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成熟化するデジタルカメラ市場の展望

デジタルカメラ市場は既に成熟している。世界のデジタルカメラの販売台数は、2009年の約4千万台をピークに減少、写真プリンタも2008年、2009年の約2千万台をピークに減少に転じると見られている。この間もデジタルカメラの価格は低下するので、売上ベースでは2008年からマイナス成長に入る。
一方、既に撮影された写真データのストックは膨大なものになっている。たとえば、2007年において、アメリカの消費者は1000億枚以上のデジタルイメージを保管しており、2011年には3000億枚になる。世界全体で見れば、2007年の4500億枚が2011年には1兆枚に達すると見られている。

このような中で、消費者のニーズは撮影した後に、ただ保管してある写真から必要なものを取り出し有効に利用することに向かう。したがって、撮影、保管、編集、共有、印刷、ビューアでの観賞といった一連のサイクル機能を容易に利用できる環境「Digital Imaging Ecosystem」の構築が重要である。そのことによって、例えば、写真の編集市場は年率4%成長、保管市場は年率23%、テレビでの視聴市場は年率12%で伸びると期待される。

デジタルカメラ市場の市場ニーズは、各セグメントで多様化する方向に向かいつつある。したがって、製品供給側としては「技術の追求」ではなく、「消費者の各セグメントとのコミュニケーション」に重点を置くことが不可欠である。
アメリカにおいては、デジタルカメラの主要ユーザーは小児を持つ母親であり、この市場の主なニーズは「思い出を残す」ことである。35歳以上の年齢層においては、編集や共有に比べて「プリント」のニーズが強いことが特徴である。一方、若い年齢層のユーザーは「共有」を目的とした利用が多く、オンラインやeメールで見ることが多い。
プリントするにしても、単に一枚の紙に印刷するだけではなく、写真アルバムはもちろん、Tシャツ、カード、コースタ、マウスパッドへの印刷なども新たな市場として期待できる。

アメリカの一般消費者のプリント量は減少する方向にあり、プリント市場拡大のためには、消費者に、保存、検索についての教育をすることが必要である。また、プリントをするにしても、オンラインでのサービスは増えず、注文はオンラインでしても、出来上がり製品の受け取りを店舗で行うことを含め、店舗の利用が増える傾向にある。ひとつの理由は、出来上がり製品の配達料支払いを負担に感じているからである。

アメリカにおけるカメラ付携帯電話とデジタルカメラとの競合は、ティーンエージャー市場、低価格、複数所有分野であるかもしれない。ただし、カメラ付携帯電話がデジタルカメラ市場を大きく侵食することはないだろう。消費者は、携帯電話のカメラによる写真画質に満足していないし、取った写真を携帯電話から取り出して使うことの利便性も問題である。また、携帯電話メーカーが2MP以上のカメラを出す可能性少ないからだ。

プロカメラマンの世界では、ウエッブ上での利用は増加しているが、校正や最終印刷物として利用するためのプリント需要が減少傾向にある。既にソフトプルーフとして利用しているのは15%で、興味があると考えているプロは60%である。イメージ編集ソフトとしては、Adobe Photoshopの利用がダントツ(89%)に多い。

(去る12月6日に行なわれた(株)インフォトレンズ主催「デジタルイメージングコンファレンス2007」からの抜粋、要約・2007年12月)

2007/12/16 00:00:00


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