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文章品質の重要性と校正支援

新聞社や出版社では、古くから校正校閲のルール化が進められていたが、近年では若い世代への継承が課題となっている。また、ITの進展により誰でも簡単に情報発信することができるようになったが、企業では情報発信に伴うコンプライアンスやリスク管理の観点からも、文章品質が重要視するようになっている。
テキスト&グラフィックス研究会では、このような課題を解決する文章校正支援ツールについて、株式会社ジャストシステムの村尾昌浩氏に話を聞いた。

ドキュメント作成におけるリスクと非効率

新聞社等では記事の書き方を厳密にルール化しているが、若い世代への継承が課題となっている。ルールが周知されておらず、その結果、校正のやり取りが増え、効率面でも問題となっている。企業でもWebページ等で情報発信する機会が増えているが、うっかり不適切な表現を用いてしまい問題となることがある。

日本語入力システムならではの問題として、変換ミスによる同音異義語入力がある。利用者が入力すべき言葉に同音異義語があることを知らないと、正しく入力されているかどうか判別することはできない。また、例えば「ください」か「下さい」という表記揺れの問題がある。企業内のドキュメントに関するルールを守り、間違いを減らすには、何らかの方策が必要である。

日本語入力ソフトと文章校正ツール

ドキュメント制作にはいくつかの過程がある。書く人、校正する人がいて、原稿ができる。原稿を書くにはルールが必要であり、校正する際にそのルールが守られているかをチェックする。
ATOKビジネスソリューションは、日本語入力ソフトのATOK 2007、書いた後の文章をチェックするJust Right、これらのツールの設定や表記統一ルールを共有するための辞書配信システム、用語管理データベースから構成されている。

ATOKでは間違った入力をすると、赤字で警告がおこなわれる。画面上で警告表示をし、何に直さなければいけないのかを入力時に教えてくれる。同じように、各社のルールに則した指摘方法や訂正候補を作ることができる。これが校正機能である。

自動置換機能を組み合わせることもできる。スペースキーを押すと第一候補に自社のルール通りの内容を表示させることができる。ほとんどの新聞社で、この方式が使用されている。記者は入力操作をするだけで、どんどん自社のルールにしたがった記事ができ上がる。

間違いのないように入力するための省入力機能も充実している。何文字かを入力すると、頭3文字に合致するキーワードが候補として表示される。携帯電話でメールを打つ際にも、入力候補がいくつも表示されるが、同様の機能である。自社でよく使われるキーワードを予め設定すると、間違いが少なくなる。

東洋経済新報社の「会社四季報」編集グループは、「四季報辞書」を作成し、ATOKと共に使用している。校正ツールの導入によって、校正の費用や時間を50%程度に削減することができたという。赤字の箇所も2/3に減り、かなり効果があったという評価であった。

Just Rightは、文章ができ上がった後に使うツールである。「自社のルールで書かれているかどうか」という視点でチェックし、間違いがあると教えてくれる。誤字脱字、仮名遣い、慣用表現、呼応表現、「ら抜き」、「さ入れ」等をチェックすることができる。チェックのための辞書を作ることができる。例えば、「インディケーター」ではなく「ランプ」に統一したい、あるいはこういう名称を使ってはいけないといったチェックも可能である。
「表記揺れ」を指示すると、本文中にある「表記揺れ」がグルーピングされて提示される。「ください」と「下さい」や「申し込み」という単語など、よくある表記揺れである。印刷物になってしまうと単純ミスを見つけられず、印刷をし直す以外にないということもあるが、このツールを使うと容易にミスを発見することができる。

共同通信社の「記者ハンドブック」

ATOK とJust Rightのオプションとして、共同通信社の「記者ハンドブック」を利用することができる。文章を共通通信社ルールに照らし、適合しているかという視点でチェックをする。画面の左側にテキストのコピーが表示され、問題のある箇所に色が付き、どこに問題があり、どう間違っているのかが提示される。画面の右側には、「記者ハンドブック」の表記基準と違うということが示されている。例えば、「皆様」は「皆さま」にしなければいけない、ということである。訂正候補をクリックすると、グレーアウトしていた「皆様」が「皆さま」という単語に直される。

(この続きはJagat Info 2007年7月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報誌 Text & Graphics No.257に掲載しています)

2007/09/24 00:00:00


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