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レスポンス率を上げるためのDM総合提案

独自のダイレクトメール(DM)ツールを駆使して、企画からデザイン制作、印刷、加工、発送、効果測定までのDMソリューションを展開する株式会社ガリバーの常務取締役 営業統括部長 中島真一氏とDMツール開発を担当する営業第3部 部長 佐々木昭夫氏に、同社のDMソリューションについてお話を伺った。


同社はさまざまなDMツールを提案しているが、その中心となるのが圧着型のメール便対応DMのカタメールである。 同社がカタメールを主力商品として提案する理由は、封筒がないためワンタッチでカタログを見ることができるので開封率アップとレスポンスの向上が図れることと、さらに余分なゴミの出ないことで環境対応型商品という時代の要求にマッチしているということだ。また、DMには常に個人情報が付いて回るということがある。そこで、会社としてのセキュリティ体制構築が重要になるが、同社では社内イントラと個人情報ネットワークを完全に分離独立させている。

クライアントから個人情報を預かるので、第三者からの不正アクセスやデータ漏えい、改ざん、紛失などからの保護が重要になる。同社ではPマーク取得もしているが、セキュリティに関してはより堅ろうにするためにDM用の専用サーバを設けて、ファイルの管理をすべてサーバ側で行い、ハードディスクを持たない端末で処理するシンクライアントのシステムを構築した。ノートPCは全社的に使用不可と徹底している。

レスポンスが取れるDMの条件は

現在、20代を中心に新聞購読が減少傾向にあり、それに伴って新聞折り込みも効果を上げることが難しくなっていると言われる。そのような状況で同社のクライアントには、DMにシフトしようとしている会社も増えている。

「クライアントからいろいろな相談を受けますが、反響が思わしくないDMは、従来どおりの封筒にチラシを折って送っているという形態が多い。こういったDMは当社では販促DMとしては、最も費用対効果の低い、やってはいけないタイプのDMとして位置付けています。われわれが考える良いDMとは、まずは開けたくなる、開けやすいことと、開けた時に内容が分かりやすく、保存性のあるものです。保存性が重要なのはDMを開けた時に欲しいと思わなくても、後で欲しくなるかもしれない。その時に手元にDMがあるかどうかでレスポンス率が違うのではないでしょうか。

カタメールなら、カタログをそのまま送れます。封筒にチラシを入れるようなDMよりは、開けやすく、保存性も高くなり、開封のためにハサミなどは必要ないし、ゴミも出ません。実際に普通の封筒を利用したものとカタメールでは、レスポンスに大きな差が出ていることが効果測定で分かっています。従来どおりのDMに比べると、当社のDM提案を採用してもらえば必ずレスポンス率を上げることができます」(中島常務)

DMは折り込みチラシなどに比べると、よりコストが掛かる。従って、見てすぐに捨てられるような内容では、折り込みチラシなどに比べて、顧客にとっては採算性が悪いものになってしまう。だからこそ、DMを開けてもらう仕掛けと、開けやすくし、分かりやすくして、保存しやすくすることが重要なポイントになるのだ。

そして、もう一つがレスポンスをしやすくするということである。その工夫として、例えば、DMを受け取った人がレスポンスを行う上で、できるだけ手間が掛からないように事前に顧客名を印字するなどがある。これは一見、簡単なことのように思えるが、実は問題もある。

「個人情報を扱うセキュリティの問題と、顧客から預かったデータが、実はそのまま使用できるわけではなくて、必要なデータを指定の場所に印字できるように編集する必要があるのです。また、そのデータがきちんと印字されているのかどうかの品質保証の体制です。当社ではそのためにカメラ検査装置を導入しています」(佐々木部長)

つまり、同社のDMソリューションの心臓部は、この顧客から預かったデータの情報処理部門のノウハウにあるとも言える。これと同社独自に開発したカタメールを始めとするさまざまなDMツールが相まって、レスポンス率を向上する顧客満足度の高いDMになっている。

DMデザインはレスポンス率を左右する

DMのレスポンス率を上げるのにもう一つ重要なのがデザインとコピーである。どのような形態のDMか、どのようなアプローチをするDMなのかによってデザインとコピーは細部で違ってくる。例えば、そのDM自体で注文を取るワンステップ型のものと、DMを送って、そのレスポンスを受けてアウトバウンド部門が動くツーステップ型ではデザインやコピーの方法論は大きく違ってくる。

また、顧客の販売戦略や商品によっても違い、そのへんの企画提案を細かく対応していけることが同社の強みでもある。従って、一度利用した形をそのまま踏襲するのではなくて、よりレスポンスがしやすくなるような改良を行って、次回のDMに生かしている。そのために、DM実施後は顧客にヒアリングを行ったり、DM効果測定を行ったりしている。この不断の創意工夫がレスポンス率を上げることにつながっている。これらの一連の取り組みを基にどのようなDMならレスポンスが取れるのかというノウハウを積み重ねており、それらをアレンジすることで、多様なDM案件に応用している。

「実はクライアントの担当者は他業界がどんな販促やDMを行っているのかは、ほとんど知らない場合が多いのです。そして、印刷会社ほどいろいろな業界と仕事をしている会社はなく、当社ではこの印刷会社特有の強みを生かすべく各業界のDM成功実績や効果の上がったDMを紹介してより良いDM販促をクライアントに提案することが可能なのです。もちろん各クライアントには了解を取ってのことですが」(中島常務)

また、同社ではあらゆる案件に対応するためにデジタル印刷機も積極的に活用している。オンデマンドカラー印刷機と可変印刷ソフトによるフルバリアブルプリント+圧着加工はこれからのDM、究極のDMとして取り組んでいる。このように、顧客のおのおのの案件に最も適した生産システムで対応することも、顧客ニーズにこたえるためには不可欠になる。DMの内容に合わせて形態を決めるので、同社の生産設備はそれに対応するためにユニットになっており、生産するDMに合わせて印刷機や加工機を組み合わせることができる。

「この形態のDMしかできませんでは、顧客ニーズにこたえることも、レスポンスが良いDMを作ることもできません。例えば、注文の仕様にしても、どうしたら分かりやすくて、注文しやすいかをDM制作ごとに何度も改善していきます。それは注文書の記入欄の枠の大きさかもしれないし、返信はがきのミシン目の入れ方かもしれません」(佐々木部長)

今は大量に安くDMが実施できればよいという時代ではない。同社では、「レスポンスの取れないDMではガリバーのDMではない」という強い思いで、DM制作を行っている。ここには単にDMをパッケージとして制作と捉えるのではなく、オリジナルDMツールを開発し、企画から効果測定まで一貫したDMソリューションを提供する同社ならではの姿勢が表れている。

(月刊『プリンターズサークル』2008年9月号より一部抜粋)

2008/09/16 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会