本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

HPのdrupa2008情報/全方位でデジタル印刷機を投入

HP Graphic Arts Pre-Drupa Press & Analyst Summitという催しが3/11〜13の3日間、イスラエルの首都、テルアビブで開催された。このイベントでHPは世界の報道陣にdrupa2008で発表する新製品などを事前に公開した。週の後半にはVIPユーザーも招かれ、300人以上が集う大きな催しであった。HPはdrupa2008でデジタル印刷機ベンダーとしては最大面積で、出展社全体でも3番目に広い規模での出展を行なう(ホール8A)。

はじめにHP Print2.0とういうコンセプトが発表された。現在社会は文字・静止画・動画・音などのコンテンツが入り混じっているが、人々がどのようにこれを整理して、メディアとして出版していくかは大きな課題となっている。その答えがHP Print2.0であり、(1)Webなどオンライン経由によってブログや携帯からも簡単に印刷できる環境の提供、(2)コンテンツ制作環境の拡大と充実、(3)さらに商業印刷分野に向けて高生産性と低ランニングコストを実現する新たなデジタル印刷機の提供という、3つにキーポイントが強調された。

また、印刷市場における今後の注目ポイントは、印刷受注のバリューチェーンを再構築すること、環境に考慮すること、デジタルでページ制作すること、デジタルとオフセットの採算分岐点を改善することの4点であるという。 分野別に通常の印刷を含む成長と比較して、デジタル印刷の方が成長が大きい品目を順に並べると、パッケージ印刷、書籍印刷、シール・ラベル印刷、DM印刷、サインディスプレーとなる。

環境面からは、通常の印刷物の2〜3割は使用される前に捨てられ、書店で売れなかった書籍の返本、新聞も4〜11% は廃棄されている。デジタル印刷によってこれらの削減が可能である。さらにデジタル印刷では可変出力によるパーソナライズを行なうことができるので、商印分野への利用によってリピート率が48%、レスポンス率が36%、レスポンス回数が34%向上し、これらを総合すると、顧客の利益率は32%向上するといわれている。HPでは今後トランスプロモなど、One to one市場に向けてさらにデジタル印刷機に力を入れていく。

HPの製品群は、出版、商印、トランスプロモ、シール・ラベル、フォトアルバム、ワイドフォーマット、サインディスプレー、紙器パッケージ、CD/DVD、郵便の宛名印刷、インクジェットのプリントヘッドOEM提供など、全方位でのデジタル印刷機の提供を行なっている。そしてHPは全分野でシェアNo.1である。このような背景の中でインクジェット方式による高速・高生産ソリューションをIHPSと呼んで、ここには1,400億円の開発投資を行なっている。
drupa2008ではいくつもの新製品や参考出品、または大幅に生産性を向上させた既存製品が出展される。

■HP Inkjet Web Press(参考出品)
HP初のトランスプロモ機である。今回は実機の展示は無かったが、インクジェット方式で大サイズのアウタードラム上に高画質と高速性を兼ね備えた多数のインクジェットヘッドを配した機構になっている。drupaでの出展が期待される。

主な仕様は、4色フルカラー、解像度600×600dpi、最大用紙幅30インチ(762mm)、速度122メートル/分、レターサイズで2600ページ/分。DOD(ドロップ・オン・デマンド)方式であり、顔料系水性インクとボンディングエージェントによって用紙の対応幅も大きいという。出力部2台構成により表裏同時印刷を行なモデルではユニット間には品質管理装置も組み込まれている。参考価格によると、装置価格は250万ドル以下、紙代を除いたランニングコストはA4サイズ当たり、フルカラーは1セント以下(片面印刷、画像面積30%相当、1枚)、モノクロは0.15セント以下(片面印刷、画像面積5%相当、1枚)と、高い経済性を目指している。

■HP Indigo 7000 Digital Press(新製品)
ほぼ2倍速を実現(Indigo Press5500比)するために倍径ブランケット胴の採用と新設計された機構を持った、Indigoの最上位モデルである。主なスペックは、A3サイズ、片面4色で7,200枚/時(120ppm)、2色または単色で14,400枚/時(240ppm)である。
高速化を実現するために電子写真プロセスやデータ転送レート、また材料面でも大きな改良がなされたことになる。Indigoの電子写真方式の特徴であるエレクトロインクという液体トナーは1μmまで微細化されている(通常のドライトナーは5μm程度)。6色モデルを基本としているので、ゆとりの2つの書き込み部は、特色インクへの対応や単色・2色における2倍速化など、印刷会社にとって応用範囲の大きな使い方ができるところは、Indigoの血統を受け継いでいる。7000はインクボトルのサイズも従来の540g缶から1,340g缶へと大幅に増量された。 オフセット印刷との採算分岐点も、B半裁機との比較では5500の662枚が7000では933枚。A3オフセットでは5500の1,095枚が7000では1,808枚と、5割近く向上している。

■ロール紙タイプのIndigo Digital Press(新製品)
倍速化した6000/7000印刷ユニットのロール紙タイプ機のWS6000は中ロット向きのシール・ラベルやフィルム包装印刷で印刷速度は4色で30m/分(ws4500は同16m/分)。商業印刷用の2連装モデルW7200も従来機w3250の倍速である。

■革新的な大判インクジェット用インクを展示
大判インクジェット印刷機のインクの種類は溶剤(ソルベント)、水性、UVに大別されるが、HPでは第4の方式とも言うべき、ラテックスをベースにしたインクを開発した。店舗の内装材やバナーなどの軟質素材への印刷ではインクにも柔軟性が要求され、溶剤系インクが多用されてきた。ラテックスインクの存在は知られていたが実用化開発へのハードルの高さから、多くのメーカーが製品化は難しいと考えていた経緯がある。しかし屋内用途では防火性能をより高めるなどの必要もあり、溶剤系インクとの置き換えという意味で、ラテックスをベースにしたインクへの期待は大きい。
印刷面の柔軟性や耐摩擦性は溶剤系と同等であることを示すサンプルや、濡れ布巾でサンプル印刷物の表面を擦って試せるデモを行ない完成度の高さを強調していた。 ラージフォーマット出力機はコマーシャル向け、インダストリー向けを合わせて12機種を投入してくるが、その内6機種が新製品とこの分野にも大きな力を入れている。

(2008年4月)

2008/04/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会