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Webを利用してグラフィカルにデータを管理・運用

株式会社恒陽社 CPL 相場 和明


最近では,クライアントによる内制化やインターネットを使用した情報配信など,目的やコストに応じて情報の配信方法の形態が多様化してきている。その結果,印刷業界では印刷用紙の出荷額は変わらないが,印刷出荷額においては対前年比マイナス成長になっている。これは印刷物を作成するという印刷加工産業の領域が,年々小さくなっている裏付けともいえる。

この現状から脱却するためには,印刷加工産業の最大の強みを生かし,さらには,事業領域を今まで以上に広がりをもつ情報加工産業へと拡大することが重要であり,そのための取り組みが必要になってくると考える。

クライアントの意識の変化

デジタル化による作業が普及したことにより,以前に比べ,印刷会社間の品質,コスト,スピードに差がなくなってきている。さらにハード,ソフトに関しては,さまざまなツールが提供されるようになり,クライアント側で,ある程度のものは社内で制作することが可能になってきた。クライアントは自社内でカバーできない領域の印刷だけを,印刷会社へ発注しているのである。いい換えれば,印刷会社をカラープリンタとあまり変わらない存在として捉えているクライアントも,決して少なくないのである。

また,クライアントは,情報を配信するための手段として最も有効なメディアを選択し,それに合った形態で制作するようになってきている。単に情報を加工する手段として,印刷を選んでいるだけなのである。今まではクライアントの印刷物制作担当者が,印刷会社に印刷物制作の発注を行っていた。しかし,今では印刷物だけではなく,多様なメディアにも対応することができる会社に発注を行うようになってきている。
そのため,印刷会社でも,あらゆる要望に対応できる情報加工会社への変革が必要になってくる。

クライアントは印刷会社に何を求めているのか

アメリカでは,低コストに抑えなければならない品質レベルの低い大量印刷物は,既にインターネットへと需要が移っている。そのため印刷会社は,企業や商品のもつブランドを打ち出す高級印刷にターゲットを絞ることを迫られており,それを提供するためのフロー構築が重要視されつつある。

クライアントは,印刷会社との新たな関係を求めている。具体的には,印刷に使用したファイナルデータの管理を行い,それらのデータを多種多様なメディアへ加工する技術,有効な運用ができる環境を備えもっていることである。さらに印刷会社を受注者としてだけでなく,「協業会社」と位置づけて,オープンな関係を求めている。また,印刷業務以外にも,クライアントとの意識統一,商品創出までのスピードの向上,マーケティングに対しての協力も求められるようになっている。

ブランドリソースマネジメント(BRM)

新しいブランドをスタートするには,ビジネスチャンスを逃すことなく,ブランドコンセプトから商品販売やサポートを含め,ライフサイクルを速めることが課題になる。既にアメリカでは,商品価値や収益性の向上,市場ニーズの把握を図るために,企業イメージの確立とブランドの統一,強化,管理などを行うことが重要視されている。

また,技術研究調査会社のGISTICS社が行った調査によると,ブランドにかかわるデジタルデータは,実に全体に関わる費用に対して76.1%にも及ぶ。その内容も,販売チャネルの拡大を図るために,低コストの大量印刷物に代わり,インターネットを使用した情報供給に変更されている。印刷物は,前述のとおり,ターゲットを絞った企業イメージや,商品がもつブランドを打ち出す高級印刷物へと移行している。

制作・印刷会社におけるBRMのメリット

・データ管理上のメリット
データの確認,選択,収集の効率化を図るとともに,クライアントの手間も削減でき,直接の担当者でなくとも,データの所在・有無を容易に把握できるため,納期,コスト面などで有利になる。

・企画提案上のメリット クライアントの理念や動向,制作物の傾向などの把握,分析が的確になるので,クオリティの底上げを図ることができる。それにより提案内容がより的確になり,マーケティングへの協力も可能になる。

・その他のメリット 他メディアなど,印刷物の枠に捉われないデータ活用提案ができるので,新しいビジネスの提案の「芽」が膨らみ,顧客信頼度の向上を図ることができる。さらに,クライアントとともにデータ管理を行うことにより,クライアントの獲得,囲い込みも可能となる。

また,それ以上のクローズドからオープン化された関係を築くことができれば,クライアントと印刷会社との関係から「協業会社」へと発展させ,事業領域の拡大につなげることが可能になる。


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2001/03/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会