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情報産業へ向けた業態変革の挑戦

株式会社メディアクルー 取締役 事業推進部 ゼネラルマネージャー 下河原健二氏


メディアクルーは、2005年7月に親会社である川口印刷工業から分社独立して2年が経過しました。現在従業員は17名、業務の柱は5つ。ホームページなどのデジタルメディアの制作・運用更新業務、インターネットサーバーのレンタル・保守管理業務、システム開発・ITソリューション関連業務、市販情報誌の制作ディレクション〜印刷データ制作業務、そして印刷物の受注窓口業務となっています。

川口印刷工業は、1904年岩手県盛岡市に化粧荷札を製造販売する川口屋荷札店として創業、以来何度かの業態変革を経て現在は商業印刷物を中心とした総合印刷業を行っています。盛岡市内2カ所と東京に印刷工場があり、盛岡本社・営業所、東京・仙台・北上・青森・八戸に営業拠点があり東北エリアおよび首都圏を中心に事業を展開しております。売上高43億円、従業員数208名の事業規模となっています。

分社化の目的

印刷業は情報サービスの一翼を担う産業であり、業務の過程においてデジタル化も相当進んでおります。しかし、最終製品である印刷物を製造する上では、原材料である紙の仕入れに始まり、印刷機械を始め多種・多額の設備投資なしには事業が成立しません。いわゆる製造業(装置産業)に当たります。一方、メディアクルーの製品は物ではなく、デジタルデータに置き換えられた「情報」そのもの、あるいはサービスであり、情報サービス業に分類されます。唯一最大の経営資源は、人材そのものであり、極論すれば仕事の付加価値やビジネスモデルも含め会社の優劣は人材の優劣で決まってしまいます。印刷業との対比で言うと、設備投資型産業か人材投資型産業かという違いがあります。

当然のことながら、人材はどの会社・産業においても貴重な経営資源であることに違いはありませんが、その優先順位や依存度が全く異なります。従って、組織・体制作りの考え方や、就業形態、人事給与制度・処遇の仕方、目標設定の考え方等々違いが出てくるのは当然であります。異なる業態を一つの会社のルールの中で運用していくより、別な器を用意したほうが人材活用・人材育成の観点でも有効と考えます。

次に、別法人化するということは、独立採算性が求められるということです。良くも悪くもそこで働く社員の業績結果がダイレクトに経営数字に反映され、一人ひとりの処遇に跳ね返ってきます。本社の一部門として事業を行っていた時は、自分たちの業績がどれくらい会社に貢献できているか、もうかっているのか赤字部門なのか、いま一つ明確に把握できませんでした。分社化してからは緊張感や、シビアさが大きく増しましたが、経営数字も明確になり社員のモチベーションや当事者意識は間違いなく高まりました。

人材・組織に対する考え方

求められる人材の条件を考える時、ポイントがいくつかあります。まずコミュニケーションスキルです。これは、どの職種・ポジションにおいても欠かすことのできない重要な要素です。そして志向性です。今まで経験してきたことを今後どう生かしていこうと考えているのか、そのベクトルは会社の目指す方向・期待する方向と合致するのかということです。何を経験してきたか、どんな知識・スキルをもっているかだけでは不十分です。過去の経験だけで商売になる時代ではありません。経験を肥やしに、どんなビジョンを開花させていこうとしているかが重要です。

目標をどれだけ高く掲げられるか(目標設定能力)、その目標を達成させようとする強い思い(自己実現・目標達成意欲)をもっているか、それを相互に意思疎通(コミュニケーション能力)を図り、共感・共有しながらお互いを高め合っていく。その関係性の中で人材が磨かれ、組織力の向上につながっていきます。そして、それを支える受け皿として、人材育成をベースにおいたマネジメント、組織運営や制度作りが必要となります。

今後の展開と課題


地域情報を集約したポータルサイト「チィキーズ」

現在、本社にて「チィキーズ」という地域情報を集約したポータルサイトを運用しており、当社ではそのバックグランドのシステム設計と開発を行っています。試行錯誤を繰り返しながら将来的には質・量ともに地域一番店になることを目標に、本社と協力し合いながら取り組んでいます。このコンテンツや運用ノウハウを2次活用・3次活用して新たな事業展開に結び付けていきたいと考えています。

メディアクルーの設立目的として挙げられている事業の中で、まだ実現できていない事業が2つあります。その一つが出版事業です。この事業領域については、雑誌・書籍など印刷物の発行にとどまらず、先に挙げた「チィキーズ」を始め、多様な情報を集約・編集してコンテンツを蓄積し、自らワンソース・マルチユースを体現していくことを目的の一つとしています。

もう一つが広告代理業です。ますます複雑混とんとしていく状況の中で、顧客のニーズに的確に応えてくためには、ワンストップサービスの提供が不可避であり、時代の要請といっても過言ではありません。現在、このポジションに最も近い存在は広告代理店であり、残念ながらわれわれグループはその2次的なポジションにとどまっています。しかし、今後その広告代理業自体も業態変化していかざるを得ない状況の中で、新しいステージと秩序が生まれてくると期待しています。

新規事業を考える時に、既存事業から派生する事業領域であれば、社内の人材を活用し、研修と実務経験・成功体験を重ねていく中で育成していくことが可能ですが、全く新たな事業領域となると、社内育成では限界があります。業界固有の知識・スキル、人脈、顧客接点、ビジネスモデル作り等々経験者でないとクリアできない課題が多く、そのような人材を確保できるか否かで、その事業に踏み出していく際の分岐点になると思われます。 人材確保・育成の観点で付け加えると、まさにJAGATが取り組んでいるクロスメディアエキスパートの存在が、どの事業においてもキーパーソンとしてその重要性が増してきております。今後、ある職制クラス以上の社員には、クロスメディアエキスパート認証にチャレンジしてもらいたいと考えています。

JAGAT info』9月号 特集「人材力が新ビジネスを開く」より一部抜粋

2007/10/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会