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drupaレポート3(デジタル印刷機、オフセット印刷機ほか)

前回はデジタル印刷機の話題を中心にレポートしたが、今回は、前回紹介しきれなかったデジタル印刷機とオフセット印刷機ほかの話題を紹介する。

drupaレポート1
drupaレポート2


デジタル印刷機

アグフアの軟包装・パッケージ用デジタル印刷機である:Dotrix Modularは、UVインキを使用することにより、次期モデルでは紙・PE・PP・PETなどに30m/分、印字幅63cmで印刷できる。用途としてビニールバック、アルミニウム容器のふた、ブリスターパックなどに利用される。原反へのコロナ処理やフレキソ後加工機などをインラインで組み込むことによって、下塗りや金、メタリック、蛍光色などの特色、白やニスにも柔軟に対応する。また、ワイドフォーマットのUVインクジェット機である:Anapurna XLSは、最大250cm幅でボードおよびロールの両メディアに対応、最大解像度1440dpi。同Mvはニス引き機能が追加され、最大紙幅は160cmである。:Anapurna M、L、XL、XL2、XLS、Mv、M4fと幅広い製品レンジを用意している。

富士ゼロックスは、drupa2008で初出展されたA3判カット紙対応機の700 Digital Color Pressを、RIPコントローラを含めた本体価格995万円で国内販売を開始した。新開発のEA-Ecoトナーにより定着温度を下げることにで省エネルギー化されている。解像度2400dpi、上位クラスに搭載するグロスコントロールによってオフセット印刷画質の追求と用紙に合わせた光沢感も実現した。71枚/分の生産性と64〜300g/m2の用紙厚に対応しており、各種の後加工オプションも用意されている。

20年に及ぶオフセット印刷機の自動化へ流れ

デジタル印刷機が大きな話題となったdrupaであったが、一方で有版印刷機は依然、印刷業界にとって主要な生産システムであることは間違いのないところである。 オフセット印刷機の自動化の出発点は、IPEX88で三菱重工業が菊半裁からA倍判までの5種類の枚葉オフ機に各種の自動化装置(刷版自動交換装置、紙サイズプリセット、印圧プリセット、インキローラ自動洗浄、圧胴自動洗浄、プリセットインキング)を装備して発表したところから始まっている。当時30〜40分が常識であった前準備時間を、10分以内に短縮しようという意欲的な取り組みであった。この方向性は20年を経てオフセット印刷機の世界スタンダードになった。

さらにdrupa95で一斉に発表されたCTPによって見当合せ時間が劇的に短縮され、色合わせは印刷物に入れたカラーパッチをコンソール(色見台)で測定して手動で遠隔インキキーを操作するようになった。今ではハイデルベルグのイメージコントロールに代表される絵柄全面の計測機器の装備も進んできた。また、小森コーポレーションのハイパーシステムのように、Job切り替え時にインキローラ上のインキ分布を次のJobのパターンに変更する仕組みは試し刷りの損紙量を削減した。

特にオフセット印刷機メーカーは過去10年、CTPの発展普及と歩調を合わせながら、段取り時間をいかに短縮するかの開発に注力してきた。 一方で、デジタル印刷への取り組みはメーカーによって温度差があった。新聞印刷機やビジネスフォーム印刷機にインクジェットのヘッドを組み込んだハイブリッド印刷機は注目を集めたが、そのほかの印刷機メーカーはデジタル印刷分野にはほとんど手を出さなくなった。しかし、量産機としての機能や自動化システムの進んだ現在のオフセット印刷機は、段取替え時間の短縮、印刷速度の向上ともに、単体機としての改良はほぼ限界に近くなっている。そのため、前後工程を含めたワークフローによる最適化、MIS/JDFによる群管理、End to endソリューションの開発や提案に力が注がれている。

drupa2008におけるオフセット印刷機

オフセット印刷機の段取替え短縮の次なる工夫は、各胴の同時刷版交換による短縮である。マンローランドのローランド700ダイレクトドライブは、版胴をクラッチ操作で印刷機のメインモーターから解除して単独モーターにより駆動させることで、同位相による同時刷版交換とインキ洗浄の並行処理を可能にしている。

三菱重工業はコスト高になる単独駆動機構を避けて、版胴に装備されている天地方向の見当調整機構の可動範囲を大きく拡大するというサイマル・チェンジャー機構によって、色数に関係なく75秒以内での全自動全色同時版交換を実現した。会場では厚薄兼用機のDIAMOND 300W(厚さ0.04〜1.0mm)、片面両面刷兼用機のDIAMOND 300R(毎時1万6200枚:片面印刷時の速度と同等)、両面専用機のDIAMOND 300TP(タンデムパーフェクター、毎時1万6200枚)の3機種のデモを行っていた。

小森コーポレーションでは10分以内に100枚強の印刷を3種類、2回の版交換を交えた実演を、LITHRONE LS540、LS529で見せていた。さらにLS540では突然の濃度変更要求に即座に対応するSmart Feedbackの実演も行った。

ハイデルベルグがXXL機(倍判以上)に新規参入

印刷分野の大きな話題はXXLと呼ばれる倍判機へのハイデルベルグの新規参入である。欧州市場では東欧圏の印刷会社による低価格攻勢もあり、対抗策として生産性の高い印刷機への要望がある。また、多言語地域であるが故に頻繁に発生する文字版の差し替えという、大判枚葉機の有効性が発揮できる環境がある。

XXL機を得意とするマンローランドのローランド900XXL(1260×1620mm)はA4判48面付けの印刷ができる。KBAからはパッケージ向けのRapida 162-6+L ALV3(1120×1620mm)、新モデルのRapida 142-8 SW4も発表展示された。 ハイデルベルグのスピードマスターXL145(菊倍判)/XL162(四六倍判)は、用紙厚も装備するオプション内容によって0.06〜1.6mmまで対応可能。最高印刷速度も毎時1万5000枚を達成した。両機種ともにパッケージ印刷会社の要望にこたえることを目的に開発された。ハイデルベルグによれば倍判以上の印刷機は世界で約3000台が稼働しており、ここで約25%のシェア獲得を目標として挙げている。

インライン表面加工機のバリエーションが拡大

枚葉オフセット機で印刷ユニットの前方に箔押しユニットを初めて装備したのは2005年に発表されたマンローランドのInlineFoiler Prindor(インラインフォイラー プリンドア)で、ローランド700に続いて、drupa2008では同500シリーズにも装備されることが発表された。 インラインフォイラーはその後、各オフセット印刷機メーカーが追随して高付加価値印刷として印刷と表面加工のワンパス化が進んできた。

小森コーポレーションのLITHRONE SX29+C+CF+RDは欧州では初公開の新機種で、コールドフォイル、UVコーティング、ロータリーダイ(エンボス)までをインライン処理する実演はいつも満席であった。印刷寸法は従来のリスロンS29より12.5%大きい585×740mmで米国の標準仕様を意識しており、ラベル、医薬品などの小型カートン、ペーパーバック、DVD/CDカバーなどを想定している。

ハイデルベルグのXLシリーズの新製品スピードマスターXL75は片面仕様で最高毎時1万8000枚(両面時1万5000枚)、用紙厚は0.03〜0.8mmまで対応可能である。印刷ユニット、コーティングユニットは最大で12ユニット、用紙反転装置を装備した両面兼用印刷機も用意されており、UVコーティングなどの表面加工用オプション、ダブルコーティング・ユニット、コールドフォイル・アプリケーションに対応した「フォイルスター」、オフセット印刷ユニットの前にフレキソ印刷ユニットを設置したデュオプレス機などの構成も可能となっている。

リョービ755(インラインUVキャスティング・フォイリングシステム付き)はフルカラー印刷+ホログラム加工と、フルカラー印刷+箔押しを実演していた。リョービの特徴は印刷ユニットの後ろに配置されたコーターで接着剤としてのUVニスを引くため、他メーカーが採用している印刷方式では難しい、数ミクロン厚のUV接着層になるので細線部でもフォイルの切れが良くギザつきが少ない箔押しが可能である。

そのほかの動き

新製品の厚薄兼用の菊全判寸延び5色機リョービ1050-5では、スプレーや紙粉の影響が少ないように、デリバリ上部に配置した検査用カメラからデッキに開けられたスリットをとおして最終圧胴にある印刷物を常時監視するインライン印刷品質管理システム、リョービPQSが初搭載された。また厚紙印刷時は渡し胴をスケルトンに形状を変化させるという画期的なムーバブルシェルタイプスケルトントランスファードラム機構も搭載されている。

小森コーポレーションではLITHRONE S440SP/同S840Pに品質検査装置PQA-Sを搭載し、両面同時に全印刷物の品質検査を実施して見せた。また機械内部の紙搬送ルートに4台のVideoscopeカメラを内蔵し、コンソールから紙の動きが監視できる。

リョービは参考出品として、A3判オフセット印刷機リョービ525GXにLED光源によるUV印刷システムのデモを行った。松下電工から産業用LED-UV照射システムの供給を受け、東洋インキでLED-UV波長に最適な乾燥性が得られるUVインキを開発した。従来のキセノンランプに比べて、光源の寿命が約12倍長くなり、消費電力量も70〜80%の削減が可能で、赤外波長を持たないので、熱の弱いフォルム系の原反への印刷にも向いている。

ハイデルベルグがSM52 Anicolor(アニカラー)反転付き菊4裁判の10色機を公開した。アニロックスシステムと連続湿し装置を組み合わせたキーレスインキング装置で、300枚程度の極小ロットの仕事でも、最小の損紙で本刷りに入れる。ハイデルブースには地球環境にも優しいということを示すため何カ所かにカモシカの縫いぐるみが置かれていたが、アニカラーもその一つである。

マンローランドの厚紙にも対応した新製品の菊4裁判の枚葉機ローランド50は、大判機XXLの技術が投入されていて、0.04〜0.8mmの用紙を印刷できるようになっている。主な用途は小ロットのパッケージ印刷市場である。

後加工

ホリゾンブースは、中綴じ製本機、無線綴製本機、紙折り機、オンデマンド、デモの5つのゾーンで30種類の後処理機器、JDFワークフローでは先進の後処理機システムを展示した。紙折機AFC-566FKT、小ロット生産向けの中綴じ製本システムStitchLiner5500、PUR製本を可能にした無線綴じ製本機BQ-470、無線綴じ製本ラインCABS5000である。これにi2iシステムによるJDFワークフローを使って自動セットアップ、後加工の進捗管理や稼働状況の把握に加え、効率的な生産が環境への配慮にもつながることをアピールした。また、他社とのコラポレーション展示として、XeroxブースでDocuColor 8000APに中綴じ製本機ColorWorks8000をインライン接続、HPブースではi2iシステムによる無線綴製本機BQ-270、三方断裁機HT-30、平断裁機APC-6IIlをHPのワークフローと連携させた。

PitneyBowesブースではアンワインダー+カッタと連結したペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システムStitchLiner5500を出展、Xeikonブースでは無線綴機BQ-270、三方断裁機HT-30を出展し、オフライン後処理加工のデモを行った。

デュプロはPDF、JDFを活用してJob作成、面付け、プリント、後処理までのワークフローを紹介した。Pageflex Storefront web submission softwareで作成したビジネスカードでは、作成されたJobはWeb経由でObjective AdvantageのSymbioに転送される。印刷工程や、そのほかのマネジメントを自動化しJobの指示をデジタルプリンタに送信する。同時にJob情報を JDF Connector経由でプレビューを表示し、最後にJDFデータを基にDC-645でスリット、カット、筋付け工程を一貫して行い、最終的な成果物へと仕上げられた。この機能により1枚ごとにスリット、カット、筋付け、ミシン目作業が正確に施され、ヤレ紙の削減と高品質で最適な成果物の生産ができる。また、フォトブックのPDF対応web to finishデモではImpostripでページ割付けなどを行い、各ページデータをXerox DocuColor 8000で印刷後、DBM-120/Tダイナミックブックレットメーカー、自動角背作成マシンASM-500に送られ製本が完了する。

End to endのワークフロー提案

印刷会社においてワンストップ生産を現実のものにするためには、Web to プリントから始まって、さまざまな後加工や封入封函から配送に至る印刷付帯サービスを、ITに支えられたビジネスワークフローの中で効率良く提供し、独自性を発揮できるシステム構築が重要である。

Press-senseからはビジネスインフラとして、幅広い工程を管理するOmniumの日本語バージョンも参考出品された。そのほかに大日本スクリーンのEQUIOSNET、コダックのユニファイドワークフロー、富士フイルムのワークフローxmf、アグフアの:APOGEE SUITEなどが出展された。

MISについては、海外では有名なHiflexがアップルのiPhoneによってモバイルによる進捗確認や、進行指示などのデモを行っていた。国内のMISとの格差はますます広がっている。 また、小規模なベンチャー企業など約160社が集まるホール7のdip(ドルッパ・イノベーション・パーク)は回を追うごとに規模が拡大し、日本からはMISベンダーのオリーブが、また同じホールの上階には印刷会社のグラパックジャパンが出展していた。

(『プリンターズサークル』2008年8月号より抜粋)

2008/08/09 00:00:00


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