本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

DTPエキスパートのスタートライン

◆株式会社大成美術印刷所 CS大阪営業部 部長 山本和人

 
試験への取り組み
今年4月、来年度新入社員募集の会社説明会が始まり、大阪営業部でも、本社同様に説明会が開かれました。多数のエントリーがあり、2つ3つの資格をもつ方がほとんどですが、さすがにDTPエキスパート認証はありませんでした。
私がこのDTPエキスパート認証取得を思いたった時、2年くらい前ですが、何から手を付けたらよいのかと迷い、まずDTPエキスパートスーパーカリキュラムと課題制作スーパートライアルを購入し、一念発起で勉強を始めました。しかし、さすがにカリキュラムの幅が広いのと、覚えることが多いのとで、ページがなかなか進まず、たとえ進んでも、少し戻って復習すると、えー!という感じで、全く頭に入っておらず、また元に戻って勉強し直すという繰り返しになりました。そのうちにお定まりのコースで、次第に勉強から遠ざかり、いつしか先延ばしになってしまいました。
そんな折、社内でも1人2人と合格者が増え、私にもお尻に火が付き始め、じっくり構えてはいられなくなりました。業務的に必須でもありませんが、有言実行型の私としては、今さらやめる選択肢は残っていませんでした。
しかし再度、勉強を始められたきっかけには、社内の先駆者たちのアドバイスが大変な助けになったことは間違いありません。当初のようにまたもや真正面から取り組んだのでは、取り付く島もなかったのでしょうが、心優しい彼らからのアドバイスは、受験までのスケジュール管理や過去問題の取り組み方、更新問題集の提供などであったりして、私は幸運な再スタートを切りました。
そして、単にスーパーカリキュラムを読み始めるのはやめて、参考書扱いとして(もちろん後で読み返す破目になるのですが)、取っ付きやすい勉強から始めました。つまり、過去問題の取り組みで23、24、25期の過去問題を、繰り返し読み、解いては採点、解いては採点の単純な暗記勉強を続けました。だれでもですが、そのうちに問題を覚えこんでしまうことにもなり、問題の最初の数文字を読むだけで問題も答えも分かるまでになりました。
以前「超勉強法」(野口悠紀雄著)を読んだ時、パラシュート勉強法と言って、「学習は基礎から順をおって進まなければならないと一般に考えられているが、基礎は退屈である。退屈なことを繰り返していると勉強が嫌になる。目的の地点まで飛行機で連れてきてもらって、パラシュートで降下したほうがよい場合も多い」などと書いてありました。勝手な解釈かもしれませんが、勉強もはかどると楽しく感じられるようになりましたし、言い換えれば楽しくなければ続かないのが勉強ということかもしれません。
毎日30分間の勉強が途切れなく継続できるようになったのは、そんなことがあってのことでした。

5つのカテゴリ
このエキスパートの勉強をしていて感じたのは、DTP、印刷発注、印刷工程、色、コンピュータ知識などの5つのカテゴリ分けは、非常によくできていると思ったことです。勉強していても、自分で何を勉強しているのかが把握できたし、勉強も整理されて覚えていけたように思います。各カテゴリには、はっきりとした敷居はないものの、すべてクロスオーバーしながら、カテゴリとして独立しており、どのカテゴリもDTP関連の仕事に携わるわれわれにとって必須とも言えるべきもので、すべてが連携した知識となって学習できました。
DTPエキスパートは、取得してしまえば、おしまいというものではないでしょう。認証取得はDTPエキスパートのスタートラインに立ったということなのです。目標が見える位置に立てただけのことなのです。ご周知のとおりDTPに関するコンピュータ技術革新は目まぐるしく進み、われわれが短期間の試験勉強で覚えた知識など、すぐにほこりをかぶってしまうほどの変化だと思います。変化する社会では、知識の有効期間が短く、常に知識が求められるということです。まさにDTPエキスパートのことではないでしょうか。「取得して新たなスタートラインに立つ」これがこの取得の意味かもしれません。

課題制作は侮れない
私は、学生時代にデザイン科でデザイン概論やデザイン実習を学びました。朋友もグラフィックデザイナーが多くいて、Macには早くから携わることができました。ということもあり、課題制作には、一応の自信があったのですが、実際は、困った2週間になりました。最初の1週間で制作ガイドを作り、残り1週間でチラシ制作に取り掛かる計画でしたが、制作ガイドを書くのに非常に時間が掛かり、各パーツの指定を書き出すとなると、実制作よりも時間を取られました。また、実制作で変更したりすると、ガイドも書き直しになり、二重に手間が掛かり、結果、やり直しが増えて時間に追われることになりました。
そんな中で、自分では上出来と思ったツアーチラシ「オスロ」は、私の思惑と掛け離れ、厳しいコメントが書いてありました。制作する側のだれが読んでも、同等の制作物に仕上がる制作ガイドを作るのは大変困難な作業でありましたし、自分のデザインセンスのなさにも痛感しました。

印刷営業のスタンス
20年近く前に印刷営業技能審査認定という試験がありました。活字組版や写植版下、製版レタッチや色分解、刷版や印刷、製本加工の折りや綴じの勉強をして、最後に課題制作に当たる活版かオフセット印刷物の見積計算書を仕上げるというものでした。組版の価格も和欧混植や字数・段組みなどの複雑さで割増し計算になり、製版もレタッチやカラー点数で基本単価が変わり、その他、各工程でも割増し計算で複雑になり、ちょっとした課題制作になりました。今日のDTPエキスパート認証試験と単純には比べられませんが、講義を受けて試験の結果、認定となりました。多分DTPエキスパート認証試験のほうがやっかいだと思いますが。
当時、印刷営業士の資格も取得してしまえばそれっきりのことで、取得してから勉強を続けるっていう考え方はもてなかったように思います。印刷営業士の知識も、必要不可欠な知識であるので、それをベースにして経験を積んで広げていったことも確かですが、知識として勉強を続けたことはなかったと思います。
多分、当時は技術の進歩も今のように目まぐるしく変化もしなかったからでしょうし、現場の経験と知識の見聞の積み重ねで満足していたのでしょう。

最後に
今回の経験で、私も長年、印刷業務を続けてきましたが、見識が浅かったことは認めざるを得ません。知識や技術の習得がすべてだと思いませんが、自分の仕事に自信をもつ上では資格を取得して、上を目指すことはやぶさかではないと思います。
これからの印刷業務において5つのカテゴリの知識は必須だと思います。顧客との商談の中や社内の勉強会でも、裏付けされた知識をもち、自信をもった言葉で接することが、その人自身の人格や業績に寄与するものと信じます。
これから取得を考えておられるのなら、お勧めします。もちろん合格するためには、いくらかの努力と辛抱と時間を費やすことが不可避にはなりますが。しかし、これほど無駄のない試験も少ないだろうと思います。褒め過ぎかもしれませんが、全てにおいてベーシックな学習で、かつ実践的だからです。販売業務や制作業務にかかわらず、良い知識が身に付くと思います。
ぜひ、挑戦してみてください。幸運を祈ります。

 

 
JAGAT info 2007年8月号

 
 | INDEX | | 閉じる |

2007/11/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会