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システム化を目指す次世代DTP PAGE2000より

プロの扱うDTPはパッケージソフトの段階を越えた。効率的ネットワーク運用,カラーマネジメント,自動処理化など,システム的な見直しによって,より効果の高いレベルに脱皮しつつある。個別の出版環境に合わせたDTP運用のシステム的なソリューションが求められている。コア機能の周囲を作り込む方正のFounderFITSの利用や,モジュール構造で開発を容易にしたAdobeのInDesignがあるが,この種の方法を検討したセッションが、「次世代DTP(2/4;D4)」である。

モデレータの、(株)エポック・ティーエスシー江本 博治氏は、DTPはアナログの印刷業界にデジタルを持ち込んだ革命児で、はじめは冷ややかだった印刷業界でもバブルの崩壊によるコスト削減やパソコン市場の急速な拡大により普及したことと、次世代のDTPでは,今までただの流行語でしかなかったマルチメディアが本格的に稼働し始めインターネットを使った印刷の可能性やSGML/XMLやPDF等を使った新しい出版の仕組みが必要となり,その際にはMacやWindows,UNIX等といったプラットホームによる垣根は取り払われ、なんにでも使えるものが出てくるであろうと述べた。

新聞のCTSシステムを手がけてきた富士通(株)情報出版システム統括部の窪田 伸一氏は、新聞業界では,今までローカルでクローズドされたシステムを使用していたが,現在はオープン化されたDTPでのシステムへの変更を余儀なくされている。そうすることによって,結果としてフルデジタル化が可能になる。
移行にあたっての問題点は,まず残存するアナログ部分のデジタル化である。具体的には広告などのフィルムで入ってくるものをどのようにしてデジタル化するかである。また,人間による進行管理に関してもデジタル化の必要がある。さらに,フォーマットに関してもPDF+XML等といった組み合わせによりいかにデジタルのデータを使いまわすかも考えなければならない。そういったことをまとめて,人事・総務・印刷・営業などを巻き込んだトータルでのソリューションが必要となってくる。

それらを考慮して次世代DTPを考えてみると,企画の段階から印刷までのワークフローを含めた編集製作工程管理システムの配下にアセット管理するシステムと,その配下に古いシステムと新しいシステムを共存させたパソコンが存在し,その間をシームレスに連携させて一つのソフトのようにデータのやりとりを可能にし,作ったデータはデータベースの中に蓄えられていくようになるものが望ましい。また,実際の紙面の作成にはレイヤーの構造を使い,既存のシステムからの情報もシームレスに組み込める必要がある。
そういった観点から見ると,Adobeから今後発売されるであろうInDesignのようなモジュールを使うアプリケーション方式も選択の一つとして考えられる。つまり次世代DTPはトータルなシステムの中にうまく組み込まれたフレキシブルなものが望ましい,と語った。

Windowsを基盤にしたアプリケーションを主流にしている方正(株)の管 祥紅氏は、データベースを基軸としたソリューションの展開とネットワークで管理されたワークフローのシステムに力をいれていることと、方正の扱うソフトウエアの特徴は,汎用エクステンションソフトによる機能強化が可能なことで、自社に足らないものがあった場合にはその部分をエクステンションとしてコアの部分に組み込んでいける構造であることを述べた。
そのためにSKDを開示しているので,エクステンションの開発は方正だけではなく他の第三者でも可能である。方正ではこういったシステムを採用したことによって、印刷や編集の企業にとどまらず、流通業などまで、それぞれベストマッチしたシステムを提供することに成功している。

QuarkXPressではXtensionによって拡張性を提供している(株)リンクスの小澤 正氏は、Xtentionではユーザインタフェースをがらっと変えることはできず,あくまでもQuarkXPressの画面が出てきてしまうが,機能の8割9割をXTensionから駆動することができるようになっていると述べた。
アドビのInDesignも機能の拡張性を主眼にして作られたもので、InDesignの場合はユーザインタフェースも含めてがらっと変えてしまうような作り方ができる構造になっているはずである。そういった中で,かなり大胆なカスタマイズをして,InDesignをエンジンとして使ったようなやり方でワークフローを作って,その中に組み込んでいける可能性を持っている。

だから今後は,どのようなワークフローを,そのパッケージソフトを使って作っていくかということに,関心が移っていくのではないか。また,InDesignの開発環境はオープンである。アドビがオープンな姿勢をとっていることや開発に着手しやすいという事情もあり,いろいろな情報が入手しやすくなっている。
恐らく今後はQuarkXPress用のXTensionと同等のいろいろなXTensionが,InDesign上で開発されて,サードパーティーやユーザがワークフローを作っていく中で,ソフトウエアを独自に開発して自社のシステムに合うように作っていくという改変が比較的しやすい状況になっていくと予想される。今後はパッケージソフトウエアのアプリケーションのカスタマイズ性を視野に入れて,ワークフローを考え直してみるのではないか,と語った。

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2000/03/13 00:00:00


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