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「クロスメディア」はプロモーションの一部か?

クロスメディアという言葉は、今となっては随分耳には馴染んできた。広告の分野でメディアミックスとか言われものと、今の時代のクロスメディアの捉え方がどう違うのだろうか。また似た言葉だが近年よくコンバージェンスという言い方がされる。言葉の定義も含めてクロスメディアの進化を少し考えてみたい。

コンバージェンスを融合と直訳すると、いろいろなメディアが1つになってしまうのかと思われるが、アメリカで言うところのメディアのコンバージェンスというのは、情報の「根」が一緒になるようなことである。例えばテレビと新聞はほぼ同じ経営体であり、多くは新聞社がテレビ局を始めた。現状では取材記者はテレビと新聞の両方いるが、それは一緒にできるのではないかという考えがコンバージョンスを掲げるところにはある。そうするといろいろな情報の根は共通になっていく。デジタルで表現としてのメディア展開は、今まで以上に細かく分類された多様なものが出現するが、それらの根は共通になるようにうまくコントロールしていくという意味合いがある。

JAGATではこのコンバージェンスが進むことを前提にして、これから必要な能力・スキルアップのためにクロスメディアのエキスパート認証制度を始めた。メディアの多様化に従って、メディアをクロスして使う企画する能力を育てなければならない。現実的には多くの場合、いわゆるプロモーションに相当するものが多い。それはプロモーションは結果が見えやすく販促予算がとりやすいからだろう。
しかしJAGATではクロスメディアは必ずしもプロモーションだけとは捉えていない。印刷にはいろいろなお客さんがいて、そこの業務やサービスに必要なものとして今まで印刷物を使っていた。そのほとんどのものが今後はコンバージェンスに関わるようになるのである。

つまりクロスメディアがメディアミックスと違うのは、デジタル時代におけるメディア土台や役割の変化に対応しなければならないというところに比重があるからである。デジタルのメディアが取り沙汰される文脈は3つある。それは、IT、ネット、メディアであり、これらは十分聞きなれた使い古された言葉のようであるが、これからビジネスを変えていく要素として個々に非常に重要な意味合いがある。

ITというのは、要するにコンピュータ処理のことで、人間が処理するのではなく、無人・自動処理が進むとか自動処理に取り組む流れである。DTPに例えれば今まで人手で1ページいくらでやっていたものを、サーバの自動組版にすればワークフローもコストモデルも全く変ってしまう。一歩先にWebのCMSはそういう流れである。
ネットというのは、インターネットもあれば携帯もあれば、Hotspotなど、別の表現をするとユビキタスになるということである。ユビキタスの「いつでもどこでも」はケータイが先行しているが、ICタグも含めてさまざまなコンピュータ処理が「いつでもどこでも」になるというところに大きな変化がある。
メディアというのは、コンテンツの表現形式、コンテンツの入れ物と考えればいい。デジタルになると、例えばホームページもBlogもSNSも運営形式は異なっても、見るほうにとっては同じようなもので、際限なくいろいろなデジタルメディアの様式ができてくる。コンテンツ側から考えると、昔はメディアに合わせて「仕上げ」をしていたのが、メディアの方が流動的になるという変化には戸惑いも出ている。

販促企画に必要な能力は、時代を超越した普遍的なものがあるが、それに加えて今大きく変化しつつある要素を含めて、巧妙に使いこなすことが必要になる。ただし技術に基づくもののコスト、あるいはサービスの値段など、ITの自動化が進めばどんどん下がるというような変化がクロスメディアのいたるところで起こってくる。つまり流動的な技術に翻弄されないITリテラシーがないと、継続的なビジネスの発展は望めない。

確かにまずプロモーションの方法の大変化が目の前にあるのだが、その一歩先のビジネス構築を想定してクロスメディアのエキスパート認証制度のカリキュラム及び試験は検討されてきた。


【関連記事】
・その2  ビジネスが変わる、メディアの役割が変わる
・その3  eビジネスの促進要因としてのWeb

(2007年11月 クロスメディア研究会)

2007/11/06 00:00:00


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