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Webによるブランディングの考え方

PAGE2008コンファレンスデジタルメディアトラックC2「Webブランディングの考え方」セッションでは、Webサイトを運用する側、構築を請け負う側の両方の視点からWebによるブランディングについて考察した。 以下はその要約である。


前半はパネリストのバックグランドの紹介を兼ねて事業のプレゼンを行った。
株式会社インプレジャーの木戸康行氏は、海外の高級ホテルを紹介するサイト、「Resorre」を運営している。ここでは、ビジュアルを重視し、テキストをあまり用いない。「消費者の側にたった新の消費者のニーズに応えるホテル購買支援サービスの提供」をコンセプトに、海外のリゾートホテルをいろいろな切り口から紹介するサイトである。

株式会社ロフトワークの諏訪光洋氏は制作現場に近い視点をもつ。ロフトワークでは登録クリエイター数9000名のオンライン上のフリーのクリエイターのコミュニティを運営している。
Webによるブランディングの考え方の基本はわざわざ訪れている方に求める答えを渡すことであるという。その結果、得られる対価が信頼というブランディングだ。一方、求める者に答えを渡せなかった場合は失望となる。失望は、情報不足やユーザビリティの欠如などだが、この2つをなくすことがWebブランディングの基本となるという。
企業サイトのWebブランディングの到達点は、企業や組織の「鏡像」してあるかどうか。企業情報や活動など全てがWebサイトに載っているかどうかが鍵である。

NRIウェブランディア株式会社の白鳥陽裕氏は野村総合研究所のグループ企業としてTVCM、イントラネットを始め、社内のシステムツールも幅広く手がける企業である。お客様企業のブランディングを何年かかけてともにやっていくというスタイルで、単発の仕事は行っていない。現在お付き合いをしている会社は50社くらい。これまでには200〜300社となる。

■ブランディングの変遷

第T期の1990年代以前は露出重視の時代であった。マス広告が社名の認知度・商品販売力に貢献していた時代である。「イメージを伝える」、「人目を引き付ける」などがキーワードとしてあげられる。Webサイトでは、広報部が学生の就職活動向けに企業情報を出していたという状況である。
第U期の2000年以降はコミュニケーション重視である。この時期はWebサイトでどうやってアピールするかではなく、どうやってコミュニケーションをするかが重要とされた。消費者が情報主権者であり、「有名企業」=「優良企業」という構図が崩壊した時代でもある。単にイメージを伝えるだけでなく、「中身を知ってもらう」、「役に立つ情報を供給する」がキーワードである。カスタマーサポートの質が大事である。人事、IR、カスタマーセンターを含めてWebサイトをどう活用するかが議論された。
そして2005年以降の第V期。お客様一人ひとりに親切に対応しようしている。Web2.0的なブログ、SNSが起爆剤となって口コミが圧倒的に加速した。バックオフィスを含めて企業戦略に沿ってWebサイトをいかに活用するかが重要である。(白鳥氏)

■Webのブランド作りと顧客とのブランド作り

数多いプロジェクトに携わってきて感じるのは、費用の感覚は本当にまちまちということである。費用感はそれまでどれくらいお金をかけたかが基準になる。
目標設定をすることが重要である。例えば問いあわせを増やすとすると、具体的な数値が出せるので、予算も増やすことができる。目的を明確化させると予算も出しやすい。(諏訪氏)

PV(ページビュー)をあげることを目標値とすることはやらない。NRIウェブランディアでは、PVをあげるのではなく、「ブランド=社員のお客様に対する思い」をあげることをしたい。そういう議論に持ち込むためにできるだけ経営者に会うようにしている。(白鳥氏)

■アウトソーシングモデル〜パートナーとして選ばれる条件〜

Webのプロジェクトが大規模化している。ロフトワークでは、CMSを使った案件が入ってくるが、そのうちの2割は、ほかの会社の失敗の後片付けである。最近、プロジェクトが破綻している割合が多い。無理をしないでできるパートナーを探すことは大事なことだ。 いいものをきちんと提供できるということが重要である。代理店からFlashの案件が出されると、Flashが得意な制作会社に早めに投げてしまう。そうすると、次のプロジェクトで案件がまわってくることがある。Webのプロジェクトが大規模化する中にあっては、相互の力を出し合ってパートナーとしてやっていくことが大事だと思う。(諏訪氏)

■仕事を依頼する場合のポイント〜パートーナー選び〜

頑張らないこと。駄目だなと思ったら「今回は辞めましょう」と言う勇気も必要。ここまでやったからもう少し頑張ろうとしてしまうと、どんどんまずい方向になって失敗してしまう。早めに方向転換することがお互いにハッピーなこと。
検索して調べてみると、いろいろ会社が出てくる。ちょっと投げてみて、そのレスポンス具合でだいたい分かる。そういう形で交流を深めていくことが今後求められている。(諏訪氏)

NRIウェブランディアはアウトソースベンダーなので、ひとつのクライアントにとても長い付き合いをするというモデルである。同時に一緒に働くパートナー会社も長い付き合いになる。先方の社長と毎週でも飲める仲になることが大事。お互いの社員を一緒に育てていこうということでやっている。
NRIウェブランディアでは、うちのクライアントのお手伝いをしてもらうと、必ずNRIウェブランディアでも向こうのクライアントのお手伝いをさせてもらうようにしている。どちらかがずっと下請けというのはイコールの関係にならないので、必ず仕事を頂戴して、「たまにはうちでもやらせてくださいよ」ということをしている。今日会った会社とすぐそういう関係になるわけではないが、時間をかけてそういう関係を増やしてきている。 ブランド作りは、コミュニケーションをどう作っていくかということである。(白鳥氏)

(2008年2月)

2008/02/24 00:00:00


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