本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

電子受発注へのステップ PAGE2000から

以下は、PAGE2000(2月2-4日)で行われたカンフィアレンス・セミナーの中の電子受発注トラックから、「制作内制化と役割分担」と「印刷受発注のオンライン」についての講演内容をJAGATでまとめ、再編したものです。


● 制作内制化と役割分担
[画像のDB化に伴う作業の効率化]
(コクヨ株式会社営業統括本部 杉本洋一氏)

コクヨでは現在2編の総合カタログ(それぞれ75O-850 ぺ−ジ、約90万部を2編)とそれらのデジタルデータを活用しCTPで営業マン用のハンディータイプのものを作成している。総合カタログのフルデジタル化への取り組みステップを6段階に分けている。そのステップの中で問題点となったところは、
第二段階(1992年ごろ):Macと写植の混合時代で、Macを写植機の代替えと考えたとことに間違いがあり、組版の品質がバラついた。DTPの利点を活かした表組やデザインにしていくまでに意外に時間がかかった。現在も写植組版ならではの名残がある。

第四段階(1994年ごろ)画像のデータベース化に取り組んだが、技術的、管理的に印刷会社主導の囲い込みにあい、運用上非常に不便をした。その後もっとオープンなシステムを考え「GAMEDIOS」を導入した。その際膨大なポジ写真の再分解をした。現在42、000点の画像を管理。

第五段階(1997年ごろ)DBからレイアウトの粗画像を利用してまとめたが、すり替えのルールが不徹底で大きなトラブルとなった。またフルDTPと在版ページの混在は現場に大きな混乱をもたらした。
などである。経験から画像DBに対する基本姿勢として、
・ 印刷会社の提案、あるいはやり方が「囲い込み」思想である会社とは、パートナーが組めない。
・ ルールを決め、基準をができれば、作業・チェックはできるだけシンプルにする。
という考え方を徹底している。色校もDB化の時はシビアであるが、カタログ上での校正は正誤チェックだけである。ポスター、パネルなどの特別なトリミング、拡大でないかぎり問題はないという。カラーについてはCMSの導入はしていない。その理由は、もともと本機と校正機の違いがあり、コクヨとしてどの程度のバラツキまでゆるされるかを決め、その範囲ないであれば問題なしと考え、要求範囲内に大抵おさまっているので、カラーマネージメントに今以上の労力はいらないと考えている。

画像DBのメリットは大きい。DBはカタログという限定された対象物だけでなく、広範囲に利用可能となり、初期投資費用は十分回収できる。今までは代理店・販売店に対する販促ポジの提供、新製品の宣伝PR用の写真配布のコスト、管理の手間は大きく営業部門の負担となっていた。また、広告写真、POP制作、インターネットなど他メディアへの展開など波及効果は大きい。
役割分担は、互いの本来の目的と能力(本業)によって機能を分担する。クライアントは情報の管理運用で、印刷は情報素材の加工と品質保証と考える(理論武装しても結果がすべて)。専門家としての新技術の提供、支援。自社の囲い込み思想は時代に合わない。オープンであればアウトソーシングもしやすい。(文責・JAGAT)


[衛星を利用した印刷制作]
(宇宙通信株式会社・須田純郎氏)

衛星を利用した情報配信は、以前では設備・コストとも高額なもので一部の利用に停まてまっていたが、現在では、情報量による課金制になったり、アンテナも一回り小口径での受信が可能になり、ノートパソコンでの利用が可能になったことで、身近な通信手段になりつつある。とはいっても衛星を使った高速データ通信(電話回線の100 倍)は1:N の通信手段に有効であることは基本的に変わりはない。その中で一番有望なサービスがTCP/IP通信サービス、すなわちインターネット/ イントラネットサービスである。地上回線と衛星回線の組み合わせで、少量データは地上、大容量は衛星と使い分けることで効率とコストを見合うものにしようと言うもの。

衛星を使った情報配信の例を紹介
一番ポピュラーといえるのが、新聞社の分散印刷である。A 社は阪神大震災以降本格的に取り組みはじめた。バックアップも兼ねて東京・大阪の各本社で印刷工場、印刷会社に配信している。A社の専用システムで広告の電子送稿はの動向とは無関係。
 大手予備校Bでは受講生のテキストのオンデマンド化を実現している。予備校本部で作られたテキスト、資料を地上線からアップリンク局に送り衛星から各地域の予備校に送られDocuTechから直接印刷をするもの。必ずしも、地上線に対してコスト面で有利とはいえず、今後の課題であるが、すでに衛星設備を持っている予備校も多く、印刷にも利用できるという点では、面白いかもしれない。
 コンビニで実験中なのが,本や音楽のマルチメディア端末による配信、POPの映像化である。音楽を専用端末にダウンロードするでけでなく、アーチストの写真、歌詞もダウンロードできるというもの。このようなビジネスの仕組みを考える場合、問題は料金の支払いであろう。すぐに電子決裁ができるわけではない。そこではコンビニ決裁という一見ローテクに見える方法がより現実的で、合理的ともいえる。また予備校と違い、コンビニ大手の店舗数では、7000-8000 店あり、地上線より衛星のメリットが出やすいという。
 予備校をもっと進めてのが、鹿児島大学である。かつてのビデオ放送ではなく、リアルタイム中継によって学生が先生の講義を受けコールボタンで質問ができる。テキスト、資料をその場で手に入れることも、修正もできる。テストも可能である。  マイカルグループ(130 店舗)では、大規模なイントラネットを衛星、地上の専用回線を組み合わせて構築している。基幹業務は地上線を利用、リクエストアクセスはインターネットでコンテンツは衛星で送るといった方法で、マルチメディアデータをフルに活用しコスト削減を実現している。
今後は通信に何を使用しているなどと、意識しないまま、デスクのパソコンからデータの遣り取りができる。いかに効率的な組み合わせをするかである。

通信の利用が増えれば印刷会社には出ない印刷データが、形を変えて企業間を行き来するであろう。1:1の通信を考えれば、衛星であるメリットはないが、印刷物同様配布・配信も視野にいれる必要があろう(文責・JAGAT)。


●印刷受発注のオンライン
[インターネットがビジネスを変える]
(株式会社富士通総研 M&Mコンサルティング事業部 碓井聡子氏)

EC(エレクトロニック・コマース)の市場や動向をみるとき、企業間(BtoB)取引と企業と消費者(BtoC)の二面から見ていく必要がある。しかし、社会の変化やビジネス作りにはBtoCのウォッチが大切であろう。
現在BtoBの日米の市場規模格差は、日本が1に対してアメリカは2で1年強の遅れで、この差は2003年においても埋まらない。日本でのBtoB市場のEC化率(98年)は電子・情報分野、自動車・部品がやっと10%程度で他の分野は1%未満であるが、2003平均で7.5倍の11.2%に伸びると予測、ただし電子・情報分野、自動車・部品が圧倒的(40.0%前後)ついで運輸・物量が12.0%、紙・事務用品が8.0%。他は低い。
企業間においても従来の商習慣などが大きな壁で、業界による差も大きい。その突破口は、やはり経営者の意識である。企業トップのWebへのアクセス状況を先進国別でみるとカナダ、アメリカ、オーストラリア、イタリア、イギリス、スペインなどが軒並み95-99%となっているのにたいして、日本では97年が73%で98年も78%とあまり伸びていない。
ビジネスの仕組みを変えようとする時にWebといった顧客サイドと密接な関係にあるメディアの動きに疎い経営者では困る。印刷はBtoBではあるが本当はBtoBtoCであり、顧客の顧客(エンドユーザー)で何が起こっているかを把握することが重要で、でなければ顧客へのソリューションはない。
インターネットは、ビジネスの場を提供するにはもってこいのツールで、オークションのような完結型、予約の場の提供のようなWin-Winのモデル、知らない同士が集まり共同購入の場を提供するもの(会員とは違った連携)、また、ネットならではのマーケティング手法による販促ビジネス(リンクタイアップによるネット商店街、口コミ効果による衝動買い仕掛け、モニタリングによる噂マーケティング)など知らないもの同士を繋ぎ、顧客情報に直接触れることで、満足度を上げることができる。

今後大企業を中心にSCMの一環として、ネット公開による調達は進み、取引インフラはインターネットになるとすればネットの外ではもうビジネスはできない(印刷も同様)。以前のニューメディアの時代とは違い、技術的にはかなりのことができるようになったが、ビジネス創造が追いついていないと碓井氏、須田氏とも指摘。質問にでた個人レベルでの印刷ない出力センターでのネット取引の動向についても、創造と体験が不足しているという。
新しい時代、文化にはシーンの提示、体験をさせる仕掛けが必要で、人間は「便利さを体感」するとそれから逃れなくなるはずだと結んだ(文責・JAGAT)。


[ECは印刷業のビッグバン]
(松下電工株式会社・住建分社 酒巻正芳氏)

宣伝・広報には計画性と効果測定が求めらているが、代理店営業だけではそれができない。パーソナルマーケティングレベルまでモデル深化させる必要がある。そのための手順として、
1. 従来型カタログの(印刷媒体)の徹底したCR化
2. 中央集権型から市場・エリア分散型へ
3. IT革命の対応(市場のパーソナル化への対応)
そこでまずカタログのCR(コストリダクション)として、大型カタログの見なおしからはじめる。
現状分析では、事業毎の印刷発注状況が共有化されていない、品質・コストの管理が均一ではない、デジタルへの取り組みが標準化されていない。そこで、印刷業務のガラス張り化を計る
◇見積もりオープンエントリー制の導入
 ・ HP開設による見積もりのオープン化
 ・ 発注情報の一元管理
 ・ 用紙・資材一括供給
これによってコストの最適化を計る
◇ 商品情報のDDBの構築
 ・ フルデジタルによる工程の分離化。
  -一括受注による囲い込み、経費のブラックボックス化を避け、工程毎の入札
 ・ 技術ルール・チェックルールの確立
  -ルールブッククライアント編、デザイン会社編、製版会社編、印刷会社編を作成
これによって、フォーマット標準化による社内外の情報共有化ができる
◇ 市場への情報提供ネットワーク体制への確立
 ・ 電子カタログへの移行
  -印刷カタログを革新的に解決するには(情報運用の効率化)データ化・ネット配信は避けられない。
 ・ オンデマンドプリンティング電子受発注
  -各代理店毎の地域提案型カタログの制作を支援して行く。
 ・ 電子決裁へ向けての体制作り
  -これによりネットワーク社会への対応。現在、最後のネットワーク体制の整備に入っている。
これらの改革は、新時代に向けての基盤整備であるが、社内外とも既存の仕組みや文化の違いをどう乗り越えるかが難関である。契約や色校正、確認チェックのルールなど、なぜそうするのか、なぜ必要なのか、変わりはないのかを突き詰め、技術的にクリアし新しいルールを確立する。ECの最大の問題は技術革命と構造改革が同時進行しなければならないことである。(文責・JAGAT)


JAGATではクライアントが何を考え、どの方向にいこうとしているのか、その中から印刷の今後を探るセミナー「変貌する得意先の情報環境と印刷物」シリーズを開催しています。98年、99年の各社の動向は「クライアント動向2000」にまとめています。
次回は4月24日(月)開催予定で企画準備中です。今回は本田技研工業株式会社様の広報戦略とWeb/印刷物の関係を取り上げます。ご期待ください。

他のPAGE2000報告記事

2000/02/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会