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ブックオンデマンドは誰のため?

PAGE2000コンファレンスでは、出版の権利問題について、著者、編集、制作側で三者三様の考え方があって、複雑だと思うと同時に、納得できることもあった。そういったことに関する話しだけをかいつまんで、今後の技術が出版をどのような方向に導くかを考えてみよう。

eBookのセッション(2/3 A1)は、出版物のコピープロテクト議論に対して、ボイジャーの萩野氏、アスキーの松本氏が、社会のインフラとして知識を敷衍/共有することを第1に考えていた。萩野氏は、何が価値を生むかわからないのであり、計算高くやってもあたらないだろうといい、松本氏は印税収入よりも著者の名前が広がることが著者の人生を左右するものであり、出版社と著者は必ずしも利害が合わないといった。

コンテンツ管理のセッション(2/4 A4)では、科学分野の出版社であるシュプリンガーフェアラーク東京の平野氏が、紙の論文誌よりも先にオンラインで論文の出版をする「Online First」の紹介をし、論文単位でDOI(DigitalObjectIdentifier)というコードがついて管理されると話し、凸版印刷法務部の萩原氏はDOIが権利管理情報にあたるだろうとコメントした。つまりオンライン時代の著作権の登録管理のヒントであり、冊子単位ではなく、記事単位で、音楽のような著作権管理があり得るのかと思わせた。

DAM(アセッツ管理)のセッション(2/4 A6)では、美術品などを提供しているイメージモールジャパンの秋田氏が、日本ではこれらの著作物についての2次利用の制約が外国よりもシビアで、例えばカラーの絵をモノクロでWEBに載せるについても権利問題の確認が必要と話した。画像ごとにどのような制約があるのか明示されていて、仔細にコンテンツ所有者の認証を得るようになっている理由について、このようなやり方を通して、次第にコンテンツ所有者の信用を上げられるのだと説明した。

これら三者三様の考え方を通して、デジタルにより情報の敷衍が進むのに合わせて、コンテンツに関していろいろなインフラが整備されるべきであることがわかる。従来は出版社は情報を発掘してきて、それをパッケージ化して、流通させていた。その過程でさまざまな権利問題のまとめ 役でもあったと思う。つまり紙の出版という制約を通してルールが出来上がっていったのだろう。

今デジタル情報が流通まで及ぶようになって、紙のモデルは通用しなくなった。そして電子出版は技術の側面から、どうやって作る、いくらでできる、どの程度にできる、などの話しでもちきりであったが、それはコンテンツの管理のインフラの話しを欠落させて、新たな「知的財産権」にゲタを預けたような、不完全なものであった。

しかしデジタル情報伝達をビジネスにする、デジタル時代の「出版」の役割とは、上記のインフラのことではないのだろうか。つまりデジタル時代にITで従来よりもきめの細かい有効なルールを作るところが、デジタル時代の出版の中核になるのではないだろうか。そう考えてBookOnDemandを見ると、どうも過去の出版のルールの中でしか捕らえていないように思える。

萩野氏は、「本とコンピュータ」の「HONKO on demand」の実験は好評で、良く売れていると話したが、売れるなら従来の印刷にした方が儲かるので、よく売れるオンデマンドというのも奇妙な矛盾に満ちた話しである。売れたからオンデマンドが失敗ともいえまい。ではオンデマンドは誰のためなのか? 著者に自由を与える、新しい出版がITによって出現することを予感させるPAGE2000であった。

ブックオンデマンドに関する参考情報

2000/02/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会