「古書ネット通販」を日本で初めてスタートした「紫式部」では、本を愛する人のサイト「スーパー源氏」を運営している。
2007年7月時点で、登録古書店数240店舗、冊数にして200万冊を検索できる。同社社長の河野 真氏は「本の楽しさや面白さ、奥深さを訴えながら、古書店の方々の特色や顔が見えるサイト作りを目指している」と語る。
同社の創業は1995年。知り合いの古書店主から「古書の通信販売をしたいのだけれど」と相談を持ち掛けられたのがきっかけだ。 もともとOA機器メーカーのシステム事業部で働いていた河野氏は検索エンジン付きの古書通販サイトを立ち上げた。当初はあまり反応がなかったが、インターネットが普及するにつれ、受注や問い合わせが増えてきた。2000年、長年勤めたメーカーを退社し、独立した。
今となっては古書売買サイトはさまざまあるが、「紫式部」では「書店やユーザーにとってほかにない魅力的なサービス」を強化することで勝ち残っている。
例えば書店向けには
古書を探してサイトを訪れるユーザー向けには、一般的な検索方法ではなく一風変わったサービスを取り入れている。
その一つが、探している本の情報を登録すると、その情報がリアルタイムで参加古書店に配信される。 書名が正確に分からない場合でも、探し出すヒントを書き一般に公開できる。それを読んだ一般個人や古書店主から連絡が来るシステムもある。このように、ただネットで本を扱うだけでなく、欲しい本が必ず見つかる仕組み作りを目指している。
「スーパー源氏」以外のビジネスとしては、伝統工芸・美術品専門サイト「桐壺」、古典学習支援サービス「若紫の会」の運営や、家系図作成などがある。 これらに加えて、2007年3月、日本の伝統文化をデジタル化し公開するビジネスを始めた。
江戸後期から明治時代にかけての未公開の貴重な書物、絵画などのコンテンツをコレクターたちから収集し、デジタル化する。Web上で「 源氏ギャラリー」として公開し、版権使用希望者を募っている。
使用用途としては、ブックデザイン、和室内装、インテリア、アパレル、ステーショナリー、塗絵、化粧品、ポスター、日用品など幅広く利用できる。
「日本の古いものにも良いデザインがたくさんある。世の中の流れを見ながら、これらをITと融合させて面白いサービスができないだろうか?」(河野氏)
今はまだ具体的なビジネスにはなっていないが、毎月新しいコンテンツを追加していく予定である。 アマゾンなどの大手の会社とは、ブランド力や資本力が違うが、本の周辺に特化して、サービスを広げていこうとしている。
数ある古書店の中で生き残るため、より専門店化を図りつつ、コンテンツのデジタル化を進めていく。
(『プリンターズサークル』9月号より)
2007/10/13 00:00:00