私がこの業界に入ったのはちょうど5年前。学生のころから培ってきたMacのスキルを仕事に生かしたいという思いから、転職を機に現在の会社に入社、プリプレス部制作係にMacオペレーターとして配属されました。制作係ではMacでの版下作成、デザイン、ページ物の編集、客先から入稿したデータを印刷に適したデータに修正し製版部に渡すといった作業を主に行います。
ソフトのオペレーションには多少の心得はあったものの、印刷の工程や様式などについては全く知識がないため、入社当初は多くの失敗を経験しました。また、何よりプロの現場ではオペレーションにスピードや精度が要求されます。それにこたえるため四苦八苦し、当然のことながら趣味と仕事の違いを思い知らされる日々が続きました。
試行錯誤を繰り返しながらも入社して4年余りが過ぎ、オペレーターとしての自信もそれなりに付いてきたころ、印刷、メディア業界の展示会「PAGE」を視察する機会を得ました。
そこでは最新の印刷技術と情報がひしめき合い、印刷から派生するデジタルメディアの可能性が紹介されていました。私は今までにない興奮を覚えると同時に、私が日々こなしている業務とのギャップにがく然とし、そして自分の業務に対する「志」が何て幼稚でレベルの低いものだったかということを改めて痛感しました。まだまだやるべきことがあるのではないか……。
会場でそんなことを考えながら、ふと「JAGATエキスパートコーナー」に立ち寄りました。そこで認証試験の資料を手にするうち、今この試験に挑戦し、印刷やDTPのことをもう一度勉強し直したい!そしてプロとしてもう一段階ステップアップしたい!という気持ちがわき上がってきました。「よし、やってみよう!!」。しかし、時は2月初旬、既に25期試験の申請も始まっていました。試験日は3月中旬のため、準備期間は1カ月弱しかありません。どこまでやれるか不安はありました。しかし私のモットーは「鉄は熱いうちに打て!」です。次回8月の試験まで待って準備を進めるより、やる気と勢いのある今チャレンジすべきと受験を決意。東京から帰るとすぐに試験勉強を開始しました。
会社での業務も年度末のため繁忙期に差し掛かり、残業続きの日々。しかし、どんなに忙しい日でも必ず実行する進度を決め、業務終了後、毎日深夜2時までファーストフード店で問題集と格闘。試験開始直前まで徹底的に過去問を解きまくりました。必死でがんばったかいあって結果は見事一発合格!!
さて、これで晴れてエキスパートの仲間入り!!なのですが、素直に喜べない自分がそこにいました。もちろん合格したことはとてもうれしかったのですが、資格試験は受験対策でどうにでもなる側面があります。試験を器用に乗り越えることと、プロとして本当の知識とスキルを獲得することとは大きく隔たりがあります。有資格者がつまり「真のエキスパート」ではないという思いがより強くなってきたのです。試験に合格したことは、やっとプロとしてのスタートラインに立ったということでしかないのです。
私は印刷工程やアナログ製版などを実際に経験せずいきなりDTPに携わった世代です。今でも製本や面付け、紙などの知識にはあやふやな点も多く、先輩方に「エキスパートのくせに」と冗談混じりに間違いを指摘されては学習を繰り返す毎日です。しかし資格を取る前と大きく違うのは、自分が「何を知っていて、何を知らないのか」ということをちゃんと理解できていることです。それは「印刷」というものの全体像と奥深さを試験勉強を通じて学ぶことができた結果だと思います。
今後は社内に有資格者を増やすべく、後進の指導に力を入れたいと考えています。基礎知識を体系的に学べる認証試験カリキュラムは社員教育にもぴったりだと思います。認証試験に対して「本当に現場で役に立つ資格なのか?」といった懐疑的な意見も多々あります。しかし、深く知ろうとするきっかけになれば、「無知の知」にたどり着くプロセスであればよいと思うのです。私自身の場合がそうであったように。
■INDEXに戻る
■閉じる
2007/07/16 00:00:00