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電子出版・電子書籍の展望

『電子書籍ビジネス調査報告書2007』によると2006年の電子書籍市場は182億円であった。そのうち112億円がケータイ向け電子書籍で占められていた。1996年のピークを境に下がり続けている出版業界にあって電子書籍市場は今後も期待される市場である。

電子書籍は1980年代のパソコン通信のオンライン小説が始まりである。登場から既に27年が経っている。なぜ今まで電子書籍がユーザーに受け入れられなかったのだろうか?ここに来て電子書籍がなぜユーザーに受け入れられたのか?ちょっと考えてみた。
ユーザーに受け入れられるには、(1)コンテンツ(内容)、(2)端末と表現力(ビューワ)、(3)流通(配信サイト)の3つの要素がうまく絡み合うことが必要である。


■コンテンツ

「売れるコンテンツはこれだ!」とハッキリ断言することはできない。しかし、「SF、恋愛、ソフト官能」小説はパソコン通信の時代からそこそこ売れていた。100万部のミリオンセラーとなり映画化されたケータイ小説「恋空」も確かに恋愛小説であった。時代を超えた売れ筋は存在するのかもしれない。

売れ筋は端末性能や流通手段の進歩によって新しいジャンルが加わる。携帯電話で読める様になった電子コミックは1つの市場を作った。パソコンで見るフォトマガジンや写真集なども最近では電子書籍配信サイトで売れ筋となっている。解像度の低いパソコン、遅いネット回線の時代には入手すらできなかったものである。

■端末と表現力

電子書籍のビューワには専用ビューワと携帯電話がある。画面解像度、表現力どれをとっても専用ビューワが優れている。しかし、人気の電子書籍は携帯電話で読まれている。携帯電話と専用ビューワの違いは単独でネットワークに接続できることである。
コンテンツを購入することを考えてみるとパソコンで購入して専用ビューワに転送するという手順を踏まなければならない。しかもパソコンは家や職場にしか設置されてないだろうから何時でも、何処でも気楽に電子書籍を楽しむという訳にはいかない。
紙の本を考えていただきたい。書店で雑誌を購入すれば、その場で歩きながらでも読み始めることができる。電子書籍になっても手軽さはとても重要である。

また、ケータイ小説の文書表現は出版のプロから見ればケシカランと叱り付けたくなる様なものでる。そもそも携帯電話での読み易さだけを追求した記述方法なので従来の編集概念がない。しかし、この状態は過渡的なものであると考える。ユーザーも今の読みにくい状態がいいと思ってないはずである。
携帯電話のサイズを考えると画面解像度をこれ以上あげるのは難しいと思う(たぶん文字が読めないだろう)。携帯電話に代わる新しいコミュニケーションツール(高解像度なビューワ)が登場すれば文書表現は書籍の文書表現と同じになるだろう。

■流通

電子書籍市場の普及に最も貢献したのが配信サイトの増加であろう。キャリア公式の電子書籍配信サイトは2006年9月から1年間で193から448サイトにまで膨らんでいる。配信サイトも小説から写真集まで総て揃えている総合サイトから、コミックのみを扱っている専門配信サイトまで色々立ち上がっている。
実世界で本を買うことを考えたら自分の家の近くの本屋さんが2倍になったことになる。電子書籍の世界でも読みたい小説やコミックを簡単に探し購入できる環境が揃った。

電子書籍の普及にはコンテンツ、端末と表現力、流通の3つの要素がバランスよく絡み合う必要がある。
現状の電子書籍はバランス点を携帯電話のビューワの能力に合わせていると思う。
しかし、技術の進歩は早い。個々の技術だけでも電子ペーパー、無線ブロードバンドなど優れたものが実用域にある。これらの技術を組み合わせた携帯電話を超えるコミュニケーションツールの登場はすぐそこに来ているだろう。

バランス点をより高い位置に置いた電子書籍の登場を期待する。


PAGE2008 デジタルメディアトラックでは、今年も6つのテーマを掲げて、1日3セッション(各コマ120分)ずつおこなう。C1「電子出版・電子書籍の展望」では、電子ペーパー、DVDマガジンなどこれからのビューワ、コンテンツ、配信手法を事例を取り上げて紹介する。

2月7日(木) 10:00〜12:00
C1「電子出版・電子書籍の展望
◆モデレータ:東京電機大学出版局 植村八潮氏
◆スピーカー:イースト 下川和男氏/凸版印刷 斉藤伸雄氏、大石英司氏/モバイルブック・ジェーピー 野村虎之進氏

(2008年1月)

2008/01/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会