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雑誌 vs フリーペーパー その2

フリーペーパーはその名のとおり新聞スタイルが主流であったのが、2000年頃からマガジンタイプが急速に増えて、いろんなスタイルのものが作られている。総部数は年間で3億にのぼると推定されている。マガジンタイプが増えるとともに発行期間は月間に近づくとか、対象年齢が幼稚園生から高齢者まで満遍なく広がり、内容も多様化している。

その中でももっとも集中しているのがOL向けと主婦向けであり、ついで若い女性向けまで含めるとフリーペーパー・フリーマガジン全体の8割ほどを女性向けが占める。「多様化」と「女性中心」は一見矛盾するようであるが、いくつかの要因が重なっていることが推測できる。要因のひとつは配布方法の変化で、これは新聞折込のフリーペーパーの比重が大幅に下がっていることにあらわれている。

そもそも都市部の若い層を中心に新聞の購読率が下がっているので、別の配布手段にシフトしているからである。また女性誌は低落傾向の続く商業雑誌の中では最後まで堅調であったが、雑誌の発行部数減からくる広告媒体の価値低下が、新たなフリーマガジンを活性化させているともいえる。このような新聞折込に依存しない配布方法の確立は、女性誌以外のフリーマガジンのビジネスの潮流を作り出していると思われる。

また個人情報保護法の影響で宛名情報を収集する必要があるDMが行いにくくなったことも、読者が自分でピックアップするフリーマガジンの追い風になっている。この場合、情報発信者・出版側からは読者の的を完全には絞り難いというデメリットがあるが、これを逆手にとったような企画をして、夫婦で見るとか親子で見るなど家庭内回覧を想定したファミリー誌スタイルが増えている。これも多様化の要素である。

新たな配布方法とは多い順に、店頭設置、公共施設設置、駅設置、職域配布、街頭配布などで、店頭設置の比率が新聞折込や宅配(ポスティング)を上回った。それ以外はまだ分母が少ないが、伸び率は非常に大きい。新聞折込や宅配は市場に対する浸透率が高い反面、その紙面がどのように評価されているかは把握しにくいが、読者がピックアップするスタイルは品切れや残数が如実に把握できるので、紙面の向上が行いやすい。(株)ビデオリサーチが発表した全国新聞総合調査はフリーペーパー・フリーマガジンを採り上げているが、「タウン情報」「ショップ・お店」「地域・近隣情報」の分野では有用性・話題性・情報鮮度においてフリーペーパー・フリーマガジンが高く評価されているという結果が出ている。

従来のフリーペーパー・フリーマガジンの考察は紙面サイズ、発行頻度、部数、広告比率など出版雑誌をモデルとして考えることが多かったが、アメリカでは雑誌そのものが商業印刷に分類されて出版とは区別されているように、フリーペーパー・フリーマガジンも販売促進用媒体という視点で再整理した方がよさそうだ。その意味では伝統的な出版と決別しつつあるともいえる。

TVなどのマスメディアのCMはクリエータの間では評価されても読者のフィードバックが見えないのが弱点であるが、フリーペーパー・フリーマガジンはその性格上読者の反応によって成立する媒体であるので、この媒体が継続して発行されるということは、常にピックアップしてくれるファンがいることを表し、この習慣化し反復学習効果を持った媒体はマスメディアとは次元の異なる重要なものとして定着するであろう。部数の最適化がしやすいという意味でも費用対効果の高い広告媒体になれる可能性がある。

フリーペーパー・フリーマガジンのビジネスモデルは、広告クライアントの幅広い「相乗り」で成り立っているともいえる。かつてはそれぞれの企業やお店ごとに広告の企画と制作・印刷・配布を行っていたものを、このビジネスモデルでは、広告の内容と、編集制作と、配布を分業のような形で切り分けていて、雑誌の編集・制作手法を使いながらも、出版とは異なって生活者・消費者に直結した配布手段を開発したものといえる。

生活者直結のよい例は職域配布であり、宅配便などでまとめて送ることで、新聞雑誌など出版物の第3種郵便よりも単価の安い配布が可能になる。また駅などでは広告スペースが完売しないところに、フリーマガジンのラックを誘導して広告収入を得ることができる。店舗においては商品購入時に顧客に応じてフリーマガジンを添えることで配布収入を上乗せすることができる。つまり商業雑誌の弱体化と対照的に、広告主とエンドユーザに最も近いところの間で、「安く確実に広告すること」と「広告収入を得る」というWin-Winの関係を作って、雑誌流通や広告流通の「中抜き」をすることがこのビジネスの特徴である。

雑誌 vs フリーペーパー その1

(2007年8月)

2007/08/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会