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役に立つメディアは減らない!!

●マーケティングの成熟

新聞の第1面下に書籍の広告があるのは、新聞を読む人はインテリであって、書籍も買うだろうというような、「メディア=マーケット」という図式が通用した時代があったことを表している。同様に新車は全国紙に全面広告を出すような習慣が出来上がっているが、今日ではTVを見られない国民は居ないように、「メディア=マーケット」という見方には形骸化したものが多くある。マスメディアによるマーケティングは飽和を通り越してムダ使いの域に達したことは広告費の比重が下がり始めたことからも類推できるのであって、マスマーケティングも踊り場にきたといえる。これを乗り越える試みのひとつの分野に、メディアをいろいろクロスして使って「役に立つ」ことを模索するクロスメディアがある。

今までもメディアミックスは行われているが、「役に立つ」とは、デジタルメディアを単なる広告露出のためだけではなく、IT化が進むビジネスの道具として、今のWebやモバイル等、有効に使うことにクロスメディアの目的はある。別の言い方をすると、今までは広告宣伝費の中からメディアの制作費用というものは出てきたが、これからクロスメディアで狙うべきところは、お客さんのもっとビジネスの本流に対して提案アプローチするものになってきている。

メディアの制作会社は、今までのドメインが販促であったところが多いので、あえて顧客のビジネスに関与する必要はないと考えがちであるが、そうせざるを得ないのは過去のビジネスモデルが覆される可能性が、印刷とかITとかマス広告という分野では起こっているからである。ほっていおいても顧客がITの新しい技術を使えば安く販促できるようになると気づく。こちらから安く販促できることを提案する、かえってと売上げが下がってしまうことが痛みである。このよう新しい提案をすると薮蛇になることは、マス広告も、ITも、印刷も共通している。だから逆に思い切って顧客メリットにストレートに訴えられるように自分のビジネスのスタンスを変える機会が今である。

●顧客視点のビジネスへ

今までの印刷のビジネスは断片的であった。ある製品に関して5点の印刷物があったとする。ハガキのようなものからA4のペラのようなものから16ページくらいのものからポスター等があったとしても、それがどこでどのように使われるのかということを知らなくても、印刷物を受注して生産することはできた。しかし、これがWebになると、お客さんの動線として、最初にお客さんの目が何に触れて、その次にどういう行動をするだろうかということを想定している。

とはいうものの歴史の浅いWebには長い伝統のある印刷に比べてまだ足りないところが多くある。Webがプルであって紙はプッシュという特性があるというが、紙による販促では、折込チラシ(地域)やDM(属性)など特定の対象に見せるものの他に、地域での手配りとか、店舗の前での手渡しなど、相手との距離感を考慮した使い方があるので、それによって内容も作り分けるような多様さがある。こういった使い分けを分析して、Webの足りないところを補う余地はある。

それによって顧客のビジネスがスムーズにいくようになるには、プロモーションの一般的方法論だけではなく、顧客のビジネスをよく知って、日常的なサービス提供・サポートビジネスが伴わなければならない。顧客の製品なりサービスの質をエンドユーザに伝え、またエンドユーザの声を集める双方向のコミュニケーションサービスが顧客のビジネスの潤滑剤になる。クロスメディアもこのレベルで取り組まないと継続的な発展は望めない。

確かにまずプロモーションの方法の大変化が目の前にあるのだが、そのほんの少し先には顧客のビジネスも自分のビジネスも再構築が課題になっている。JAGATのクロスメディアのエキスパート認証制度のカリキュラム及び試験がeビジネスまで含めて制定されたのはそのような理由による。


「印刷白書2008」は、2008年6月24日発売(一般販売価格30,000円、JAGAT会員企業には1冊を無料配布しました)。

(2008年7月)

2008/07/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会