表示したり印刷したり、航空写真も表示できるようになる。

このように、Web APIを使えば誰でも無料でWebサイトの機能を利用することができる。これがWeb2.0の画期的な考え方である。

Web APIについては、元々はAmazonが同社の書籍情報を公開したのが最初であり、AmazonのAPIを利用すると、Web制作者が自分のサイトでAmazon.co.jpの商品情報を利用することができる。「アフィリエイト」と組み合わせれば、販売代理店を開店することも可能である。

・マッシュアップ
Web APIが公開されたことで、マッシュアップという考え方が出てきた。 例えば「出張JAWS」というサイトがある。 このサービスは、出張のときにホテルや新幹線を取らなくてはならないが、そのときに便利なサービスである。

例えば東京から大阪に出張になったとする。 まず、GoogleマップのAPIを使って地図を確認することができるが、それだけなら単なるWeb APIだが、これからがマッシュアップである。経路検索ボタンをクリックするとすると東京から大阪までの経路を表示することができる。

この機能は残念ながらGoogleマップの機能では実現できない。何か別のWeb APIを使っていると思われる。次に宿泊施設。例えば大阪駅の周辺のビジネスホテルの一覧を表示することができる。これは「じゃらんnet」を使ってホテル検索をしている。他にも楽天トラベルを使うこともできる。さらに食事施設の一覧を表示することもでき、最後には出張計画書を作り、そのまま上司に提出できるようになっている、出張計画を作る支援サイトになっている。

マッシュアップというのは、このように複数のWeb APIを使用して1個の支援サイトというサービスを作ることができる。これが革命的なことである。従来ならばこのようなサイトを作る場合は様々なデータベースから情報を収集したり、自分でデータベースを構築するなど膨大な時間をかけて作ることになるが、Web APIを駆使してマッシュアップすれば、短時間でとても高度なサービスを作ることができる。これがWeb2.0的な考え方である。

・Ajax
「出張JAWS」を見てみると、操作性がかなり良いことに気づくと思うが、これはAjaxという技術が使われていることによる。今までのサイトでは、画面を表示したままデータを送受信することができなかったが、それを可能にしたのがAjaxである。

AjaxはGoogleがGoogleマップではじめて実現して話題になり、現在もGoogleがAjaxの先進企業としてあらゆるサービスで利用している。

Ajaxはもう一つの方向性として画面エフェクトというものがある。 GucciのScript.aculo.usというサイトだが、最近のサイトとしてはそれほど新鮮さを感じさせない画面デザインなのだが、これがFlashで作られているのなら全く不思議はないのだが、Flashを一切使わずにAjaxだけで作られていることが新しいということで注目されている。

FlashでできることをなぜAjaxを使って実現する必要があるのかと思うかもしれないが、FlashとAjaxの大きな違いは何かというと、FlashはAdobeが配付しているFlash Playerがないと一切再生できないが、AjaxはWebブラウザに標準に登載されている機能でプラグインを使わずに表示できるということである。

携帯やWiiなどで表示した場合FlashもAjaxも使えないのだが、このようなとき、Flashの場合はプラグインがなければ一切使えなくなってしまうが、Ajaxの場合は表示されたりきちんと見ることはできるという利点がある。

■これからのWeb

そろそろまとめに入りたいと思うが、今後のWebサイトの方向性を探るためには、Googleの動向を探るのが一番いいと思う。

・GMail
Web上で電子メールを見ることができるサービスである。Webメールというのは今までもあったが、こちらのサービスもAjaxを豊富に使っていて、リアルタイムにメッセンジャーで会話をすることができるなど、いろいろなことができるようになっている。

・Googleカレンダー
スケジュール管理をWebサイト上で実現しており、ドラックアンドドロップで予定を作ったり変更したりできる。

・Google Docs & Spleadsheet
Googleが今力を入れている分野である。 例えばワープロでは、共有という機能を使えば1個の文書を皆で見ながら編集ができる。スプレッドシートは、Excelのように使うことができ、やはり共有したり保存したりできる。

もう一つ、ThinkFreeというWebブラウザーで使う無料オフィスソフトがある。日本ではソースネクストが代理店となっているものだが、こちらにはさらにパワーポイントのようなものもある。これらの動きは、ソフトウェアの代わりをWebがやることでマイクロソフトと対抗するのではないかということで注目されている。

■これからのソフトウェア

では、これからはWebがソフトウェアに置き換わっていくのかというと、実は逆にソフトウェアの方からもWebに攻勢をかけている。

AppleにはMacOS XからDashboardという機能が加わっている。普通のソフトを使っている状態で、あるキーを押すと小さいソフトがたくさん立ち上がっている別の画面が起動する。例えばiTunesでDashboardを使うと、今聴いている音楽のジャケット写真をAmazonのサイトから今かけている音楽の情報を元に探し出して表示してくれる。

これは何が起こったのかというと、Dashboardというソフトを掛け橋にして、iTunesというソフトウェアがAmazonというWebサイトと連携しながらある動作を行ってソフトウェアにフィードバックしているのである。これらの機能を全体的にウィジットというのだが、これが今非常に注目されており、AppleがDashboard、YahooがYahoo!ウィジット、AdobeがApollo、マイクロソフトもつい先日Microsoft Silverlightというものを発表するというように、各社が本格的に参入してきている。

■結論

今までは「Web v.s. 印刷物」ということで語られてきたが、これからは「Web v.s. ソフトウェア」という動きになってきている。私たちがGoogle Docsのようなサービスに参入するというのは難しいがYOUTUBEがこれだけ頭角を現したことを考えると、「Web2.0=情報の提供者と受信者が区別されないサービス」というキーワードで考えていくのも一つの手かもしれない。

■ご紹介サイト

今回ご紹介したサイトは こちらのサイトにまとめておいた。

実はこちらも「del.icio.us」というオンラインブックマーク管理サイトというWeb2.0的なサービスを使っているのだが、皆さんもじっくりと一つ一つサービスを見ながら新しいアイデアが浮かばないか確かめてみるのもいいかもしれない。

2007/06/27 00:00:00


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