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SGML/XMLを扱う自動組版ソフト「3B2」

3B2の特徴

3B2はハイエンド向け自動組版ソフトだが,SGMLやXMLを直接読みとって組版情報を付加するのが大きな特徴である。SGMLのパーサはsgmlsを使っているが,じつは3B2はDTDにはあまり拘束されず,SGMLのインスタンスを引っ張って直接タグに情報を付加する。つまり,パーサはあくまでもSGML文書を編集してインスタンスに手を加えたときのチェックに使うのである。
数式処理が得意でTeX/LaTeXをサポートしているので科学論文などの分野,とくに医学・薬学のジャーナルの作成に使われている。また,高速ページ処理機能の点から証券の報告書関連などの金融分野でも利用されているし,差分情報の管理が必要な法律関連ドキュメント作成にも使われている。もちろんSGMLを扱えるということで自動車や事務機のカタログや技術マニュアルにも使用されている。また,47ヵ国語をサポートする多言語対応機能もマニュアルに使われる大きな理由だ。

3B2は,内部でSGML文書をフォーマット変換しているのではなく,そのままの形で取り込むため,3B2で修正を加えればその場でSGML文書に反映される。SGMLやXML文書を扱うときは,そのタグの情報に対してレイアウト情報,印刷に必要な情報を付け加える。また,たとえばTeXを使う場合,最終的にユーザが残しておきたいのはTeXのデータであって印刷情報ではない。そこで,3B2は読みこんだデータに印刷情報を付加し,それに対して修正や変更を行うのだが,印刷が終わった後,データを元に戻すときは印刷あとで加えた修正や変更も含めた情報を削除して,TeXで保存できる。
生産性における3B2の最大のメリットは自動組版による高速処理である。文書にもよるが制作を完全自動化できるのが最大特徴である。GatewayのPCでも1分間に100ページ作成できる。インタフェースはもクライアントによってカスタマイズできるし,たとえばクライアントに触れられてはまずいアイコンを消すというようなことも可能だ。プラットホームはPCベースで十分で,OSはWindows95/98/2000,NT,およびSunとHPのUNIXに対応する。2バイト文字はユニコードでハンドリングするため,日本語版はNTもしくは2000のOSが必要となる。

ユーザ事例

1. 海外

マニュアル分野では,自動車のパーツカタログを作っているAutoData,Volkswagen,Boeingなどで使われている。Boeingは印刷物ではなくPDFデータを納品する。コックピットのパイロットが必要部分を検索するのに使う。科学ジャーナル関係ではElsevier,Blackwellなどで使われている。Elsevierは有名なDTDを持つが,それに沿ったSGML文書を受け取って3B2でページ作成して電子データと同時に印刷もできるようになっている。変わったところでは,EUやEuropean Parliamentなどで議事関係書類の作成に使われている。これはむろん,多言語サポートという特徴による。アメリカのLexis-Nexisという大きな法律事務所では,M&Aの関係の書類を処理する際に,短納期に対応したページアップ処理で使われている。
 

2. 日本

科学ジャーナルを印刷しているある印刷会社では,Tex/LaTexデータの処理の自動化のために3B2の導入を決めた。LaTexのデータを将来も使えるように生かしておきたいという希望があり,3B2で作成したデータは作成後,元のTeXに戻すようにしている。
自動車のマニュアルを作成している印刷会社は,従来はザイビジョンを使っていたが,日本の代理店がそのサポートを止めてしまったのでそれに代わるものとして3B2を導入した。
ある事務機メーカーのドキュメント作成にも使われている。このメーカーのマニュアルは年間7万ページという膨大な量を処理するのが特徴だ。入力はArberText社のAdeptEditorを使用し,3B2は自動組版に使っている。出力はPDFとPostScriptである。AdeptEditorを選んだ理由は,導入当時FrameMakerがなかったからということだが,使ってみると非常に使いやすいのでそのまま今でも使っている。

3B2の導入

自動組版機能はテンプレートを使用することで可能になる。テンプレートは仕事に応じて作成しカスタマイズして使用する。テンプレートを使えば習得期間も短縮されるし効率もあがる。テンプレートはユーザのワークフローによっても変わる。すでにSGML文書を作成するワークフローが構築されていれば,あらかじめそれに特化したテンプレートをアルテック側で作成して本体と合わせて納品することができる。操作も,まずそのテンプレートの使い方をマスターしてもらい,それに慣れたら,さらに実際の仕事に応じてテンプレートを改造すればよい。
3B2は自動組版ソフトではあるが,ユーザによってはデータを流し込んだ後で体裁を整えて出力したいということもある。その場合は自動処理用のテンプレートは使わず,ソフトウェアの基本機能だけ覚えて使ってもよい。テンプレート作成からすべてユーザ側でやってみたいという希望があれば,それにも対応したトレーニングが可能である。
テンプレートを作るときは,最初に大きな体裁を作って,そこに実際のデータを流し込んで調整する。泣き別れをどうするか,リンクはどうするかなど,実際の文書としてあるいは印刷物としての構成と体裁およびワークフローの構成上必要な形を整えていく。

日本語版

日本語バージョンはいちおう完成しているが,現在,三松堂印刷の協力を得てプロフェッショナルユースに耐えるものにするため,なお調整中である。日本語版ではかなり細かい設定でルビを付けられるし,縦書きも可能だ。
Advent社は,ラテン系の言語から,アラビア語やヘブライ語のように右から左に記述する言語,さらにハングル,中国,日本の縦書きにチャレンジしている。ユーザにはルビなんかいらないから早く出してくれとか,SGMLには縦書きはないから不用だなどと言われているが,それでも納得いくものを作りたいということである。
イギリスから日本語版のアルファバージョンが来たのは1999年10月頃だった。そのときはルビ機能はできていなかったが,2000年2月のPAGEショウで日本語バージョンを出展したいと要請してルビをサポートしてもらった。
現在は,実際の仕事のデータをサンプルにして,最終チェックを行い,またメニューの日本語化の仕上げを行っている段階である。ユーザで興味のあるところがあれば日本語バージョンを導入していただきたいと考えている。試してみたいという話があれば協力したい。韓国語や中国語など2バイト圏バージョンの開発はすべてAdvent社とアルテックの2社で共同して行う。最初が日本語版で,そのあと中国語,韓国語という順である。中国語,韓国語も2000年のうちに完成する予定で開発を進めている。
日本語版のルビ機能は,たとえばクライアントによって特殊なルビがあれば,それに対応するスタイルを作って,クライアントごとにルビのスタイルを選択するようにできる。あるルビ規則をデフォルトにして,それ以外は「例外ルビ」などというタグを作って選択する仕組みも可能だ。 また,ハイフネーション辞書を発展させたものを日本語バージョンに付け,ぶら下がり処理にも対応する。。句読点が行末にくればフレームから出てもいいという指定をディクショナリに登録しておく。これもユーザがそのように指定しカスタマイズできる。


(テキスト&グラフィックス研究会ミーティングにおけるアルテック社の説明より要約)

2000/06/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会