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アセッツ管理システムに必要な要件

PAGE2001カンファレンスの「アセッツ管理 DAM」セッションは、現在いろいろな情報がデジタル化される中で、今コンテンツの制作から管理、配信に至る過程で、どのような管理が求められているのかを考えた。
デジタルアセッツマネージメント(DAM)というと、デジタル素材を資産として運用していくための管理システムという意味合いであるが、今回は印刷物制作、新聞・出版物制作、放送用データ、さらにはECやWebビジネスにおけるデジタルアセッツマネージメントについて、それぞれどのような捉え方をしているのかを話した。

JetBASE
ハイデルベルグから提案されているJetBASEというソリューションについてハイデルベルグ・ジャパン(株)の武口豊様からお話を伺った。この背景として、今印刷現場では、小ロット、多品種のためデータ量やデータの種類が増えている。またデジタルデータの増加に伴う、作業ミスの増加、入稿データ不備のための時間ロス、コミュニケーション不足による時間ロスなどが浮き彫りになってきている。
一方顧客側でも、扱うデジタルデータが膨れ上がってきており、また印刷会社と時間に左右されないコミュニケーションや透明性などを期待している。
このように、印刷物を制作する上で、デジタルデータ管理が制作側及び顧客側の両方で必要になってきた。ここでいう管理とは、プロダクト、アーカイブ、バックアップの管理が考えられる。プロダクト管理とは、画像、文字、ページ、イラスト、面付けデータ、データ情報などになる。また運用から自動アーカイブを行い、データの検索、画像の確認などアーカイブ管理が楽なことが要求される。

クライアントとの関係を見ると、クライアントのデータを管理し、協調作業が行え、どの仕事にはどの画像を使うなどの作業指示もオンラインで指示を行えるような機能が必要になる。
また印刷物制作という点では、出力ワークフローとの連携が必要であり、一貫性のある受注名で制作が流れて行くことが求められる。これをJetBASEでは、JDFによるワークフローを実現する。これにより、顧客の発注情報から印刷までのワークフローを管理するのが、印刷制作のためのDAMという位置づけになる。

新聞製作
新聞社トータルコンセプトはどういうものかについて、モデレータをお願いした富士通(株)情報出版システム統括部の窪田伸一様からお話を伺った。
新聞社に対しては、大きく新聞業務、新聞広告、新聞制作、情報サービスなどのソリューションが考えられる。この中でデジタルデータの流れや管理としてみてみると、素材管理系、広告系、マルチメディア系、新聞制作系がそれぞれ絡んでくる。そしてこの中でDAMに相当するのが素材管理系にあたる素材管理システムということになる。ではどのような仕組みでシステムを考えているのかというと、素材データベースと製品データベースを素材データベースとして、ワークフロー制御を通じて、データ管理、メディアハンドラ、出力編集とつながってくる。これはプロセスとがリンクすることである。データはXMLデータとして管理する。これからは、新聞制作のためのシステムではなく、他メディアへの情報発信が必要である、新メディア発信システムの位置づけになる。コンシューマ、クライアント、自治体/学校、新聞制作、広告制作のためのデジタルデータの管理システムである。

では、新聞社の課題は何か。紙の新聞のリアルの世界と電子新聞などのバーチャルな世界の相互連携をどうするのか。バーチャルな世界を経営の柱にするのはどうするのか。情報収集からDB蓄積、自動編集、自動発信の無人化への対応。新聞社はポータルを目指すべき。情報サービスからeビジネスへなどがビジネスの課題である。
ではシステムの課題とは何か。現状の新聞制作システムからDAM中心のシステムへゆるやかな移行が必要。コンテンツと処理とワークフローを独立。XMLを中心にした自動編集、自動発信の仕組み作り。新聞社全体のフルデジタル化などである。

デジタル放送
これからの放送局などへ提供されるソリューションについて、ソニー(株)システムソリューション事業部の相川晃一様からお話を伺った。
では放送局が抱える問題点は何か。まず多チャンネル化による増えない広告収支、不足するコンテンツがある。次に増え続けるコンテンツをどうするのか。捨てられないコンテンツやコンテンツの大容量化がある。最後にネットワークの高容量化がある。これは、誰でもネットワークを利用してコンテンツを流せる時代になりつつあることで、競争が激化することである。
現在の放送局の実状は、素材が行方不明になるとか、様々VTRフォーマットが混在しているなどがあり、現実的なライブラリーの問題点が多々ある。

ではこれからのコンテンツ配信には何が必要か。権利保護を行えるアセットマネージメントのシステムが必要である。そしてコンテンツ制作を行うシステムが必要である。最後に課金を行える配信のシステムである。この3つの機能を持ったシステムが放送局に必要になる。
特にアセット管理の部分には、マスストレージが必要になる。このためには、非常に大容量のストレージデバイスが必要になる。
ソニーでは、このようなソリューションとして、コンサルティングによるソリューション、アウトソーシングによるソリューション、そしてメディアサービスセンターによるソリューションという形のメニューを提案している。そしてこのメディアセンターでは、アセット管理や配信システムなどのサービスを提供して、例えば本社、系列局、などをメディアセンターを中心にネットワークで接続する仕組みを提供する。

Webビジネス
Webビジネス、Eビジネスを考える上でのアセッツ管理について、Bitwayなどを運用されている凸版印刷(株)eビジネス推進本部の千田明穂様からお話を伺った。
EビジネスにおけるDAMを考えると、DAMを核としてその周りにビジネスを支援するしくみの提供が必要になる。ホスティングサービス、サイト構築サービス、業務支援サービス、マーケティング支援サービス、セキュリティサービス、コンテンツ制作・管理・配信サービス、受発注・物流支援サービス、課金・決済サービスなどがそれに当たる。
凸版印刷が提供しているBitwayのISPチャネル提供とは、コンテンツ提供者に対して、コンテンツを預かり、流通サービスとして、ISPを経由してユーザへのコンテンツ販売を支援する仕組みである。ユーザへの課金はISPで行い、そしてISPへの課金はBitwayで行い、そして提供者への渡す仕組みとコンテンツ流通する仕組みが必要である。

ホスティングサポートの仕組みとしては、配信をサポートする高機能サービスを提供する。売り上げ集計としては、ユーザ情報の分析からOneToOneマーケティング、著作権保護の立場で電子透かし、違法サイト検証システム、配信に対しては24時間365日の運用体制として、監視、バックアップ、診断、回復などの機能を持たせている。
またTOPPAN I.D.Mというデータベースマーケティングのサービスも行っている。これはDBを利用して、DB運用・分析、企画・制作、生産・実施、フィードバックというサイクルをマーケティング用顧客データベースのアウトソーシングを行うサービスである。
ではこれからのEビジネスには何が必要かということになる。アセット管理をベースにしたEビジネスのバリューチェーンが必要だと考えてる。アセット管理をベースにいかに利益を生む仕掛けをつくるかである。製品開発から顧客との関係までの間をアセット管理(顧客・商品・コンテンツ・マーケティングなどの情報)を利用したバリューチェーンのシステム化を行う事である。

PAGE2001 報告

2001/03/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会