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自動組版と、新しい情報提供モデル

DTPをしている人からみると自動組版・自動レイアウトではなかなか発注者の満足を得られないという困難さを多く思い浮かべるかもしれない。しかし一方でその発注企業の別の部署ではWebやデータベースを使った情報発信もしていて、そちらのシステム側から考えるとDTPのような1ページごとに手でレイアウトをする世界の方が信じられないことになろう。

両者が別の世界で交差せずにいた時代はそれでもよかったが、今日では両者の関係は日増しに密になっている。データの発信がWebファーストになるものは当然ながら、そうでなくて紙媒体が先でもデータの生成つまり原稿が作られる時点はデジタルになっており、両者を異なるシステムとして運営を続けるのは大変な無駄になる。

しかし今までタテ割であったものをヨコにつなげて一つのシステムとして「ワンソース・マルチユース」にすることは簡単ではない。ツールとして市販されているDAMを使った高額のクロスメディアソリューションはあっても、ただ導入しただけでは値段の割には思うようにいかない経験をした人も多いだろう。

クロスメディアも自動組版も設備投資の問題ではなく、従来のタテ割のフローから脱して、情報提供(ページなど)の業務そのものを自動化するモデルを考えついていなければ、結局は今までの1ページ幾らの世界の手作業の一部をシステムにしただけのようなことになることが効果が薄れる原因である。

紙の上のページレイアウトであってもWebであっても、従来情報提供に必要だったことを要素単位に分解しておいて、それを自動で組立てるという分解・復元をするだけではなく、入力から校正、派生、バージョニング、などなどページ作りに関連した業務プロセス・ワークフローの革新につながるようにしないとデータベース化のモトはとれないものだ。

つまり組版のためにデータベースを使うのではなく、情報提供の業務をデータベース化した際の応用のひとつがデータベースパブリッシングなのだというくらいに、全く異なる出発点で取組み、その関連業務に対して新しい概念構築をして、そこから制作のモデルを考えるような回り道が必要だろう。

インターネットのおかげで関連した人々が同じデータベースをアクセスしながらコラボレーションすることのシステム的な障壁は取り払われたので、規模は小さくても手作りできることはいろいろある。そういった経験を経て新しい情報提供モデルの概念構築ができていくのだと思う。あとはそのビジネスの発展につれて大規模なソリューションを導入していけばいいのだろう。

テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 266号より

2008/05/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会