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「デジタル印刷機の最新技術動向」(セミナー報告)

「デジタル印刷機の最新技術動向」(2008/1/22開催セミナー)では、ベンダー各社から、デジタル印刷機の導入ポイント、製品に導入されている主要な技術、現状における制限事項などを含めて最新事情を伺った。以下は概要である。

機種のバリエーション拡大と新需要の創出
デジタル印刷機は無版方式ならではの可変データ出力が大きな特徴である。印刷産業向けのデジタル印刷機が登場して15年前後経過しているが、当初の機種は商業印刷物や出版印刷物の主要生産方式であるオフセット印刷機の機能を代替したようなデジタル印刷機であった。
キヤノン imagePRESS C7000VP(カラー70頁/分、1200dpi×1200dpi、256階調)、コダック NexPress S3000(カラー100頁/分、4または5色、600dpi、最大8ビット-256階調)、コニカミノルタグラフィックイメージングPagemaster Pro 6500(カラー、65頁/分、600dpi-1800dpi相当、256階調)、日本ヒューレット・パッカード HP Indigo press 5500(湿式トナー、最大7色、68頁/分、1200dpi)、富士ゼロックス iGen3 110 Digital Production Press(カラー 110頁/分、600dpi、256階調)、DocuColor 8000AP Digital Press(カラー 80頁/分、2400dpi、256階調)など静電転写方式には多くの機種が揃っている。
この市場にインクジェット方式で参入してきたのが、日本ヒューレット・パッカード HP CM8060/8050 Color MFPs(CM8060はカラー 50頁/分/モノクロ 60頁/分、600x600dpi 最高600x1200dpi)であり、先行していた理想科学工業 ORPHIS HC5500A(120頁/分、物理解像度300dpi 最大8階調、高精細設定時900dpi相当・標準設定時600dpi相当)に高画質を武器にして追ってきた。

さらに最近の新機種は機能が分化・専門化しており、ビジネスフォーム印刷機の機能、スクリーン印刷機の機能、グラビア印刷機の機能、シール・ラベル印刷機の機能、といったようにさまざまな印刷方式に対応した機種のバリエーションが広がっている。
ビジネスフォーム印刷機の機能のデジタル印刷機は可変データ出力、すなわちOne to oneに対応し、毎月家庭やオフィスに送られてくるコンピュータ出力の請求明細書などのトランザクションと言われる分野をカラー化して、文字とカラー写真などのイメージ広告を、プレプリント無しの白紙に一気に出力してしまう、カラー・トランザクション対応の連続紙ページプリンタが注目されていた。
コダックIPS Versamark VT3000(A4、11インチ、300×600dpi、最大152m/分)、大日本スクリーン製造 Truepress Jet520(水性顔料インクジェット4色、720×720dpi 2ビット、64メートル/分、最大幅507mm)、富士ゼロックス Fuji Xerox 490 Color Continuous Feed Printing System (連続用紙、LED・ゼログラフィー方式、フラッシュ定着、600dpi、用紙幅:15インチ〜19.5インチ、連続紙紙送り速度69m/分、450ページ/分(A4 片面印刷時) 同980(490の重連構成、両面印刷モデル)などが代表的である。Truepress Jet520はインフォプリント・ソリューションズ・ジャパンや昭和情報機器にも供給されている。またミヤコシ(MJP600フルカラー、ピエゾ水性インクジェット、150m/分)なども以前から供給されている。これらの機種では、個人ごとに内容の違うダイレクトメールで宣伝効果を高めたり、郵便や宅配で始まった宛名無し配布では地区ごとに異なる目印を入れて広告配布の効果測定を行うことも可能である。One to oneマーケティングに対応できるデジタル印刷の分野ということであるが、印刷会社にとってはコンプライアンス対応やGISを加えた提案型営業への体制作りが必要になってくる。

大サイズ出力→高解像度化で屋外から屋内へ
海外では10年ほど前から工業用の大判プリンタによって大型の屋外広告を制作するようになっていた。印刷幅が3.2m以上の機種はスーパーワイドとも呼ばれているが、大型広告は遠距離で見る用途なので、出力解像度も50dpi程度と低いものでよかった。そしてバスや電車さらにはビルへのラッピング広告も登場して、大判市場が拡大してきた。しかし屋外広告にはさまざまな法令規制があり、掲出できる総面積の限界は見えている。
日本ヒューレット・パッカードは機種も豊富であるが、産業市場向けに絞っても、HP Scitex TJ8500(ピエゾ方式 DODインクジェット、UV硬化型顔料インク、600/448/336dpi、400平方メートル/時、最大165×370cm)、HP Scitex XL1500/1200(ピエゾ DODインクジェット、溶剤顔料インク、740dpi相当、124平方メートル/時、モデル5 5.0m幅、モデル3 3.2m幅、モデル2 2.2m幅)、昨年末のM&AでNUR Expedio 5000もラインナップに加わった。る。さらに大日本スクリーン製造 Truepress Jet2500UV(UVインクジェット最大6色、最大出力幅2500mm、最大素材厚50mm、1200×1200ipi、多階調)、キヤノンマーケティングジャパン imagePROGRAF iPF9100(A倍、サーマルインクジェット12色、60インチ-1524mm、1200×2400dpi、80GBHDD搭載)に加え、エプソン PX-20000、日本製図器工業が扱うdurst Rhopac、ルキオ Lukio Jet 2516 UVF、ミマキエンジニアリングなど、多様な機種が揃っている。 大判出力の次なる市場は屋内用途であり、店舗内の装飾や販促印刷物への用途開発がテーマである。すでに、遊戯施設や一般の店舗内での定期的な装飾や販促物の更新への利用が始まっている。
屋内では至近距離から見ることになるので、高解像度でないと網点の荒れが目立ってしまう。また、さまざまな素材に印刷するために、印刷面の柔軟性も要求されてくる。このような用途に合わせて、大判プリンタでも800dpi以上の高解像出力を行うための技術開発と製品開発が進んできた。

厚地素材への直接印刷→後工程の削減
大サイズ出力機の中で、スチレンパネルやアクリルボード、さらにはドアや床タイルなどの厚地素材に直接、印刷できる機種も注目されている。日本ヒューレット・パッカード HP Scitex FB6300(最大厚40mm、ピエゾ DODインクジェット、UV硬化型顔料インク、720dpi相当、36平方メートル/時、200×300cm)、大日本スクリーン製造 Truepress Jet650UV、富士フイルムグラフィックシステムズ LuxelJET UV250GT、同inca SP320/SP320e/SP320S/SP320Wなどがある。これらの機種では、パネル貼りなどの後工程を削減しての短納期対応、産業用途でのサンプル作成、一品生産のテキスタイルやボード、オリジナルのメーターパネルの生産などが始まっている。

ワンストップ・サービスの生産拠点に
現在は、発注元の顧客からせっかく発注頂いたのに、生産設備の方式が違うが故に注文を断らざるを得ないということも日常的に起こっている。
しかしデジタル印刷機であれば、方式の違ういくつかの機種を保有することで、ワンストップ・サービスで顧客の注文に応えられる生産拠点ができ、新たなビジネス展開が可能となる。 技術的には同じ絵柄を違う機種で出力するマルチプリントにおけるカラーマネージメント、One to one出力でのデータ管理や検査システムなど、解決しなければならない大きな課題もある。

さらなる需要の拡大へ
発注側である顧客から見ると、従来であれば製版コストが割高になるために発注を断念していた小部数の印刷製作も、製版工程そのものが不要なデジタル印刷機であれば発注が可能となる。 技術的には小ロットを効率よく受注・生産する、デジタルネットワークの利用、Web to printの実ビジネスにおける効果的な展開が課題になろう。
また、可変ページ出力機能によって、小発行部数のフルカラーのコミュニティー新聞や地方新聞を高速カラー・トランザクション対応機で印刷してしまうという、新たな用途も提案されている。 このようにデジタル印刷技術は潜在的な印刷需要の裾野を広げることが大いに期待されている。

デジタル印刷は業態の融合化を加速
デジタル印刷が持つこれらの新たな機能によって、例えばオフセット印刷機とスクリーン印刷機とビジネスフォーム印刷機、シール・ラベル印刷機、さらには高速トランザクション出力機までが一ヶ所に並んでいる、従来方式ではありえないような印刷工場を持つ業態が可能となる。つまりデジタル印刷は、印刷方式別であった印刷業界の融合化を加速するような潜在力を持っているということができる。 さらに新しいハイブリッド印刷機へのアプローチとして、マンローランドの新聞輪転機に搭載したKodak Versamark Dシリーズの高速インクジェットプリンタヘッドによって、ビンゴなどクイズなどの可変データを出力する技術開発が行われている。

新たなビジネスモデルの必要性
デジタル印刷機による新たな展開や需要の創出の実現に向けて印刷会社においてはデジタル印刷にマッチしたビジネスモデルの習得が必要になる。
2008年5月にドイツで開催される世界最大の印刷機材展drupa2008では、さらに新しいデジタル印刷機の登場が期待されている。その前哨戦としてのPAGE2008(2/6-8)では無料イベントとして「ハイブリッド・ワークフロー体験ツアー」も企画しており、印刷会社などの皆様にとっては新ビジネスの模索が始める絶好のチャンスである。

関連PAGE2008コンファレンス
  バリアブル印刷の動向

  ITとデジタル印刷による新印刷ビジネスモデルの構築

(2008年2月)

2008/02/01 00:00:00


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