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クロスメディアに向けたマスター画像

デジタルの画像データは多目的に使えるが、アナログ時代における出力装置に向けてデータ「最適化」を第一にした考え方から抜け出した、全く別の取り組みをしないとデジタル化の真のメリットは出ない。例えば通常の4色プロセス印刷インキのことを考慮して、ハイライトの網点のツキ、シャドウの埋まり、トーンジャンプなど補正したCMYK画像データは、この画像を他のメディアで再現する際には不都合である。

画像の再利用を考えるとデバイスに依存しないデータ形式がよいことになる。だからCMYKの最適化の処理は、本当に網点を発生させなければならないタイミングで行われるべきである。当然ながらそのような作業ができるようにはなっているが、それでもCMYKデータを大事に考える人もいる。また画像データの保存に使われるjpegはロッシー、つまりロスの生じる圧縮方式なので、ピクセルの細部まで辿っていくと、色がバラバラになっているように、正確な画像データの保管や画像の再加工をするには不向きな面もある。そこでjpeg2000のような画像の劣化の少ない圧縮方式も登場した。印刷をする立場からするとパソコンで大容量データも扱えるようになった今日では圧縮など不要ではないかと考える人もいる。

しかしそれは静止画を考えた場合のことであって、動画なら圧縮はまだ必要である。デジタルシネマではMotionJPEG2000の圧縮が使われるので、それに準拠したハリウッド映画のどの1コマも静止画で取り出せるものとなるし、しかも画質はjpegよりもよい。つまりデジタルで映画の世界と静止画の世界は共通になっていくのである。
別の視点では、今商業写真でCGと静止画が合成されているように、映画のデジタル編集に静止画をマージしていくことも増えるだろう。これは逆もありで、動物の観察やスポーツなどはまず動画でとって静止画で使うというのが有効なものだろう。

このような従来のタテ割のメディアの壁を超えた使い方というのは今後の大きな課題であるし、そのためには従来のタテ割の考えを超えた画像や色の議論が必要になる。つまりこれまではフィルムベースの考えで、フィルムがあった位置にCCDやCMOS光センサーを置いているだけだが、デジタル撮影はフィルムのように固定的なものではなく、もっと動的に画像を取り込む工夫ができるものであるからだ。

今のところ逆光や閃光下など光量過多で写真がとり難い分野での開発が行われているが、撮影と同時に画像処理を組み合わせることで、今まで撮れなかったものを撮るような研究は多く行われるようになった。また環境光を測定したり、カメラにジャイロをつけて方向データも記録するとかクロスメディア用のマスター画像に必要な要素も次第にカメラ側で開発されるようになるだろう。

テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 2007年7月号より

2007/09/16 00:00:00


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