「 プリンタブルエレクトロニクスへ〜記録技術最近の動向(その1)」では、日本国内の状況を中心に述べてきましたが、実用化に向けて多くの課題があります。平成17年の経済産業省のナノ技術に関する委託調査結果を参考にすると、「2010年以降に漸く花が咲く」という結果になりそうです。
応用物理学会が作成したロードマップにおいてもフレキシブル有機ELディスプレイの登場が2005年から2010年、電子ペーパーが2010年から2015年、有機メモリーは2015年から2020年となっており、2010年頃が本格スタートの起点となりそうです。逆にこのタイミングから考えますと、来年、2008年には何らかの次の動きが出てくる可能性が高いのではないでしょうか?
なお海外では一部ベンチャー企業でシリコンインクを用い数百のトランジスタを製作する試みも報告されています。またIJヘッドメーカを中心としてRFIDのタグ(アンテナ)や駆動回路の製造にも目が向けられています。
以上、実用・検討段階の事例を述べてきましたが、今後の応用展開が考えられるのがバイオの世界と思われます。IJによるDNAチップ製造についてはすでに検討がなされていますし、3Dプリンターによる人工骨の製作等も既に検討されています。また血管パターンの再生等についても印刷技術の応用が可能と思われます。
日本では複数の独立行政法人等を中心にナノ技術開発が行われていますが、ナノとバイオ技術の連携も開始されました。また欧州を中心とした国際協力活動もあるようです(アジア代表は韓国)。おりしも今月、京都大学から万能細胞の作成に成功したとの衝撃報告がありましたが、米国を中心にキャッチアップが急激に行われています。このようにグローバルな競争が開始されていますが、国内では漸く2010年に神戸に広大な計算センター(ペタ級)が完成します。人口10万人規模の都市と同じ電力を消費するという非常に大規模なセンターですが、生命シミュレーションを行う事もその大きな目的のひとつです。
以上、2010年を契機としてNBIT(ナノ、バイオ、IT)の組み合わせで従来にない独自技術が作り出され、生活が大きく変わる可能性があります。サブプライム問題の実体経済への影響が心配されており、また国内景気の立ち上がりの欠ける現在ですが、技術開発の分野では夢のある世界が、国家間のグローバルな競争で開拓されつつあるのです。
このような大きな技術変革の時代を迎え、「印刷」業界も長期的な視野に立ち、成長分野への種まきを行う必要があるのではないでしょうか(一部企業では既にはじまっています)。
以上、年末に当たり、希望や可能性も踏まえ記録技術の進歩・動向を簡単に報告させていただきました。来年が良い年になりますように諸兄の御活躍を祈念いたします。
(文責 松縄正彦 2007年12月)
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2007/12/18 00:00:00