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標準原価を自動スケジューリングに活用

コスト配賦と標準作業時間の策定から標準売価を作成

(株)高速は埼玉県川越市に本社を置き、デジタルデータを主体としたビジネスフォームの印刷、そして情報処理におけるデータプリントサービスを行っている。

同社では、標準原価を作成するにあたり、まず人件費、電力費、減価償却費、直接製造経費、間接製造経費などの経費を各工程(部門)に割り振り、1分間の稼動コストを求めた。このコストは、販管費を含んだものと含まないものの二通りを求めている。
次に、この稼動コストをもとに標準売価表を作成した。各工程の作業内容を細かく分解し、それぞれの標準作業時間を求めた。標準作業時間は、過去の作業日報を分析したり、現場でストップウォッチで計測したり非常に苦労しながら作成した。
作業項目はかなり細かく設定しており、例えば印刷の段取り時間は、ピッチ調整/色洗い/ブラン洗い/版交換/インキ入れ・色だし/色調整といった項目に分かれている。また、厚紙やベタ刷りといった製品仕様別にも標準時間を設けている。
こうして、すべての工程において標準売価表を作成した。このデータを基幹システムに登録し、見積りシステムとして利用している。それまでは営業マンによって見積り結果がばらつくことがあったが、システム化することにより誰がやっても同じ結果が、しかも短時間で出るようになった。
見積りが承認され、受注確定となると営業は作業指示書を発行する。この段階ではさらに細かい仕様がわかっているので、見積り時よりも精度の高い標準売価および予定作業時間が算出される。

スケジューリングソフトの活用と効果

以前の日程計画は印刷機のところまででことが足りていたが、最近は製品仕様が付加価値を高める方向にシフトしていき、後加工工程が複雑化している。そのため人手による日程計画の限界を感じ、ジェイティ エンジニアリング(株)の「joy scheduler(ジョイスケジューラー)」というスケジューリングソフトを導入した。

一般に製造業対象のスケジューリングソフトは、設備マスタ、工程マスタ、製品マスタ、部品マスタ等を定義し、そしてある製品を作成するには、どのような工程が必要で、各工程にはどのような部品が投入され、どのような設備を使って、どのくらいの時間で処理が終わるということを事前に定義する。このマスタデータが自動スケジューリングのベースとなる。印刷業は組立加工業などとは異なり、個別受注生産となるので事前のマスタ定義が難しい。例えば、製品の仕上がりサイズがA4という情報だけでは、全判機、半裁機、あるいは四裁機のどの選択が妥当かは判断できない。さらに折り加工の結果A4サイズになっている場合は展開サイズから面付けを決定しなければならないし、紙の目への配慮や変形サイズへの対応、さらには頁物の場合、折り丁の設定と端数頁の処理など定型処理が難しいケースが多い。

(株)高速では、スケジューリングソフト側にマスタ定義をするのではなく、基幹システム側からジョブの仕様データとともに工程/設備/予定時間のデータを毎回渡す運用とした。標準売価を設定するために作成したデータをそのまま活用している。設備仕様(色数や版サイズなど)が同等の機械が複数ある場合は、事前に優先順位を設定してあるので、作業指示のたびに号機指定まで行う煩わしさはない。

日時運用としては、1日1回夕方にバッチ処理で、基幹システムからスケジューラにデータを取り込み、翌日以降のスケジュールを立てている。自動作成されたスケジュールを人間が見て調整を行う。調整は画面を見ながらドラッグ&ドロップで行う。あるジョブのスケジュールを変更すると矛盾のないように前後の工程のスケジュールも変更される。手作業でのスケジューリングでは決して実現できない利点である。また、スケジュール表では、自工程だけでなく前後の工程の予定まで把握できるので、工程のボトルネックを発見しやすい。

スケジュールソフトの導入により、従来は3名で日程計画を行っていたものが1名になっている。しかも、印刷工程だけだったものが後加工工程まで全部できるようになっているので効果は絶大である。また、スケジュール上の予定と実際の結果とを対比させる形で作業日報を作成している。差異を分析することで、問題点の改善あるいは標準時間の見直しにつなげている。
(2007年11月)

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2007/11/14 00:00:00


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