本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

方向が見え出したデジタルアーカイブ PAGE2000より

1990年代半ばから、文化財や歴史資料などをデジタルデータで構築するデジタルアーカイブという言葉が使われるようになった。文化財は日本の博物館業界では「モノ」といったりするが、中国では文物、英語ではhistorical treasureやheritageなどと表現されているこれらの情報をデジタル化することの意義は深いが、実現するには財政面、作業面などでさまざまな困難がある。しかし一部商業化も考え合わせて、なんとか広めようという努力がある。

デジタルアーカイブ(2/3 A3)のセッションでは、凸版印刷(株)の西岡貞一氏、大日本印刷(株) 加藤恒夫氏、東京国立博物館 高見沢明雄氏をむかえ、各立場からのデジタルアーカイブの定義をはじめ、日本と海外の動向など、デジタルアーカイブの方向性やビジネスの可能性について議論が進められた。

東京国立博物館

 東京国立博物館は、古美術・考古遺物などを扱う文化財博物館である。1994年から画像データを蓄積するなど、比較的早い時期から高見沢氏を中心にして博物館の情報化に取り組んでいる。【講演資料

 高見沢氏は「デジタル技術はうまく使わないとお荷物になり、うまく使えば便利なものになる。保存と活用の両方を活用させるということでは、デジタル技術の利用価値は非常に大きい」と語る。モノは経年変化がさけられない。しかし、一度デジタルデータにしてメディアにのせてしまえば、直接触らなくても情報を得ることができる。

 デジタルアーカイブでは、素材のみで全く加工をしていないデータを「生のデータ」、編集や効果などを加えた作品を「料理されたデータ」と表現することがある。高見沢氏は、デジタルアーカイブとは、いつでも使える状態でためておくことではないか、と話す。このため、特定の利用目的からデータ蓄積するのではなく、データ中心主義で汎用性の高い生のデータを大量に蓄積することが重要だと語る。

 現在、東京国立博物館では構築したデータを利用した写真の検索サービスや、「法隆寺献納宝物デジタルアーカイブ」という画像データを検索できるシステムを一般の利用者が使えるように提供している。東京国立博物館は、データ入力以外ほとんどのデータベース構築や利用など、デジタルアーカイブに関するほとんどのシステムを内部で構築し、ノウハウを構築している。

 今後の課題として、画像をはじめテキストなどのデータの充実をあげた。さらに、博物館がエージェンシーへ向かう中、デジタル化したデータを外部の人に利用してもらう仕組み作りも着手していきたいという。

大日本印刷

 デジタルアーカイブ推進協議会のメンバーでもある大日本印刷の加藤氏から、デジタルアーカイブ事業のロードマップや権利問題について解説していただいた。デジタルアーカイブ推進協議会は、平山郁夫画伯が文化財の赤十字軍として募金活動を行い、文化財を日本のデジタル技術で保存できないか、ということを提唱したのが発端となって設立された団体である。

 これを実現するため、デジタルアーカイブ推進協議会では、美術館や各企業がデジタルーアカイブを進める上で、指針となる「デジタルアーカイブ事業のロードマップ案」と「デジタルアーカイブ権利問題ガイドライン案」の冊子を作成した。加藤氏からはこれらの内容について紹介した。ビジネスとして取り組む際、この資料はフローを理解する上で大変参考になる。加藤氏は「コンテンツホルダがどのような状況にあるのかということを理解し、印刷会社の立場として相談相手になるということが、まずデジタルアーカイブ事業を進めていく上で必要なことだろう」と語った。

 デジタル化にアレルギーをおこすコンテンツホルダもまだ多いという。コンテンツが一人歩きして、知らないところで商業利用されるのではないかと不安を感じているためである。このため、加藤氏は、個々の権利処理を事業体、コンテンツホルダー両方が納得するようなかたちで進めることの必要性を強調した。

凸版印刷

 凸版印刷はデジタルアーカイブの利用事例として、VR技術を利用したシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの壁画を表現したソフトや「鑑真と東山魁夷芸術」を紹介した。また、凸版印刷内にある、VR用の大型スクリーンを設置したシアターについても解説を行った。

 凸版印刷の作成したデジタルアーカイブのソフトは、「料理したデータ」の範疇にはいる。凸版印刷は写真データの保存運動になりがちなデジタルアーカイブを、一般の利用者に鑑賞してもらい、感動できる作品を提供したいという目的をもってこれらのソフトを制作した。料理されたデータとはいえ、良い意味で無機質でインタラクティブ性のある自由度の高い作品である。

 ディスカッションの中で高見沢氏は、現在の総理は教育改革にも力をいれているということを紹介した。総理官邸のWebサイトに、1999年末、バーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」の報告書がだされた。この中には、学校の情報化にともない、ハードウエアとともにコンテンツの充実があげられている。さらにミレニアムプロジェクトでは、博物館・図書館・研究機関などの学習資源をもつ組織などが協議会などにより、デジタル・アーカイブのあり方を研究することも記載されている。

 このように、デジタルアーカイブの需要の広がりは確実に予測できる。しかし、具体的なかたちに発展するのは、これからのようだ。

参考
大日本印刷のデジタルアーカイブ関連のグループ会社:DNPアーカイブ・コム
凸版印刷のデジタルアーカイブ関連のグループ会社:イメージモールジャパン
デジタルアーカイブ推進協議会:http://www.jdaa.gr.jp/

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2000/02/10 00:00:00


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