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グラフィックスの世界を変える「文明の必然」

PAGEイベントは1988年に始まったので、当時のオフィスにはまだNECの9801も日本語ワープロ専用機も現役で活躍していた。プロ用にはCEPS(死語?)や電算写植も低価格化し、中小企業でも大いに導入されていた。当時これから伸びてくるといわれていたDTPなど存在しなくても、プロでもオフィスでもだれも困らないと思われていた時代であった。ではなぜDTPでもWordでも伸びる余地があったのだろうか?

つまりこういった情報分野のシステムの変化とかデジタル化の進展は、必ずしも直接的な顧客ニーズがドライブ要因になっているのではなく、文明の必然のような形で進んできた。産業革命で人の力にたよる作業が減って、産業自体の構造が変化したことにITもたとえられることがある。情報の記録や伝達が人の手によらないでできる方向に進みだしたのである。だから情報の中間加工にかかわる作業や業務はITの時代には激変することになる。

それは、オフィスに電子写真のコピーが入り、FAXが入り、日本語ワープロが使われ、パソコンが使われ、ネットワークの時代はPDFとプリンタが主に使われるように文書システムは変えられたし、「文書」を超えて電子mail、Web、ケータイと情報伝達手段そのものもデジタル化ネットワーク化してきたのは衆知の事実である。このどれもがニーズありきではなく、文明の必然なので、だから世界で同時に起こっている。

さらに文明の必然は進む。今度はビジネスそのものがデジタルの処理を前提とし、ネットワーク上に展開するように動き始めた。先行していたのは銀行オンラインが有名だが、ちょうど2000年頃からこれはいろいろなビジネスに波及し、e何々というのが増えた。リアルビジネスとeビジネスは究極的には棲み分けるのだろうが、今はeビジネスがリアルビジネスを侵食していく経済的な戦いの時代である。当然広告もその渦中にあり、広告コンテンツ制作は大きな変化に直面している。

コンテンツの制作は、デジタルネットワークの仕組みがインフラになることによって、その上で産まれるようになりつつある。CGはもちろん、ケータイ小説もクリエイトの段階から変化したものである。それはあらゆるコンテンツに及びつつあることで、PAGE2007ではボーンデジタルをテーマにしたが、PAGE2008ではボーンの先にデジタル・ネットの環境の中で育つこと、つまりデジタル・ネットだから可能になったヨコのつながりを意識している。

例えばどういうことだろうか? コンテンツと連動する広告としてリスティング広告がある。こんなちっぽけなものが集まって、Googleという年間40億ドル(何千億円)稼ぐ企業が登場した。ネット企業は無人でヨコ展開する仕組みが得意なので、人手でマーケットの深堀をして稼ぐのではない。実はグラフィックアーツの世界も次第にeビジネスになりつつあるのである。デジタル印刷とWeb2Printの相性のよさを感じておられる方も多いだろう。なぜデジタル印刷やWeb2Print,また自動組版などが伸びそうなのか、PAGE2008に参加してじっくり考えていただきたい。

(2008.2.6)

2008/02/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会