●情報と媒体の変化
デジタル化は何もデザイン・印刷分野でだけ起きたわけではない。電子化・デジタル化はそのまま「情報革命」とも呼ばれる状況を作り上げた。また、情報をになう媒体はインターネットや携帯電話などのように技術の進展とともに増加し多様化してきた。
→存在理由(レゾンデートル)
●自由化(規制緩和)と市場の成熟
規制緩和や自由化は「グローバル化」と呼ばれる新たな価値観をもたらした。従来の商習慣だけでは通用しない場面も多くなっている。また、環境への配慮や、食の安全、人権や平等への配慮、プライバシー保護などが重視され、社会貢献をする企業、法令を守る企業がより良い企業イメージを持たれるようになった。情報発信もそうした視点からなされるものが多くなってきた。
→ CSR 、SRI 、ISO 、UD 、説明責任
●経営側から見た情報と市場
企業イメージの重要性が認識されCI がブームのように流行ったのはバブル期の最後の頃であったが、その重要性は変わっていない。ただ、もっと精密で具体的に多くの人に的確に把握されるようになってきた。
→ CI
企業は情報の「伝達=コミュニケーション」を従来にもまして重視するようになり、研究機関や大学などでも情報や、コミュニケーションを重視した経営理論が再構築されるようになった。
→ MBA 、コーポレートコミュニケーションの三つの輪
●プリントメディアの変化
オンデマンド印刷やCTP が低コスト、少部数の印刷を可能にした。これを利用して?one?to?one? とかバリアブルと呼ばれる個人などにきめ細かく対応した印刷もおこなわれ、簡易な自費出版なども盛んになっている。いわば情報の発信先も発信元も多様になったのである。
また、いたって現実的な問題だが、これらの印刷では印刷コストが低く請求時にデザイン料が突出して見える。結果として多くはプロのデザイナーが介在しないで制作される。DTPをだれでもできる「卓上出版」という意味とすればそれで良いのであろう。また、こうした印刷ではテンプレートの設計をプロのデザイナーに依頼し、個別の実作業はテキストデータを流し込むだけという方法もとられている。
つまり、デザイナーには作業性が良く合理的で効果的な基本設計を作成することが期待されている。これは一種のワークフローを設計することであり、システム設計なのだ。個別のデザインをするのとはまったく違った視点を持たなくてはならない。現代のデザインは造形的なことだけでは完結しないのである。
こうしてみて行くと「情報」というキーワードを軸に、デザインを取り巻く環境は大きく変化しつつあると言えるだろう。
デザインはもともと情報を視覚化するものである。したがってデザインに対する基本的要求事項が変化したわけではない。ただ、より厳しく論理性や合理性が要求されるようになったのである。いいかえればより「考えること」が求められている。ところが「DTP によるデザインの変化」を振りかえると悪い側面として「あまり考えずにデザインを開始し、独創性がなく、思考より視覚に依存する」ことが強くなっている。これでは逆の方を向いていることになる。あらためて「事前によく考えること、論理的にデザインを展開すること」の重要性を認識するべきであろう。
ところが、通常、デザイナーの養成訓練は、ほとんどが造形的なものに限られ、演習などは販売促進に属する広告宣伝活動のみについて行う程度である。このことが受け手不在の自己満足的なデザイン作品が散見される事態を作っている事実を否定できない。もちろん、そうでない理想的な教育や訓練も行われているに違いないのだが。どう考えても受け手のことなど考えずに思い付きだけで色や形を決めたとしか見えないデザインが印刷物として横行しているのも事実である。
受け手側の要求事項を知るには想像力を持つことが大事であろう。だれでも自分以外の人の心の中はのぞけないし、人の痛みは直接は感じないのである。芸術家と違ってデザイナーには自己表現よりさらに重要な使命があることを思い起こす必要があるだろう。
デザインツールの向上にとってかつては高度なテクニック、技能が要求された作業工程が熟練技能がなくても視覚表現が可能となった今、プロとしてのデザイン価値とは何か、デザインの社会的役割や方向性(ユニバーサルデザインを含め)、デザイナーの育成について議論する。
2008年2月8日 13:00-15:00 「G9 これからのデザインの役割を探る」へのご参加をお待ちしております。
2008/01/26 00:00:00