本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

顧客のニーズをつかむ方法とツール

− ケースで学ぶ ひとりからできる戦略営業 −

(株)ビジネスコミュニケーション研究所代表取締役 田中信一
日本印刷技術協会マーケティング部 上野憲一郎

印刷ニーズ情報をいち早くつかむのに有効なアクションやツールを,6つほど紹介しましょう。

(1)印刷物のアイテムリストの作成

 顧客が発注している印刷物の全アイテム(品目)のリストを作ります。自社が受注しているものだけでなく,競合他社に発注されているものも含めて,使用部門や使用目的別に分類してリスト化します。リストが完成したら,顧客の業務の流れ(ある部門でも全社でもよいですが)に沿って印刷物を列挙してみましょう。どの部門で,どの印刷物が,何のために,どのように使われているかがつかめるでしょう。その結果,顧客の動きから発生しそうな印刷ニーズが予測できたり,逆に,発注の動向や内容から顧客の動きがわかったりします。また,顧客の同業他社のアイテムリストを同僚と比較してみたり,印刷物を店頭などで収集してリストを作れば,印刷物の過不足や業務のやり方の違いなど,提案点が発見できるでしょう。

(2)発注部門と受発注場面の観察

 その顧客は納期に余裕をもって発注してくれますか。それとも,いつもドタバタで緊急や至急が多くありませんか。また価格要求はどうですか。見積額だけですぐ発注先をチェンジしてしまう顧客ですか。発注部門や担当者は,社内で影響力や発言力がありますか。  実はこれらのことは,われわれの活動や行動に大きく影響します。このことを「発注の習熟度」といいます。習熟度が低ければ,われわれにとっては負荷が高くなりコストもかかります。反対に,習熟度が高いほどわれわれの負荷は低くなりますが,提案の余地は少なくなります。つまり,われわれにとって面倒な顧客のほうが,例えば,在庫管理の申し出や受発注の合理化・効率化提案なども受け入れてもらいやすく,顧客に食い込んで競合に差をつけられる可能性も高いので,どちらが良いか一概にはいえません。

(3)担当者との会話

 普段われわれは,顧客の担当者とさまざまな会話をしています。仕事の案件以外にも,担当者の仕事の愚痴や会社の現状,上司の悪口,さらにプライベートのことなど,多岐にわたっているでしょう。そんな何気ない会話のなかにも,意外に顧客ニーズに触れる情報があるのです。「セールをやっても売れない」「ウチの営業はレベルが低い」「いつも急ぎで申し訳ない」「ウチもリストラで人が減るよ」などは,ビジネスや担当部門の業務に関する話ですが,一見,印刷物とは無関係。これが意外にポイントなのです。先々印刷物につながったり,顧客内では解決策を検討していたりするものなのです。よく注意して顧客の動きを見ているとつかめることも多く,日常の営業活動でウラをとっていく価値があります。

(4)納品後の印刷物評価

 受注した印刷物には,顧客ニーズが詰まっています。われわれは「納品が仕事の完了である」と誤解しがちですが,印刷物は使用されて初めて価値が出るものですから,「納品が始まり」です。やっとの思いで受注し,納品した印刷物には,顧客との関係を深めるポイントや次なる受注へのヒント,蓄積すべきノウハウがあるのです。印刷物を使った結果や評価,不具合・問題点,改善点などを,追跡調査します。もちろんすべてのケースで可能だとはいえませんが,発注担当者に依頼して使用者の感想やアンケートなどをとり,分析結果を報告することなどは十分可能でしょう。

(5)失注分析

 見積もり合わせの場面が多くなりました。確かに価格は受注の大きな決め手ですが,100%が価格で決まっているわけではありません。もしそうなら,われわれ営業の存在価値はとっくにないはずです。  「この次また頑張ろう」だけでは営業マン失格です。失注の理由をさまざまな視点で分析します。その顧客での失注理由をつかみ,逆の取り組みをすれば,他の機会では受注の決め手になる可能性があります。転んでもただでは起きない,ということです。

(6)幹部の訪問ヒアリング

 幹部に,訪問や同行をお願いするのも有効です。しかし,顧客に時間を割いてもらう以上,「ごあいさつ」程度の目的のない訪問は,幹部といえども,もはや歓迎はされません。幹部が訪問するからには,営業マンレベルでは対応が難しいことについて,ヒアリングすべきです。この場合,営業マンは,前述のような日常の営業活動から得た情報を,幹部に伝えておく必要があります。これらを掌握できて初めて,幹部ならではの経験と仮説をもったヒアリングが可能になります。もちろん幹部が面談する相手は,日ごろ営業が商談している相手より,上位の役職者になるでしょう。いわばレールを敷いてもらうわけです。

(詳しい内容はプリンターズサークル3月号の記事をご覧ください)

月刊プリンターズサークルと最新号のご案内へ

購読お申し込みはこちら

2000/03/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会