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新たなビジネスを切り開く4 つのソリューション

印刷業は生活・文化、情報・サービスを担う産業

「日本の印刷産業<将来市場規模>予測」(日本 印刷産業連合会 平成18 年3 月発刊)によると 印刷市場規模は2005 年に約7.9 兆円、2010 年は 約8.5 兆円、2015 年には約9.3 兆円になると予測 しています(表参照)。2010 年までの予測(2005 年比)では、今後の成長分野として「ソフト・サー ビス」が最も期待されており、年率4.0%増加す ると見込まれています。

この分野は印刷物だけでなく、企業の販促向け のデザイン企画・キャンペーン・イベントの増加 や、パーソナル向けのDM・通販・個別配送など の、さまざまな印刷付帯サービスの提供機能が求 められてきたことからもソフト化・サービス化の 重要性は理解できる流れです。

今ではデザイン部門をもった印刷会社も多く、 イベント運営や販売促進支援などを受注すること で、広告分野に事業領域を拡大しています。また、 発注元からの要望に応じて写真撮影や取材、文字 原稿制作などの編集プロダクション機能をもつ製 版・印刷会社などの方向性とも一致します。

次に商業印刷への期待が大きく、年率2.1%増 加が予測されています。民営化の進行など市場競 争を促進し、企業の宣伝広告費拡大が見込めるか らです。企業の情報開示の拡大で、企業活動を紹 介するCSR 報告書など印刷物の増加や、地上波 デジタルなどの新しいメディアの普及も商業印刷 を後押ししています。さらにフリーペーパーの成 長の原動力にもなっています。

「デザインの提供」機能も、究極的には「印刷 物の内容全体についての提案」(販促支援)を顧 客に提供していくことであり、印刷会社にとって はソリューション提供機能の拡大につながり、商 業印刷とソフト化・サービス化の両分野にまた がっていると言えます。

証券印刷も金券・商品券・入場券などのセキュ リティ商品の増加や、IC タグ技術の発達で1.9% の増加と予測されています。

出版印刷は少子化による教科書・コミック誌の 減少、地上波デジタル・モバイル放送・ブロード バンドの熟成による情報志向の変化も影響してい ます。フリーペーパーやフリーマガジンは商業印 刷に分類されるので、出版印刷としては1.3%減 少が予測されています。

ソフト化・サービス化への取り組みが業態変革に

現在、印刷業界が進めている業態改革は、「顧 客志向によるワンストップサービスを、今の会社 を新創業したときの熱き思いで進めてほしい」と いうものです。顧客を基準として、創業者精神と コラボレーションで乗り越えるという方向に向 かっています。そこでは5 つのテーマとして、顧 客のことを真剣に考える企業体質になること、社 会の大変化の認識と対応の準備、より競争力を高 める発想、独自性を発揮できる武器をもつこと、 ワンストップサービスによりメディアの総合受注 を目指すということが提起されています。つまり、 発注元のウオンツを見抜いた上で、ソフト化・サー ビス化によるアプローチをかけ、提案したものを 高い独自性と専門性を武器として実現してほしい ということになります。

発注元に対するソリューション提案を、しっか りとした物作りで支えるという、まさに情報メ ディア産業の中にあって製版・印刷業が独自性を 発揮できるところです。今後の成長分野として期 待されているソフト化・サービス化に取り組むと いうことは、業態変革への取り組みそのものであ るということもできるのです。

印刷会社にとっては、川上・川下市場への事業 展開の拡大を可能にする重要な条件が一括受注に 対応できることであり、印刷に付随する業務を含 めた生産システムの構築や付帯サービスとしての データ加工、個別配送手配などを、ワンストップ サービスとして受注できる企業形態への変革が求 められているのです。

情報メディアへの対応に力を発揮する技術蓄積

パソコンやインターネットの普及によって出現 した高度情報化社会は、今までマスメディアとし て大きな役割を占めていた印刷物が、メディアと しての本来の価値を問われることになりました。

このように変わる社会や変わるメディアに直面 している印刷業ですが、いままで取り組んできた 製版や印刷におけるさまざまな技術の蓄積が、い ろいろな可能性や専門性のある機能をもっている ことに気付くと同時に、これらを応用展開するこ とを考える必要があるのです。

例えば、画像や文字、レイアウトなどの大量の データ管理を適切なファイル形式で行うことがで きる「情報の保存機能」。デザインやスキャナ入力、 デジタルカメラ入力、DTP 処理による「精細な 情報の表現機能」。デジタル通信においても、大 サイズデータ適切なファイル形式にしてハンドリ ングする「伝送機能」。紙を含めて多種多様な媒 体への精細な印刷を、部数を問わず行うことがで きる「印刷の機能」。さらにWeb コンテンツでは 「表示の機能」などがあります。

製版・印刷企業が再び潤沢なビジネス環境を得 るためには、新たな価値を創造し、それが社会に 広く受け入れられることが必要となりますが、そ のためにはデジタルデータを扱うIT 対応は必須 です。これから取り組むべき方向は、業界各社が 生み出すコンテンツを管理し、付加価値を付けた 情報に加工したり、クロスメディアにも対応する ことです。これが「多様化と複合化(マルチ化・ クロス化)」への取り組みということになります。

「下版が追い付かない!」 

新しくワンパス型の印刷機を導入して、1 時間 4 〜 5 ジョブを生産している印刷会社の現場から 聞こえてくるようになった悲鳴です。最新鋭の枚 葉オフセット印刷機は段取り替えの効率化が進ん でいて、ローラ上のインキ量を平らに減らしてか らJDF などでインキキープリセットすることで 早いインキの立ち上がりと損紙を削減する機構、 さらに色彩管理装置も一般化して早い刷り出しを 実現しています。

ある印刷会社の現場では、CTP と両面8 色機 で台数物を印刷するのであれば、刷り出しと校了 紙との色調確認を含めても約15 分で段取り替え を終えて本刷りに入っています。これは日常的な 平均ペースで、数年前の同クラスの印刷機に比べ て同じ時間で1.5 倍以上の印刷ジョブがこなせ、 片面機の2 倍以上の生産性が得られています。

この結果、前工程で「下版が追い付かない」こ とになってしまったのです。では、どのような解 決策があるのでしょうか。もう一台CTP を入れ るのでしょうか、間接人員も増やさなければなら ないかもしれません。

しかし、もっと根本的に見直さなければならな いところがあります。印刷機に限らず最新鋭の設 備で差別化しようとしたとき、ボトルネックの一 つが間接業務であることに気づかされます。プリ プレス工程でも、ファイルを探したり集めたり、 指示情報の確認問い合わせ作業など、多くの煩雑 な間接業務があります。デジタル印刷による小 ロット対応では、間接業務のコストはさらにシビ アな算定が求められます。

ここでポイントになるのが迷わないで仕事がで きる社内の標準ルールを決めておくこと、そして ファイル探しやデータをチェックなどの段取り時 間に当たる間接業務を支援してくれるような自動 化の仕掛けを、自社システムに組み込んでおくこ とで、工場全体の生産性を向上させることができ るようになるのです。

特に差がつくのは見積もり、受注・校正、工程 管理、業務などで、業務改革にまで踏み込んだ「印 刷CIM 化」への取り組みが必要かもしれません。 一貫した仕組みによる業務改革に取り組まない と、相変わらず営業マンは見積もりを持参して、 校正を持参して、変更が起こると得意先発注元や 工場と電話連絡して、工務や現場は用紙など資材 や機械や外注先に変更を手配してなど、すべて人 が走り回って対処することになります。結局は、 最小コストで生産できたか、最短納期であったか などは不明のまま、いつも必要以上の人と機械を 揃えて対応する古い体質から脱皮できません。

業態変革を支える物作りの4 つのキーワード

このような要求に対応する技術の変革キーワー ドが「多様化・自動化・標準化・複合化」の4 つ になります。多様化とはいろいろな要求にこたえ られることであり、自動化はだれでも同じものが 作れることで、標準化とは迷わないで仕事が進め られること、複合化は相乗効果を発揮させるよう な提案と実際にできることを意味しています。生 産工程に当てはめると次のようになるでしょう。

【多様化】
多様化では、例えば表紙の可変情報はデジタル 印刷で作成しオフセット印刷された中身と合わせ て製本することで、印刷物の付加価値をさらに高 めるような使い方が始まっています。画像品質が 向上し紙種のラインナップも増えてきたため、最 新のデジタル印刷機では、オフセット印刷との連 携(ハイブリッド化)が可能になっています。

【自動化】・【標準化】
オフセット印刷では通常の各工程(画像入力、 DTP、Prepress、Press、PostPress)における部分 最適は、ほぼ終了したと言えるでしょう。これか らは全体最適のための、MIS と生産システムの連 係と、そのためのJDF/PDF を軸にした生産管理の 標準化や自動化と、カラーマネジメントによる品 質の管理体制での再構築が求められます。標準化 によって迷い無くいつでも同じものが作れる体制 を整備し、自動化によってだれでも同じものがで きる体制を整備します。この流れは、「オフセッ トとデジタルのハイブリッド化」による柔軟な生 産体制の確立にとっても重要なキーとなるのです。

【複合化】
クロスメディアへの対応について、最近では発 注元からは販売促進の効果をさらに高めるため に、紙メディアとWeb メディアの複合利用も、 求められています。これを実現するためには、ワ ンソースからマルチユースの作成が効率よくでき る、XML をベースにしたシステムが必要になっ てきます。オフセット印刷やデジタル印刷用の自 動組版と、Web 配信用のHTML 制作が、ダイナミッ クに連携する生産工程の再構築です。

これらの4 つの技術的変革のキーワードを実現 することによって、発注元から要求されるさまざ まな情報メディアの提供をワンストップサービス で一括受注することがきるでしょう。パートナー 企業と連携するときにも、4 つのキーワードが互 いに技術の信頼性を示すものになるでしょう。

発注元に対する企画提案では、製版・印刷会社 はきっちりした物作りの体制や独自技術を発揮す るバックヤードがあるため、広告代理店などに対 する大きな差別化要因にできるはずです。

(『プリンターズサークル』2007年8月号より 社団法人日本印刷技術協会 相馬謙一)

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2007/08/16 00:00:00


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