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M&Aが増加する背景にあるもの



過去最高を更新し続けるM&A件数

 2006年の国内M&A件数は前年より50件増加の2,775件となり、3年連続で過去最高を更新した。
 1996年から2005年までは「選択と集中」と「コアとノンコア」をキーワードにしたM&Aが多かった。例えば親会社が事業のコアとノンコアを定義し、ノンコアに分類した子会社を売却したり、子会社同士を合併させたりするようなグループ再編である。
 バブル経済下で海外のゴルフ場や商業ビルなどを買い付けていた不動産投資まがいが横行した1995年までがM&Aの第1ステージである。前述の2005年までがグループ内再編を中心にした第2ステージになる。そして、現在迎える「『本業の』選択と集中」時代の2006年以降は第3ステージに位置付けられる。


始まった「本業の」選択と集中

 2006年からは様相が変わってきた。大手企業はグループ再編段階を終え、いよいよ本業再編の段階に乗り出し始めた。不採算事業の整理に留まらず、従来は本業に位置付け、採算の採れていた事業でさえも戦略的に売却し始めたのである。
 グローバリゼーションが進展する現在は、世界的にも勝ち組と負け組に2極化しつつあり、本業の中においても厳密なコアとノンコアの識別をしなければならない。そして本業で勝ち組入りするには、まずは国内で勝ち組入りすることが先決だ。そのためには、収益事業と言えどもノンコアビジネス事業は売却し、勝ち組に入れるコアビジネスに経営資源を集中させて競争力を強化する必要がより高まってきたのである。


少子化が促すM&Aの本格化

 今後は各社が勝ち組入りに向けた本業のM&Aを活発化させるに違いない。そして、本業のM&Aとは同業他社を買収することに他ならず、これは必然的に敵対的TOBの形にならざるを得ない。少子化による縮小が確実な国内市場での競争をM&Aによって早急に終え、一刻も早く成長の見込める海外市場に進出しなければ、企業の成長は極めて限定されたものになってしまうからである。
 少子化による国内市場の縮小が不可避である以上、生き残りを賭けた敵対的TOBの増加は避けられず、これは時代の趨勢とも言える。少なくとも大企業は既にグループ再編を終え、本業のコアビジネス強化による国内での勝ち組ポジションを確立する時期を迎えている。


戦略的M&Aとは

 「会社を売る」ことが「身売り」を意味する時代は終わった。大手企業は収益事業でも高く売れれば売り、売却収入を原資に新たなM&Aに取り組みながら本業を強化している。
 印刷会社も例外ではない。何がコアで何がノンコアか。収益が出ているからと言って、経営資源を分散させておいて良いのか。事業継続と、企業価値が高いうちの事業売却ではどちらが有利か。大手印刷会社に対抗するために必要な戦略的判断とは。
自前での設備投資と、M&Aで事業を1セット取得するのとでは、どちらが有利なのか。
 M&Aのメリットの一つは、既にワークしている事業の取得によって、時間を買えることにある。


2007年1月30日プリンティング・マーケティング研究会 拡大ミーティング「M&A市場の最新動向と実際」より

(2007年7月)

2007/07/07 00:00:00


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