本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

drupaレポート1(カット紙モデルと連帳モデル)

drupaレポート2へ

1.drupa2008
印刷メディア産業のオリンピックであり多様性がさらに大きくなっているというメッセージの中で、第14回drupa2008がドイツ・デュッセルドルフにおいて5月29日から6月11日の14日間の会期で開催された。出展者数は52カ国から1,971社、総面積175,000u中,104,202uを海外からの出展社が占めており、日本からも45社(現地法人を含む)が出展している。14日間の来場者数は138カ国から391,000人、ジャーナリストは84カ国から3,000人で、43%は海外からの来場者が占めていて、アジアからが15%(前回13.6%)、やブラジルなど中南米は7%(前回4.7%、今回は6/5時点)、北米からはコンスタントに6%ほどが来訪してきた。また特筆すべきは経営層の来訪が45%(前回は42.2%)にも及んでいる。
会場も2ホール増設されて合計19ホールでの開催となり、新設された8a、8bホールは、デジタル印刷機メーカーで最大出展面積のHP、隣接しながら連携をアピールしたゼロックスと富士フイルム、大日本スクリーン製造、キヤノン、アグフア、ミマキなどのデジタル印刷機メーカーで占められた。ホール5にはコダック、エプソン、ホール6にはOce、ホール9にはコニカミノルタビジネスソリューションズなどである。

2.概要
印刷は成熟産業であるとともに、生産技術も既に成熟技術で成り立っている。 オフセットなど有版の印刷機メーカーはデジタル印刷にはほとんど手を出していない。単体印刷機の生産性向上も、段取替え、印刷速度とも単体機としてはほぼ限界に近いので、前後工程を含めたワークフローによる最適化、群管理の提案や、インライン加工やさまざまな後加工によるたくさんの事例、アプリケーションが紹介された。End to endソリューションとでも言うべきものである。そして、XXLと呼ばれる倍判機にハイデルが参入し、パッケージ印刷への提案を行ってきた。
大きな話題は、デジタル印刷機であり、インクジェットdrupaとも言われたように、たくさんのインクジェット印刷機が参考出品され、いろいろな技術展示も行われた。次回以降のdrupaが楽しみである。 しかし、成熟化したCTPは、ケミカルレスやVLF化、またダウンサイズ化、現像処理剤のEco化は着実に進んでいるが、大きな話題にはならなかった。CTPが一斉に登場したのは3回前のdrupa95であった。 印刷ビジネスでますます重要になるのが前後工程で、Web to Printから始まって、さまざまな後加工や封入封函から配送に至る付帯サービスである。パッキングやキッティングの機械を探していた印刷人からは、適当な機械は見当たらなかったという失望と、逆に自動機が無いなら自社は差別化できると自信が付いたという声も聞かれた。

3.インクジェットデジタル印刷機

(1)カラー枚葉機(カット紙)タイプ
カラー枚葉機は商業印刷用途向けのデジタル印刷機である。現在のところ電子写真方式が中心であが、最近ではインクジェット方式のオフィス用の複合機や簡易印刷機の登場しており、今後さらなる印刷方式の拡大が期待されている。

○印刷用紙へのインクジェット印刷への課題
インクジェット方式は液体のインクを印刷媒体に直接吐出することで画像形成を行なうため、一般の印刷用紙を利用した場合には、滲みや裏抜けを防止するために下地処理が必要である。オフィス需要に対しては大きな問題にはならないケースであっても、商業印刷市場においては品質上の大きな問題となっている。そのため商業印刷市場で利用する場合には、インクの受像層をもつインクジェット専用紙を用いて極小ロットの印刷を行なうなどの用途に限定されてきた。しかしながら、新しい技術により、一般の印刷用紙を利用した場合であっても、滲みなどを最小限に抑えることが可能となっている。
この技術は4色の印刷インクの他に用紙の下地処理を行なう材料を利用し、実際には5色分のプリントヘッドを用いる。4色のカラーインクを吐出する前に、用紙上に透明な下地処理剤を吐出しておく、またはローラーコーターによってで、インクが滲むことを防ぐのである。こうした機構によって印刷用紙を含む幅広い用紙への印刷が可能となる。
これに対して、エプソンからは下地処理が不要な水性インキが参考出品された。

○Jet Press 720(参考出品)
富士フイルムではシングルパス方式、横通しの菊半サイズ(最大印字サイズ:720×520mm)、1200dpiで4階調(ドットサイズを印字なし/小点/中点/大点の4段階に変えて2,400dpi相当を実現)、のインクジェットデジタル印刷機を発表した。枚葉オフセット印刷機の給紙部・排紙部を持ち、圧胴にあたるシリンダーの上部に4色分のラインヘッドが並んでいる構造になっている。
インクジェットプリントヘッドは富士フイルムの100%子会社である富士フイルムダイマティックスが開発した720mm印字幅のピエゾ素子型長尺プリントヘッドは、独自の目詰まり防止技術により高安定性を確保している。ヘッド主要部分には半導体製造技術のMEMSを使用することで耐久性も高く、シングルパス方式で毎時2700枚(A2サイズ)の印刷が可能である。水性インクは富士フイルムが開発した材料技術によってインクジェット用の専用紙を使うことなく、高速インク凝集技術と用紙カール抑制技術、にじみ防止用の下引きコーティングを組み合わせることによって多様な印刷用紙に、にじみのない画質を再現している。従来の水性インクジェット方式が抱えていたインクジェット専用紙以外でのにじみ、紙変形の問題を大幅に改善されているという。
これらの技術をもとにシステム設計や開発が得意な富士ゼロックスが印刷機器としてシステムアップされ参考出展された。オフセット印刷レベルの高画質を実現するとしているが、ライブデモは行われたがサンプルは無く、事前に作成されている展示用のサンプルしか見ることができなかった。

○Truepress Jet SX(参考出品)
大日本スクリーンが一般商業印刷市場における枚葉印刷へのニーズに応えるべく開発したもので、高品質と高生産性を狙いワンパスヘッドを採用している。さらに、インクジェット専用紙だけでなく一般の印刷用紙や厚紙などへのインクジェット枚葉印刷を可能にしたほか、縦通しでA2ワイドサイズをカバーする最大530×740mmの用紙を使用できる。
通常の4色印刷だけでなく、オフセット印刷しておいてさらに追刷りする場合もオフセットの品質と遜色なく刷れるため、印刷物の新たな付加価値を創出できるという。1年後をめどに製品化を予定している。

(2)連続紙ページプリンタ・タイプ
連続紙ページプリンタの用途は、従来のトランザクションはフォーム輪転印刷機でプレプリント(先刷り)して連続用紙に、高速プリンタで1〜2色の文字(可変データ)を高速で追い刷り印字して、公共料金の請求書などが作成されていた。台紙部分はパートカラーと呼ばれる2色程度の特色や、企業のコーポレートカラーが用いられ、データの追い刷りから発送までの一連の業務をデータプリントサービス(DPS)としてフォーム印刷事業者が受託するといったビジネスも近年増加している。
こうした中、デジタル印刷機の性能(速度、品質)も上がってきたので、フルカラーの連続紙ページプリンタを用いて、一度に白紙から製造するという動きが大きくなっている。印刷コストを除いて考えれば、こうしたデジタル印刷への切り替えにより、先刷りのロールの保管、場合によっては廃棄などのコストが大幅に削減されるとともに、増刷などへの対応も小ロットで可能となるなどのメリットがある。 さらに新聞業界への提案として、サテライト新聞印刷や地方の新聞社などに向けた小部数のタブロイド判新聞の印刷をデジタル印刷機でおこなうという用途も提案されている。

○HP Inkjet Web Press(参考出品)
HP初のトランスプロモ機である。インクジェット方式で大サイズのアウタードラム上に高画質と高速性を兼ね備えたエッジラインと呼ばれる4.25インチ幅のヘッド並べてラインヘッドを構成し、これを5列(1列目は下地処理のボンディングエージェント用ヘッド)に配した機構を持つ。主な仕様は、4色フルカラー、解像度600×600dpi、最大用紙幅30インチ(製品仕様、drupa会場では36インチ幅の試作機でデモ)、速度122メートル/分、レターサイズで2600ページ/分。DOD(ドロップ・オン・デマンド)方式であり、顔料系水性インクと下地処理によって用紙の対応幅も大きいという。2台構成による表裏同時印刷システムの参考価格は、装置が250万ドル以下、紙代を除いたランニングコストはA4サイズ当たり、フルカラーは1セント以下(片面印刷、画像面積30%相当、1枚)、モノクロは0.15セント以下(片面印刷、画像面積5%相当、1枚)である。

○KODAK Stream インクジェット テクノロジー(参考出品)
2種類のデモが行われた。このテクノロジーは、コンティニュアス インクジェットで大量商業印刷用途に、オフセット印刷に匹敵する品質、生産性、信頼性とコストを実現する一方で、デジタル印刷のメリットすべてを提供することが可能です。Stream コンセプトプレスは、業界トップの生産スピードで解像度600 dpi以上の画像品質を備えたシステムである。

・Streamコンセプトプレス(参考出品)
STREAMコンセプトプリントヘッドヘッドを4組搭載しフルカラーでA4を600dpi、毎分200m/分をオフセットレベル品質で出力していた。技術的にはさらなる高速化、高解像度化、大サイズ化ができるのでdrupaの参考出品で市場ニーズを模索する。
市場は請求書、口座明細書やDM、トランスプロモなど、今後期待されている中〜大量のフルカラー・パーソナライゼーション出力ビジネスを狙う印刷会社である。

・ハイブリッド印刷機(参考出品)
ミューラーマルティーニのオフ輪に搭載したSTREAMコンセプトプリントヘッド(1色)によりハイブリッド印刷のデモでは、まずオフセット部で4色印刷後、1色のVDP(バリアブル データ プリンティング)を300m/分の高速で行ってない、レーザープリンタレベルの品質を見せていた。

○Versamark VL2000(新製品)
コダックのインクジェット方式で初めてのDOD(ドロップ・オン・デマンド)方式の印刷システムで、600dpi、A4毎分1,090枚の速度で、コダックPODSグループの新型フロントエンドで稼働する。drupaから正式発売され、1ヶ月の印刷処理数が100万から500万枚のトランザクション印刷、商業印刷に向くシステムである。

○Versamark VT3000
コダックのコンティニュアスインクジェット技術による高速インクジェット印刷機。直列ノズル型インクジェット方式、4台のヘッドを利用してCMYKフルカラー印刷を行なう。モジュール構造を採用しているため、片面1色の1ヘッド校正から、表裏4色二面付けの16ヘッド構成まで必要に応じてスケーラブルに拡張可能な構造を有する。最大印字幅は455mm、300×300dpiもしくは300×600dpiの出力解像度で印字スピードは毎分107mである。

○Truepress JET520(水性顔料インク)
大日本スクリーン製造のドロップオンデマンドインクジェット技術による、高速インクジェット印刷機。水性顔料インクを利用し、最大720dpi×720dpiの高解像度で出力する。最大用紙幅520mm、用紙搬送速度は720×720dpiで毎分32m、720×360dpiでは64m/分となる。

○Truepress JET520(水性染料インク)
120m/分に高速化し、会場では、朝日新聞:日本、東亜日報:韓国、ヨーロッパ各地(Daily Mail/Evening News:イギリス、Le Monde:フランス、Handlessbatt:ドイ ツ、Elypais:スペイン)、USA Today:アメリカ、の当日の新聞データをネットワークを介して受信し、日替わりで印刷し配布していた。サテライト新聞印刷ソリューションは、空港や海外の都市、イベント会場をはじめとして、欲しい言語の最新の新聞をTruepress Jet520で印刷するソリューションである。

2008/06/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会