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インクジェットdrupa、次回が本番?

どこでもインクジェット? 小さいところではバイオやナノテクに近いところから、大きいところではジャンボジェット機のラッピングまでインクジェットプリントの技術は使われるようになっている。インクジェットのヘッドを組み込むいろいろな試みは非常に多くあり、なかなか全部が印刷分野とも言いがたいくらいである。インクジェットのヘッドをつければ、どんな加工機でも印刷ができるともいえ、ダンボールに直接カラー印刷するようなものもあった。しかしそのような方向でどんどんインクジェットのヘッドの出荷が増えているとも思えない。まだヘッドの安定性を考えると、「一部品」として扱えるようなものにはなっていないのかもしれない。

ドイツ・デュッセルドルフにおいて5月29日から6月11日の14日間drupa2008が開催され、このサイトにも報告1 報告2がある。以前からKodakバーサマークはヘッドのユニットだけをオフセットの印刷機に載せるような使い方があったが、今回のdrupaの話題はインクジェットプリンタによる印刷機とでもいうような、枚葉オフセットとかミニオフ輪化している点に集中している。

とりわけ新聞印刷のような輪転の元祖的応用分野にインクジェットが使われたことに印象深いものがあった。1980年頃に将来の新聞印刷はインクジェットになるだろうということがハリス社か何かのレポートにあったと記憶する。JAGATではその頃に「印刷の未来像」という調査を行っていて、そこではインクジェットプリンタやCTPがいつ頃実用になるかとか、それらに対する期待を印刷関係者に聞いていたが、そんなことに気を留めている人は皆無に近かった。

その後急速に技術革新は進み、いくつかの応用は印刷業以外のところで先に実現し、むしろ印刷の本丸にインクジェットが抵触しだしたのが、やっとこのdrupa2008であるといえる。これはインクジェットのヘッドの幅が広がったとか、プリントが高速にできたからであるが、まだ直接いろいろな紙加工機には組み込まれていない。漫画的にイメージするなら、製本機や紙加工機にインクジェットのヘッドがつけられるなら、それらの機械は白紙をセットするだけで印刷物は仕上がってしまいそうな気がする。しかしすぐにそうはならないのは、印刷機を運用する上での品質への気の遣い方のような「プロ」の眼やエンジニアリングスキルがないと、まだ今のヘッドのおもりはやりにくいのかもしれない。

もし誰でもボタンを押すだけでいつも完全なプリンティングができるなら、プロの印刷分野にインクジェットを持ち込む必要はないだろうし、逆に印刷現場のプロの眼やスキルがあるならインクジェット輪転機という新たな道具で何かできる可能性が出てきたともいえる。一方で電子写真の方は先にが「ボタン一発」の世界に近づいているので、あまり印刷のプロとは関係ないところでも印刷の仕事ができるような棲み分けが感じられたのも今回のdrupa報告であった。

このdrupaでの旧来のオフセット印刷の世界は意外に落ち着いていたというか、これまでにないほど新たな技術デモンストレーションがなかったようだ。それでも発展途上国という広がる市場がある。次回のdrupaになってインクジェット輪転印刷機も電子写真も価格的にもう一皮向けると、この伸び盛りの市場では、棲み分けではなく3つ巴の衝突が始まるのかもしれない。

ALPS協議会 2008.6.25

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2008/07/04 00:00:00


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