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現実味を増す自動スケジューラ

印刷という仕事は製品や材料の仕様が多様だから、いろいろな部分で経験が無いとできないと言われる。そのひとつの典型が工務であろう。特に日程計画などは、納期、負荷状況、製品仕様と機械特性の兼ね合いなどを考慮した上で考える必要があり、その上で能率を最大にするような計画を作ることを求められるからである。

相当前になるが、従業員規模150名ほどの出版印刷企業の工場長が、自分は正月3が日以外で仕事をしない日はないと言っていた。通常の休みの日は家で日程計画を作らなければならないからだという。現在、そこまでのことはないだろうが、同じ程度の規模印刷会社なら、4人程度の担当者が毎日3時間程度の残業をしつつこなしているのが普通である。このような状況は、利幅が非常に低くなる中で大きなコスト負担になるとともに、短納期が進んでいるので時間的にも大きなロスにもなる。しかし、この部分をコンピュータシステムで改革しようという会社は少ない。印刷は多種多様、特殊だからできないという考えが強いからである。

コンピュータの能力は日進月歩で進歩している。例えば、年間35000件の納品について、従来、営業マンそれぞれが担当の1アイテム毎に配車手配をしていたものを、受注No、出発時間、納品時間を入力すると、出発点と納品場所を全て「シミュレーション」して、場所の近いところを自動的にグループ化、その結果としての配車情報をインターネットで運送会社に配信するといったこともできるのである。
その成果は、年間の対売上配送費比率を3%近くも削減するほとである。このようなことは、どんなベテランの工務もできないことだろうが、パソコンをうまく使えば可能になっているのである。

Page2008のコンファレンス「MIS/JDFトラック」のセッションE3「現実味を増す自動スジューリング」では、今までに類を見ない機能・性能を持った自動スケジューリングソフトと、その印刷企業における実用事例を紹介する。

この自動スケジューラは、ベテランの工務でもできないような機能・性能を持った優れもので、さまざまな条件を加味したうえで最適計画を自動的に得ることができる。具体的には、「納期を厳守」するなかで、「リードタイムや段取り時間を最小にする」、あるいは「外注依頼の回数を最小化する」といった複数の条件を、その重要度に応じて加味し、それらを満たす最適な日程計画を作成する。納期が非常に短いから、他の条件はとにかく納期遅れのない計画を作るということも可能である。日程計画は、印刷工程だけではなく、設定したい全ての工程をカバーして立てることができる。

このような優れた基本的機能とともに、組まれた計画を工務担当者が変えたいと思えば、ガントチャートで表示された予定表の該当部分をクリックし、それを変更したい機械、日程のところまでドラッグしてドロップすると、刷版工程、印刷工程、製本後加工工程の全ての予定を組み替えることができる。当然、新たに与えられた条件を加味した「最適計画」を作る。もちろん、すでに計画して変えたくない仕事の計画は変更しない。作業時間がガントチャート上で表示されているよりも長くなる、あるいは短くなると判断したときは、そのガントチャートの長さをその場のマウス操作で調整すれば、予定を含めて簡単に変更することもできる。
この機能だけでも、工務担当者にとっては大きな救いになるはずである。すでにこの自動スケジューラーを導入、利用している株式会社高速では、従来、3時間掛かっていた次の日の計画作りが30分程度で可能になったという。
今は納期が非常に短いから、従来のやり方ではとても刷版以降の予定などを立てて仕事を流す余裕などない、ということであればあるほど役に立つだろう。最新の変更情報に基づいてあっという間に新たな最適計画を作ってくれるからである。

以上のシミュレーション・システムの優れた点の一つは、機械を変更したそのとたんに、変更した場合の予定原価を算出、表示することも可能なことである。当然、その予定原価を営業の見積もり額と比較することも可能である(ただし、この部分は製品化されていない)。
いわゆる「見える化」だが、結果を「見える化」するだけでなく、シミュレーション、つまり起こるべきことを事前に「見える化」することによって、判断、行動をより適切にすることができる。

今回のPageでは、この自動スケジューリングソフトをMISと連動した形で紹介する。とにかく、実際を見ていただかないとその優れた機能・性能を理解していただくことは難しい。「展示ホールC」の「MIS/JFF ZONE」に設定する「JDFステーションでは、そのデモをご覧いただける。コンファレンスでは、「現実味を増す自動スケジューリング」で、そのデモとともに中堅印刷会社での実用事例も聞いていただける。

(2008年1月)

2008/01/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会