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drupa2000でデジタル印刷システムを見る視点

(JAGATのドルッパ情報はここへ)

drupa2000では、デジタル印刷システムの多様化、全方位展開が見られるだろう。一つの焦点は多様化が現実的な意味でどこまで及ぶかであるが、実際のビジネスの観点からは、1枚当りコストをどの程度まで下げられるものになっているかが見所であろう。 本稿では、drupa2000出展予定各社のホームページやニュースリリース、記者発表、及び海外からのニュースから得られた出展製品情報を上記の視点からまとめた。

「小ロットカラー」対応を越えた製品群

デジタル印刷システムの位置付けは、品質、対象ロットともに、コピー/プリンターと枚葉印刷機の間というものだったが、今回は,枚葉印刷機市場までも視野に入れた製品群が見られるだろう。

Indigo社は、新製品としてUltraStreamの上に巻取印刷方式のPublisherシリーズを出す。Publisher4000、8000で、前者はA3フルカラーで4000枚/時、後者は8000枚/時で印刷する。これらの製品群によって、少なくとも印刷スピードの面では、いわゆるショートランカラー印刷の市場だけではなく、QM-DIのようなオンプレスイメージング印刷機や枚葉4色機が対象としてきたカラー印刷物市場もカバーする。
オンプレスイメージング印刷機では、カラットデジタルプレス社が、2台のKARAT74の実演展示を行なう。大日本スクリーン製造は、新発表の「TruePress744」をはじめとするTruePressシリーズを展示するとともに、インキジェットイメージングシステム「TruePressV-XL」を発表する。

品質レベルと紙の選択範囲で枚葉印刷機に迫る

ザイコンは新製品CSP320Dを発表する。最大A3サイズ、両面4色印刷が可能なデジタル印刷機で、印刷スピードは960枚/時だが、解像度が600×600dpiながら4ビットのデータ深度があるので2400dpiに相当する印刷品質になる。
本機のもう一つの特徴は、表裏2セットの回転するベルト上に1色ずつ画像を形成して4色画像を作り、これを1度に紙に転写する方式にある。これによって、表裏見当の向上と、紙サイズがA4から320mm×470mmまで、紙厚も80〜300g/uという広範囲な紙の選択ができるようになった。
ゼロックスはドキュカラー2045、2060の2機種を出すが、新方式「デジタルブランケット」によってオフセット印刷並の品質を実現、独自の紙搬送機構で64〜280g/uの紙の印刷を可能にした。

OEMで市場を広げるPresstek

オンプレスイメージング印刷機市場を追及し続けているPresstek社の姿勢は一貫している。同社CEO、Hallman氏は「刷版処理に化学物質を使わずしかも廃液処理を不要とした版を、印刷機上で刷版製版しないのは道理に合わない」と述べている。
同社は、新製品として、親水性のシールコート層を持ち,ガム処理が不要で水現像ができる陽極酸化アルミプレート「Anthem」を発表する。網点線数は200lpi、耐刷性は10万枚である。
同社の技術は、ハイデルベルク,カラットデジタルプレス、アダスト、桜井そしてアキヤマのオンプレスイメージング印刷機に使用されるが、その他2社からも同社技術を使ったオンプレスイメージング印刷機の発表が期待されている。 アダストからは、印刷ロットの面でドキュテックがカバーする範囲以上の仕事を引き取ることができるように、ゼロックスの「DigiPath」ワークフローとつながるPAX DI印刷機も発表される。

モノクロ市場向けにも新システムが続々登場

ドキュテックが先行したモノクロぺージ物印刷市場に向けても、各ベンダーが新製品を投入する。
ハイデルベルグは、「Digimaster9110」を展示する。A3で6600ページ/時(110ページ/分)の生産能力を持ち、各種インライン後加工機能も付加できる。Indigo社は、解像度800×2400dpi、印刷スピードがA4サイズで8160枚/時、パーソナラーゼーション機能具備の「Ebony」を発表。DSでは、「TruePress V200」がモノクロページ゙物市場を狙った製品である。ゼロックスは10800ページ/時の最高速機を含むドキュテック3機種を出す。

1件当り数十、数百万枚以上のバリアブルデータ印刷をする請求書や請求明細の分野でその地位を確立した高速デジタルプリンタは、今後BOD(ブック・オンデマンド)分野での利用も期待されている。
サイテックス・デジタル・プリンティング(SDP)、IBM、オセの製品は着実に足場を固めているが、ドルッパ2000では、SDPがVersaMark(120000ページ/時)、マンローランドがNipson7000 VaryPressを出品するという情報がある。後者は、モノクロでA4サイズを解像度480dpi、96000枚/時で印刷する。

デジタル印刷機の特殊印刷分野への多様化として、Indigoはラベル印刷用システムWebstream100、200、400と、同社パートナーの開発による、CD、CD-ROM、DVD向けIndigo-KammannK15デジタル印刷機を出展する。AGFAも、5色のラベル印刷機「Mark Andy」を発表する。
それ以外にも、Elcorsy/東洋インキの「Elco400」(95000ページ/時のバリアブルデータ印刷機)、マンローランドのDICOWEB、その他いくつかの新製品発表の期待がある。 いずれにしても、多様化するデジタル印刷の全体像把握のためには、高速コピー機やプリンタ、大判プリンタも視野に入れておかなければならない。<P>

4色、10セントに価格を設定

ゼロックスは、ドキュカラーによる4色カラー印刷料金として10セント/枚を設定し、新しい市場を開発すると発表した。
小ロットといえども、コピーの世界から見れば大量のロットを対象とする印刷業界にとって、デジタル印刷機利用の大きな障害は1枚当り単価水準である。先の価格は、当然、パワーユーザー向けのものであろうが、デジタル印刷システムの対応ロット範囲を拡大する設定であることは間違いない。既に世界中で20000台を出荷したとするドキュテックの次の市場は印刷業界であろうから、この価格設定は印刷業界における市場開拓にとって非常に重要な意味を持っている。

ページ単価について、インディゴ社は、「Ebonyの維持に掛かるコストの総額は、電子写真式印刷機の中で最も安い」としている。また、Xeikon社もカラートーナー、ディベロッパーの価格を2000年5月から15%下げると発表した。

CTPからもう一つのCTPへ

ヒューレット・パッカードの会長は、「CTPはComputer to PlateではなくCamera to Pressになる」と述べたが、ドルッパ2000では、HPの「Photo Smart」デジタルカメラをindigoのSNAPとデジタル印刷機につないだデモが行なわれる。
今回のドルッパでは、デジタル印刷機の出力機能を訴えるだけでなく、ワークフロー全体としての展示やデモが見られだろう。
ハイデルベルグは、QM-DIやスピ−ドマスターDIをプリプレスからデータ管理を含むシステムをリンクしたワークフローとして実演する。ゼロックスは,ドキュテック、ドキュカラーとともに、ドキュメントの蓄積、検索、メディア変換のためのソフト「ドドキュSPコントロール」、「デジパス」、そして600dpiで30〜200%の拡大縮小機能を持つ「デジパス・スキャナー」も展示する。
カラットデジタルプレスでは、その有望顧客が原稿を持ち込んで、フル装備のプリプレスシステムで入稿してからデジタル印刷までのデモをする。

(出典:社団法人日本印刷技術協会 機関誌「JAGAT info 2000年5月号」より) 「drupa2000直前情報」

2000/04/11 00:00:00


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