本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

ビジネスが変わる、メディアの役割が変わる

プロモーションの世界で、マス広告が退潮になったのでこれからはインターネット広告へのシフトだろう、という発想は成り立たない。インターネット上でTVCMの動画を流すとかマス広告と同等のことをするのは旧来の広告の視点であって、物事の本質としてコミュニケーション手段の大変化が起きていることに気づかねばならない。

ビジネスを前進させるのに広告だけに梃入れするのは不完全だが、Webでどうこうするというのも同様に不完全で、ビジネスのPDCAの回し方がITやネットでどう変わろうとしていることが本質である。だからJAGATのクロスメディアの通信教育やクロスメディアエキスパートのカリキュラムにおいては、ITによる経営手法の変化や電子商取引、eビジネス、電子政府といった、一見ホームページ制作とは直接関係ないような項目も挙がっている。

「クロスメディア」はプロモーションの一部か?の記事では、「IT、ネット、メディア」がビジネスを変えていく要素であると述べた。クロスメディアエキスパートは制作のディレクター相当の役割を想定しているが、近未来的に制作ディレクターはクライアントのeビジネスの核心との結びつきを強めるであろうと考えている。下図の左側がクライアントで、クライアントの中にはビジネスの革新を進めるリーダーが居るはずで、その人はeビジネスに着目している。例えば日本で最大の書店はAmazonになりつつある。あるいは、日本で最大の小売業は百貨店・ショッピングモールよりもヤフオクとか楽天のほうが大きくなりつつある。通信販売もネットにシフトして利益を上げている。

そういうお客さんのビジネスの変化に伴って、必要なお手伝いをすることがクロスメディアエキスパートでいう制作ディレクターの役割として考えられている。eビジネスの動きはいろいろあって、例えばサプライチェーンマネジメント・調達関係も、半導体部品や機械部品のように業界横断でどんどん進んでいるものもあれば、もっと底辺にも波及しているのが見られるようになった。徳島のおばあちゃんが、山でいろいろな葉っぱを取ってきて、大阪の料亭にツマものを売る「いろどり」という会社がテレビで取り上げられていたが、最近は本まででている。ネットを使うことで、料亭側から見れば、ツマもの調達が容易にできるようになった。

営業活動で言えば、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)を進めていけば営業活動の効率化に留まらず、マーチャンダイジングとかビジネスそのものがITによって変わってくる。eビジネスになると、いろいろな人と人の接触の場がデジタルメディアになる。図のeビジネスの下にコミュニケーションをするためのメディア化とあり、一番下にITの技術というくくりがある。クライアントの社内にはグループウェアのようなものがあり、仕入先や販社との情報共有も必要で、外部にもオープンにいろいろなところで人間が携わるところを作っていかなければならない。そこにWebやケータイのツールやいろいろなサービスが登場して来ている。

事業プロデューサは全体の枠組みを考えて、そこからコミュニケーションシステムや販促や制作の仕事が下りてくる。eビジネスとデジタルメディアの関わりは、上から下に「これを作れ」というものだけでなくなり、Webの技術がビジネスのいろんな範囲に及んでくると、販促だけではなく、ビジネスのコストダウンも考えて、改善可能なものを制作の側から提案できる機会が増えていくだろう。制作の側からビジネスの本丸にアプローチしていくことが先決で、結果的にはクロスメディアとして効率的な消費者とか生活者まで含めたコミュニケーションシステムを実現することになる。

今日の企業Webサイトの半分はクライアントからの評価は得られていないことが、「企業Webサイトの実態とブランディング向上」報告にあるが、これからは役立つコミュニケーションシステムを作る、クライアントにとって話のわかるディレクターを養成しようということが、クロスメディアエキスパート制度が目指しているものである。


【関連記事】
・その1 「クロスメディア」はプロモーションの一部か?
・その3  eビジネスの促進要因としてのWeb

(2007年11月 クロスメディア研究会)

2007/11/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会