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メディアが作る新たなビジネスモデル

PAGE2008コンファレンスデジタルメディアトラックC3「メディアが作る新たなビジネスモデル」では、メディアを取り巻く環境が劇的な変化を遂げる潮流を捉え、従来にはないユニークなサービスを展開する企業を招き、デジタルメディアビジネスの展望について考察した。


モデレータを務めていただいたコダック グラフィック コミュニケーションズ株式会社の佐々木雅志氏は、印刷業界が印刷会社以外からの新規参入企業との競争が避けられなくなっている状況の中で、お客様のニーズの変化を認識する重要性について強調された。その後、スピーカーとしてお招きした三社のサービスについてお話をいただいた。

■「一方通行複製大量配布物製造型」から「パーソナライズ双方向型」へ

コダックグラフィックコミュニケーションズ株式会社 チャネルマネージャー 佐々木 雅志 氏
多様なメディアを使って顧客にアプローチが可能になったことにより、従来の印刷業では単価ベースでものをみていたが、デジタル化によってコンテンツが変わってくる。コンテンツの原価も制作工程も違ってくる。お客さんがそれでいくらのビジネスをしたか、原価としていくらかかったかということを考えなければいけなくなってきている。

単にどういうメディアで見てもらうかではなく、例えば地理的にターゲットを絞ってDMを出す、そこからどんな人にレスポンスして欲しいか、レスポンスをくれた顧客にどうやって行動を起こしてもらうか、そしてそういったすべての接点でメディアが切り替わる毎にアクセスが受け渡されてデータベースが成長してくる、そういうことを提案するのも印刷会社の仕事になってくる。

今回スピーカーを務めていただく三社のビジネスを初めて聞いた時、キーワードとして、「一方通行複製大量配布物製造型」のメディアのビジネスから、「パーソナライズ双方向型」への大きなシフトが起こっていくということが感じられた。

■位置情報を「価値」に変える取り組み

株式会社ロケーションバリュー 代表取締役 砂川 大氏
我々は位置情報を価値に変えるというアイデンティティーを持つ会社である。現在手がけている「お手伝いネットワーク」は、例えば「誰か3時間お店を手伝ってくれないか」という情報を投げた時、近くで「今暇です」という人を捕捉することができる人材マッチングサービスである。採用側は応募者の中から各自の過去の職務経歴を見て採用することができる。

これまで労働力をネット上で細切れにして売るのは難しかった。リアルタイム性の問題、移動時間の問題があった。そういう無駄になってきた労働力をマーケット上に提供しようと考えた。位置情報を利用することによりそれを有効活用することができる。

依頼者のメリットとしては、我々のサービスでは依頼を出して平均8.9分で最初の応募が来て、4人くらい応募が来たら30分くらいでぱっと決めてしまうというかなりのスピード感がある。現在は山の手線圏内でリアルタイムで1,000人くらいの人が「今暇です」と手を上げている、それくらいのレベル感になってきている。

我々のサービスでは、採用していただいた時にはじめてコストをいただく。人材派遣会社や求人広告を利用することに比べると人材獲得コストは1/100にもなり得る。また、仕事が終わったら依頼者、ワーカーにお互いの評価をつけてもらう。この評価が付くというのがキーコンセプトになっていて、評価が付くということが予めわかっていることで有能なワーカーになる。

我々は位置情報という切り口を今までのサービスに刺すことによってこれくらいドラスティックに物が変わるということを「お手伝いネットワーク」で実現した。これから他にも5つくらい位置情報を使ったビジネスを立ち上げることを予定している。

■フリーペーパークロスメディア最前線

コマップ株式会社 取締役副社長 藤丸 順子 氏
我々は福岡で地元のタウン誌として出発した。小さな規模でやっていたが、インターネット時代の到来と大手出版社の進出でそれまでのビジネスが立ち行かなくなってきた。当時の雑誌の業界では、プレゼント企画をやっても当選者を決めたら葉書はそのまま捨てていた。その頃知人から顧客管理が出来ない企業は21世紀に生き残れないというアドバイスをいただいて、雑誌社ほど遅れている業界はないと思った。

そこで、プレゼントの応募は双方向のコミュニケーションの出来るケータイからしかできないような仕組みに変えた。そういったクロスメディア的な取り組みを5年くらいやって、やっと形になってきた。それまでの広告と本の売上だけだった収益に、マーケティング、コンテンツ売買など、サイフを増やすことができた。そのノウハウを我々と同じように地方出版を手がけている企業にパッケージとして提供していくためにarunoという事業を2005年に立ち上げた。

フリーペーパーは2003年頃からリクルートのR25のようなコンテンツの充実したフリーペーパーが出始めた。費用対効果の高さに注目が集まり、コンテンツの充実とともにメディアとしての価値が認められ、一流企業の広告が載るようになった。しかし、コンテンツ力で勝負するためには、編集にコストがかかる。優秀な人材の確保も困難で、そういう中でコンテンツ力が低下していくと読者が離れ、広告が減るという悪い循環に陥る会社が増えてきている。

問題解決のために、媒体社同士のネットワークでノウハウを共有できないか、既存の広告収入以外の収益モデルを作れないか、これをクロスメディア的な手法で解決しようというのがarunoの考え方である。

arunoサービスの登録社は現在544誌で発行部数は公称で6,900万部に達する。一番利用されているのがアフィリエイト広告だ。予定していた広告がドタキャンになった時にいつでも埋めることができる広告ページを用意している。トラッキングの手法は電話の件数(PPC=ペイパーコール)、PCサイト、ケータイサイトへのアクセス数、などがある。

そのほかにコンテンツの二次利用の仲介を手がけている。登録社にはコンテンツを作成する際にコンテンツを売買することがあるというパーミッションを取っておくことを勧めている。二次利用や営業のネットワークを生かして低コストで雑誌を制作することができる。また、登録社にはASPで携帯サイトを無料で提供する。媒体社はコストをかけずにサイトを持てて読者の囲い込みが可能。aruno側はそこに広告を入れることで収益源とできる。

地方出版社のリソースを整理してみると、メディア価値、コンテンツ力、それと営業力がある。それらを束ねて大きな力にするというのがarunoの概念である。

■意匠性を持つQRコード「ロゴQ」の応用的活用

A・Tコミュニケーションズ株式会社 代表取締役 東 陽一 氏
バーコードが二次元コードになり、さらにそれに意匠性を持たせたものがロゴQである。二次元コードにロゴマークをつけることで、見ただけでオリジナル性、ブランド性がアップする、複製が難しいから偽造防止の効果がある、セキュリティー性がアップする、紙を減らせる「地球をやさしい」サービスが展開できるという点で注目されると思われる。

QRコードとロゴQのアクセスの比較では、ある金融系のパンフレットでログを取ってみたら、変えたとたんにアクセスが30倍に伸びたという例がある。意匠性が付くだけでユーザーに安心感を与えることができる。

街の掲示板の地図の上に病院の場所が示されていることがあるが、見ただけでは場所を覚えにくいので、それが病院のQRコードをスキャンすると位置情報や診療時間などが携帯電話に落ちてくれば非常に便利ではないか。目的地へのナビゲーションにピクトグラム化したQRコードを使ってナビゲートする、などのことが紙メディアと携帯電話を使って行うことができる。

ビジネスモデルの話をすると、これから紙情報では双方向性を図らないといけない。情報付きの印刷物を出さなければいけない。位置情報でもコンテンツ情報でも、双方向のコミュニケーションができることが重要になる。

情報つきで発信することで媒体別効果測定ができる。携帯でアクセスした瞬間にどこからアクセスがあったか分かる。携帯の場合サーバーにアクセスするのでログが取れることが重要。そこでアンケートまで取れれば、その後個人向けのDMの発送をして顧客ごとにバリアブルなQRコードで特典などを与えればレスポンスが非常に上がる。

紙と携帯とPCとテレビはそれぞれ別の特性を持ったメディアである。それをつなぐのはやはり携帯になる。クロスメディアは双方向コミュニケーションを図れるツールであり、知恵を使えばいくらでもビジネスモデルが出てくるものではないか。

(2008年3月)

2008/03/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会