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デジタルプリントの用紙・インキと適性 (その1)

■デジタルプリントの方式

デジタルプリントの方式の代表例としてインクジェット方式と電子写真方式がある。インクジェット方式の制御方式は連続でインクを出し続けるコンティニアス方式と必要なときにだけインク滴を吐出して着弾させるドロップオンデマンド方式がある。 また、ドロップオンデマンド方式の吐出方式にもピエゾ式とサーマル式がある。ピエゾ式は、電圧を変形するピエゾ素子(圧電素子)を利用してインクを吐出する。サーマル式はノズル先端のインクを瞬時に加熱して発生する気泡の圧力でインクを吐出する。

電子写真の露光方式は、レーザービームとLEDの方式に分けられる。そして現像方式には乾式トナーと湿式トナーがある。さらに乾式トナーの定着方式にはヒートロール定着とフラッシュ定着がある。湿式についてはイコールIndigoのプレスになるので転写と定着を兼ね備えているということでトランスフィクス(ブラン熱圧定着)になる。

■平版オフセット印刷用インキの耐性

 オフセット用インキには印刷物の用途によりいろいろな耐性がある。耐光性・耐熱性は印刷物が光(主に紫外線)や熱に曝されたときにどの程度変褪色するかを表す指標である。顔料の資料にはブルースケールという形で1〜8段階で表示されており、各インキメーカーではそれぞれの基準を設けて評価している。耐熱性についても基準があるが、印刷会社から個別の依頼があるときは要求に応じて対応している。
 耐薬品性とは印刷物が酸やアルカリなどの薬品に接触したときにどの程度変褪色するかを表す指標ある。代表的なものとしては苛性ソーダ・アルコールがある。
耐後加工性は印刷物がどういう加工をされるかで与える耐性である。耐パラフィン性、耐石鹸性、耐ビニールコート性などがある。耐石鹸性は石鹸に対する耐性である。固形石鹸は紙の箱に入っているものもある。そのときに石鹸の成分により箱の表面の印刷が滲むことがある。 
 耐ビニールコート性とは印刷物がPP貼りやビニール貼りされると裏側には必ず接着剤が着いているが、その接着剤によってインキが滲むのを防ぐためのものである。NIPS適性はプリンターに使う帳票用紙のインキに使われる適性である。

■水性インクジェットインクの特長

 水性インクは色材によって大きく2つに分けられる。染料を採用したインクと顔料を採用したインクである。染料インクは完全に水の中で溶けているというイメージだが、顔料インクは水の中で顔料同士がなるべくくっつかないように分散しながら、安定した状態で浮いているインクである。
 一般的な特長は、染料インクは透明性が高く鮮明な発色をする。また、散乱光や反射光が発生せず着色効率が高い。顔料インクはたくさんの特性をもっている。耐水性も強く耐光性もある。しかし、顔料の中でも、耐マーカー性や耐水性を持たせるためにマイクロカプセルインクジェットインクという技術がある。これは顔料を全部、特殊樹脂でコーティングしている。
 顔料インク表面の粗さについて、マイクロカプセル化顔料は紙の上にぶつぶつと樹脂でコートされた顔料層が残っている。表面粗さに関しても、染料よりは粗くなっている。染料は紙の中にしみ込むので、紙の表面粗さはほとんどそのものの数値を示している。自己分散顔料は、マイクロカプセル顔料よりも表面の粗さが粗くなっているということが見て取れる。
 染料色材を使った場合の耐性アップの変更点を見ると大きく分けると4つになる。染料の分子を大型化する。凝集機能を付ける。紙に着いたとき、染料同士が固まるような機能を付加することによって、耐性を上げようというものである。 
 また本来は水に溶けているものだが、水に溶けないような機能を付加して耐水性を上げているものもある。さらに染料の中でも、ある程度耐性を持った新規色材を採用するなど、いろいろなアプローチがされている。

■電子写真方式トナー保存性

 平版インキはいろいろな分野で使われており耐性があるが、電子写真では主にグラフィックと普通の文書等を想定しているためたくさんの耐性には対応していない。電子写真の耐性にはトナー像の保存性があげられる。トナー像の保存性には耐光性とドキュメントオフセット性の3つの要因がある。 
 トナーの耐光性はインクジェットのそれより性能が良く、オフセットインキのそれと同等以上である。これはポリマーがかなり入っているためである。例えば、屋外に放置しても数ヵ月は褪色しないことを、メーカーでも試験している。
 可塑性は塩化ビニールやアクリル樹脂に含まれている可塑剤とトナーの大部分を占めているバインダーの樹脂がミクロに混ざり合うことによりトナーの樹脂が軟化することである。トナーが軟化すると、トナー像が接触している物質に付着して汚くなってしまうことがある。可塑剤は、主に塩ビを中心としたプラスチックを軟らかくするために用いられ、大部分の可塑剤は酸とアルコールを合成したエステル化合物である。塩ビの書類フォルダーやデスクマットにも使われていて、これらとトナーで作られたプリントが直接触れると、トナー像が軟化して付着してしまう。
 ドキュメントオフセット性とは、何枚も重ねて荷重をかけていたり暑いところに置いておくと、トナーが軟化して色移りすることである。
 例えば車の中などは、夏場になると60℃とか70℃になる。そうした場所に放置すると、ばりばりと音がしてトナーが移ることがある。最近では電子写真で写真アルバムを作ることがあるが、そういうところの負担に注意しないとドキュメントオフセットが発生することがある。長期保存するためには、高温多湿を避けて、荷重がかからないようにするということが必要になってくる。

(2007年12月)

2007/12/21 00:00:00


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