従来、静的なページとその操作性にのみ注目してきたWebアクセシビリティだが、Web2.0的なサイトが増えるにつれて動的なページへの対応も迫られている。クロスメディア研究会ではアクセシビリティ・コンサルタントの梅垣正宏氏に、Webアクセシビリティの現状およびW3Cが現在開発を進めているWAI-ARIAについて紹介いただいた。
日本の法律上では、障害は身体障害、精神障害、知的障害の3つがある。また最近ではそれ以外にも学習障害や自閉症などの発達障害も注目されているが、合計すると人口の約10%程度が障害のある人と考えることができる。精神障害は実際にWebサイト操作面での問題は少ないが、発達障害は画面を見て読むのが苦手であったりするためさまざまな工夫が必要になってくる。さらに障害には分類されていないが、色覚障害、色弱の問題もある。色弱の最も代表的な赤と緑の区別が付かない症状は第1色覚の障害と呼ぶが、このような人に対応するためには色使いがとても重要になる。
次に高齢者であるが、高齢者は3つの能力が低下すると言われている。一つは物が見えにくくなるといった感覚知覚能力の低下である。次に情報処理能力が低下すると言われている。何か一気にたくさん言われると分からなくなってしまう。3つ目に注意能力の低下である。典型的な例は、家を出る時に鍵を忘れるというようなことである。
これらの現象は、どんなに元気な人でも起きるというところがポイントである。高齢者の一部、例えば認知症で能力が低下する人の話ではない。65歳くらいになれば、みんなこういう状況の中にある。こういう人たちにWebを使ってもらわなければいけない。 後10年もすれば3人に1人は65歳以上という勢いなので、高齢者のマーケットにどう対応するのかは非常に重要である。
従来のWebモデルでは、ページを識別するのにURLやURIを使ってきた。まずユーザーがURIを指定してサーバを呼び出すと、指定されたコンテンツが表示される。そこで基本的にやり取りされるのはHTMLやCSSである。次のコンテンツが返ってくるまで表示は同じで、また返ってきたところで表示が変わるような時間の進み方をしていた。
それがAjaxを導入するとどう変わるか。URIを指定してサーバを呼び出すと、同じようにHTMLやCSS、JavaScriptが返ってくる。返ってくると、JavaScriptがWebブラウザの中でAjaxとして動き、ユーザーは何の操作もしないのに、XMLHttpRequestというリクエストを出してメインの通信とは別のところでデータのやり取りをする。ユーザーが指定したURIは1回だけなのにデータが更新されて、Webページの中がどんどん変わっていく。これが基本的な違いである。 ページの一部が動的に書き換わってしまうので、ユーザーは書き換わったことに気が付かないかもしれない。例えば視覚障害者は気が付かない。つまりページの一部が書き換わったということを気づいてもらうためのイベントが不足している。
HTMLタグの論理構造だけでは、もうアプリケーションのインターフェイスが記述できないという問題もある。例えば、Webの中にmenuというタグはない。だからメニューというものは定義できないし、同様にカレンダーも定義できない。アプリケーションなら当然あるようなガジェットがWebにはないので、そういうものが使えるように、少なくともあるコンポーネントの役割や状態を取れるようにしなければいけない。何かWebアプリケーションのインターフェイスの「役割(role)」や「状態(state)」をWebの世界に導入する必要がある。それからキーボードだけで操作できないという問題があって、これにも対応が必要である。
このようないくつかの問題に対処しようとする仕様としてWAI-ARIAという仕様が作られている。WAIは団体の名前、ARIAはAccessible Rich Internet Applicationの略である。 WAI-ARIAではどういうことをしているかというと、まずXHTML1.1を拡張してARIA StateとPropertiesという考え方を導入し、コンポーネントの「状態」をUA(UserAgent)が取得できるようにしている。
次にXHTMLの中に既にあるRoleというプロパティを利用してメニューやメニューアイテムなどを記述するということをしている。それから、XMLとDOMのイベント、例えばDOMでは標準でAPIやイベントが定義されているので、そういうものを処理できるようにするAPIを用意するということを行っている。
(『JAGAT Info』2008年6月号より一部抜粋・クロスメディア研究会)
2008/06/25 00:00:00