紙が減っていないで、さらにWebやケータイでの情報発信が急激に増えたのだから、グラフィックアーツの仕事はどんどん広がっているといえる。インクジェットの大判プリンタの用途開発などをしていれば仕事の広がりに実感がもてるかもしれないが、取り組むビジネス範囲が固定化していると広がっている実感はないだろう。
さらに印刷関連業では製版業の事業数は1995年は5741社と比べると2005年には2350社と半分以下になった。これはDTP/CTP化により従来の製版の仕事は印刷・デザイン・編集などのいろいろな作業分担に分散してしまったからで、仕事がなくなったわけではない。つまり独立業種として成り立たなくなっただけで、個々の企業としては製版を含んだ印刷業務に転換が可能だった。
一方、ストックフォトでお馴染みのアマナのビジネスは、カメラで撮っただけのものを提供することは殆ど無くなって、主体は写真同士の組合わせ、あるいは写真とCGの組合わせで商業写真に利用されているという。CGは確かにロケ撮影などもかなり省略できて経済性も高いが、すでにCGの利用範囲はアナログの領域をすべてカバーするし、アナログ素材をCGの部品として使うこともできるという意味でもCGの方が画像ビジネスの土台になるものになった。
現代では工業製品はCAD/CGを駆使して開発される時代であるのでカラーフィルムだけを土台として製版を考えていては、その世界は減少する一方である。製版で数百名規模の会社はなくなったのに対して、アマナの関連会社を含めると700名近くを有する画像ビジネスグループになったように、デジタル原画作成ビジネスにはまだ躍進のチャンスがあるといえる。
統計上は印刷全体に関して大きな変化が無いように思えても、それは印刷関連業の実態が変化していないというわけではなく、その中に成長も衰退も同時に起きていたのである。それが見つけ難いのは統計というものにはいつも欠落部分があるからである。 製版の衰退は統計数字に現れるがCGの普及は数字として現れない。同様に端物印刷の減少は統計数字に現れるがパソコンからプリントされる文書数は数字に現れない。広義のグラフィックアーツは拡大基調であるのに、その中では成長しているところも、衰退しているところも、それぞれに「木をみて森をみず」の状態であるといえるかもしれない。
その間も用紙の需要は伸びているし、新たな需要もあったし、印刷物が減っている気がしない分野も多くある。新聞の種類やページ数は変わらないが、チラシの方が多い日もある。雑誌をあまり買わなくなったとはいえ、フリーペーパーは増えている。今まで簡単な白黒印刷であったものが、カラープリンタに変わるなど、生活者の側に立つと以前にも増してカラフルな印刷に取り囲まれるようになっている。
これはグラフィックアーツの加工がデジタル化して取り扱いが簡便になったことで、グラフィックアーツに携わる人の数が増えたからである。家庭とオフィスのカラープリンタ、デジタルのカメラ、携帯のカメラ、スキャナ一体型のカラープリンタ、カラーコピー、それに看板(サインディスプレイ)のデジタルプリンタ化、など非常に多くの要素の重ねあわせで今日のグラフィックアーツの世界は成り立っている。それらを最もビジネスに結び付けているのは、昔のDPEの窓口である。コンビニにもカラープリンタ機能は持ち込まれている。ネットでも簡易なカラー印刷物の発注は相当安価にできるようになった。
それらは総計すると相当の市場を築いたはずだが、今ひとつ産業としてのまとまりを欠いていて、市場規模の全体は見えにくいし、個々に見てもどこかが飛びぬけて前進しているともいえない。またプリプレスや製版の工程が印刷産業から抜け落ちたマイナス何兆円を補うような形で、撮影やCGの市場が成長しているが、CGとはいっても映画やアニメといったコンテンツ市場とは別に画像制作分野が興っているわけで、上記の曖昧な視覚情報加工すべてをあわせると、グラフィックアーツとして包括できる市場は15兆円くらいはすでにあるのではないかという状況である。
2007-2008 グラフィックアーツ機材インデックス より一部抜粋
2007/08/14 00:00:00