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オンデマンド印刷はどのように軽印刷を代替するか

Drupa2000のニュースがチラホラ囁かれている中で、Xeroxが大規模な展示をすることが話題である。DocuTechの実績を基にXeroxが電子印刷が伝統的印刷に侵食してくるのに対し、ハイデルベルグデジタルが旧コダックの電子印刷部門を引き継いで迎え撃つというような、派手な取上げ方もある。大日本スクリーン製造がIGAS99で新たなマシンを発表するとか、キヤノンからKodakエンジンのものが出るようだし、モノクロのオンデマンド印刷は印刷業の将来に関わる技術であることが認識されつつある。

かたやカラーのオンデマンド印刷の話題はどこにあるのだろうか。前回のDrupaから最も変化をしたのは大判プロッタであり、質量ともに大変な伸びをして、一般の人の目につくところにまで普及した。しかし商業印刷分野のカラー印刷をオンデマンド化することは、今だ五里霧中のように思える。これは販促にこういったプリンタを使う情報システムが未整備であるためといわれることが多かった。

ところが下の方からはカラーのプリンタ分野で大きな変化が起きて、パソコンにつないで盛んに使われるようになったのである。パソコンでのページバリアブル用差換えソフトもいくつも出るようになった。またEFIのように効率的かつ柔軟に差換えの処理をするものもでている。これがDrupa95頃に言われたオンデマンドカラー印刷の市場と重なりつつある。

この分野は小は名刺/IDカード、POPから、大は大判プロッタまで、ますます盛んになっていくと考えられるが、キープレイヤーを誰と特定するには、あまりにも多様な世界である。それゆえに活発に開発競争が行われて、まだまだ新たなものを生んでいくであろう。

それでは上位のオンデマンドカラー印刷はどうなるのだろうか? これは当面は相当ニッチ度の高いアプリケーションであり続けるだろう。つまりBookOnDemandの表紙や図版など、通常のカラープリンタよりも品質がよいが、市場ははるかに狭いところから、なかなか出られそうにもない。それ以上に広がるには、カラープリンタとランニングコストで戦わなければならない。

巨人の戦いが目立つ冒頭の電子印刷はどうなるのだろうか? これはカラーの場合がパソコンとつながった市場が先行したのとは反対で、今後パソコン密着型の中規模システムが残された戦場であろう。今コピー機のインテリジェント化が進んでいて、内部はデジタルになったのに、外部のコンピュータとネットワークにつながるところがまだ定着しない。しかしもうパソコン/レーザプリンタのない事務所はないように、文書がレーザプリンタを対象に作られることは自明である。ならば、あと少しインタフェースが整備されたならば、オフィスの文書処理にとっては革命的なことが起こりそうである。

革命とは文書に関する作業が、生成から配布まですべてクローズドなオフィス環境で行えるようになることである。今PDFでページ物の文書を配布しても、受け取った方は両面プリンタや製本設備を持っていることは稀なので、従来の紙の文書配布よりも不便な使い方を強いられることになる。しかしそこそこの規模のオフィスなら両面印刷および製本までの自動化ができるようになれば、紙と電子文書の利便性は逆転し、電子文書の管理のしやすさで、しかも紙の利便性も損なわれないようになる。

すでに欧米ではこういった方向に動き出していると思うが、これは日本では意外に時間がかかるかもしれない。その最大の理由は日本では電子写真の1枚あたりのフィーが高いことであるが、さらに文書管理という概念が日本の事務所には希薄で、印刷物が品切れになる直前まで管理していないという傾向があるからだ。逆に文書管理が促進される理由を考えると、イントラネットの普及のような、事務処理のネットワーク化が進むことであろう。このあたりに従来の軽印刷から別のサポートサービスへの手がかりもあるように思える。

関連情報:軽印刷はなくなるか?

2000/03/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会