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バイオレットレーザーCTPプレートが一挙に出現

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バイオレットレーザーCTPでランニングコストが安くなるのか?

CTP分野はバイオレットレーザーCTPとプレートが大きな話題になっている。期待は従来のPS版が焼けるようになるのではないか、そうすれば今の安いPS版で済むかも!
しかし、そうならないかもしれない。現在の410nmクラスのバイオレットレーザーは出力が僅か5mWであり、高感度な銀塩プレート(感度約1マイクロジュール/cm2)でないと焼けない。高感度フォトポリマプレートも発表されるが、10〜35mW出力のレーザーとの組み合わせになるだろう。

通常のPS版が焼けるバイオレットCTPレコーダーも開発されるだろう。この場合、高出力化のためには、レーザーを多数並べる他チャンネルヘッドが早く開発されなければならない。

しかし5mW出力のバイオレットレーザー寿命の1万(〜2万)時間に対して、35mWレーザーは400時間程度とも言われている。高出力のバイオレットレーザーは発熱によって自分自身を痛めつけ寿命を短くする。レーザー交換コストは当然高額になるだろいう。レコーダーのメンテコストの低減への期待は、通常のPS版より高い銀塩プレートとの組み合わせで実現する。なんとも痛しかゆしということだ。

版材を大別すると、可視光レーザーに対応する「光モードタイプ(ビジブル/バイオレット)」と赤外線レーザーに対応する「熱モードタイプ(サーマル)」に分かれる。

光モードタイプ(ビジブル/バイオレット)

低〜中出力(数mW〜100mW)レーザーを用い高速スキャンニング露光するので、版材の感度は従来PS版の1,000〜10,000倍が必要である。感度の高い順(出力機のレーザーパワーが小さくて済む順)で光モードのプレートを並べると次のようになる。
(1)ハロゲン化銀(銀塩拡散転写法または銀塩とジアゾの複合系)
(2)電子写真法を利用した版材
(3)フォトポリマー

銀塩DTR型プレート
超高感度(約1-10μJ/cm2)であり、数ミリワットの低出力レーザーのセッターでも書込み可能であること、アルゴンイオンレーザーから長波のredLDまで各種波長のレーザーに対応した品揃えが可能なこと、および解像力は300lpiが可能など特徴があるため、広く使われている。アルミニウム支持体の内型拡散転写(DTR)方式とポリエステルまたは紙支持体の外型拡散転写(DTR)方式とがある。当初は耐刷力が不十分だったが、現在ではかなり改良されてきている。

電子写真型プレート
高感度(数μJ/cm2)であり、数ミリワットのLD780レーザーで紙またはフィルム支持体上の酸化亜鉛を光導電体とする電子写真感光層に露光する。

フォトポリマー型プレート
中感度(100〜200μJ/cm2)で、数十ミリワット以上の中出力レーザーが使われる。処理システム、印刷適性,廃液処理などが従来のPS版とほぼ同等であることで、低解像度から高解像度(1,200〜4,000dpi)まで対応可能である。解像力はスクリーン線数で200lpiまで実用されている。

熱モード(サーマル)

いずれも反応が遅く、光モードより3桁ほど低感度(100〜200mJ/cm2)なので、高出力(数W〜数十W)赤外線レーザーとの組み合せで使用される。3種類のシステムがある。
(1)熱反応タイプ:赤外線吸収による発熱で架橋反応などの化学反応を起こさせて現像液に対する溶解性を変化させる
(2)アブレーションタイプ:強力なエネルギーで照射部分を焼き飛ばす
(3)相変換タイプ:熱で親水性物質を親油性に(またはその逆に)変化させるだけの無処理となる

熱反応型プレート
次のように画像形成が行われる。
(1)赤外線レーザー光を赤外線吸収色素が吸収して発熱する
(2)その熱で酸発生剤が分解して酸を発生させる
(3)次のプレヒート工程(約140℃30秒程度)の加熱と発生した酸の触媒作用によりレゾール樹脂を架橋硬化させる
(4)非硬化部を現像で除去して刷版を得る。露光部分が画像となるタイプだからネガタイプである
処理機器としては、プレヒートを行うオーブンおよび自動現像機が必要である。現像液は通常のポジPS版用に類似のアルカリ水溶液である。
プレヒートタイプは,画線部の強度はプレヒート工程で形成されるので、版面全体の均一な加熱が重要で、現像ラチチュードも従来のポジPS版よりは狭い。 感度は低い(〜150mJ/cm2)ので大出力レーザーが用いられるが、1,200dpiなどの低解像度・高速書込用途には不向きである。
プレヒート不要なタイプが主流になっているが、耐刷性や高解像度への有利さからプレヒートタイプが中々捨て切れないメーカーもある。

アブレーション型プレート/デブリ処理要・不要
高出力レーザーで照射部分を焼き飛ばす(アブレーション)方式、焼き飛ばしにより親水性層が除去されると親油性層が露出して、湿し水使用タイプの刷版となる。また、シリコーン層をこすり取って水なし平版とする、水無しタイプもある。
課題は、焼き飛ばしのゴミ(デブリ)の処理で、オンプレス型では版上のデブリを手で拭き取る、またCTPレコーダーでは内部にバキューム装置が必要になる。
オンプレス用途では、印刷機上で湿し水などによる表面処理を行ないデブリ処理が不要なタイプが出てきた。

相変換型/無処理タイプ・簡易処理
特殊な親水性ポリマーで相変換またはスイッチャブルポリマーと呼ばれている。IRレーザーで描画すると親油性部分と親水性部分からなる画像ができる。LD830nmの赤外線レーザー対応で、露光のみの未処理であるが、砂目が出ない。

CTPプレートのタイプ分類

版材のタイプ 対応レーザー 代表例 版感度(一般的)
μJ/cm2
光モード
(ビジブル)
赤字はバイオレットレーザー
フォトポリマー
ネガ型
Ar、FD-YAG、HeNe、VioletLD 富士フイルム:
 LP-NS、LP-NN
 バイオレットレーザー用デジタルプレート(*1)
三菱化学:
 LA-5、LY-5
 DiamondPlate LV-1(*2)
AGFA: N90A
中感度
100-200
(バイオレットレーザー用は10-60と高感度に)

(*1)60μJ
(*2)10μJ
(*3)10mJ
LD830 三菱製紙
 High Speed CTP(*3)
(サーマルレコーダ対応)
銀塩拡散転写
(銀塩DTR)
ポジ型
Ar、FD-YAG、HeNe、RedLD、VioletLD 三菱製紙:
 SDF、SDP
 SDP-αB(アルミ)(*4)
 SDP-FB(PET)
AGFA:
 リソスターPlus(LAP-A)(LAP-O)(LAP-V)(*5)
超高感度
〜数

(*4)0.5〜2μJ
(*5)2〜3μJ
銀塩/ジアゾ複合系
ネガ型
Ar、FD-YAG、HeNe、RedLD (旧ポリクローム: CTX)
電子写真 LD780 岩崎通信機:
 エレファックスCTP
高感度
〜数
熱モード
(サーマル) 
熱反応(溶解性変化/現像前加熱あり)
ネガ型
LD830 KPG: サーマル830
富士フイルム: LH-NI
低感度
150,000以上
(150mJ/cm2)

(*6) 50mJ
熱反応(溶解性変化/現像前加熱なし)
ポジ型
LD830,YAG 富士フイルム: LH-PI
三菱化学:
 LT-N(*6)
 LT-1、LT-G
コニカ: WP-8
KPG: エレクトラ830
アブレーション
(簡易処理〜無処理) (水有り版)
LD830 PressTek:
 Anthem(アンセム *7)
 PAERLgold
 PEARLwet
KPG: サーマルノープロセス(TNPP 旧Navajo *8)
富士フイルム:無処理デジタルプレート (*9)
低感度
300,000〜400,000
(300〜400mJ/cm2)

(*7) 400mJ(ポジ)
(*8) 300mJ(ネガ)
(*9) 200mJ(ネガ)
(*10) 140mJ(ポジ)
(*11) 300mJ
(*12) 300mJ
YAG 1064 AGFA:
 Mistral(ミストラル *10)
アブレーション
(簡易処理〜無処理) (水無し版)
LD830 PressTek: PEARLdry
東レ: CG (*11)
KPG:
 サーマルウオーターレス (*12)
相変換(スイッチャブルコーティング)
(簡易処理)
LD830,YAG AGFA
Thermolite(サーモライト *13)
AGFA:Light Speed
(液状感材をスプレー)
低感度
300,000〜400,000
(150mJ/cm2)

(*13)300mJ(ネガ)
相変換(スイッチャブルポリマー)
(無処理)
LD830,YAG 旭化成
無処理サーマル

2000/05/13 00:00:00


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