nexpo2000報告 その2
新聞システムのレイアウトエンジンとして、Nexpo99では大々的に取り上げられたAdobeのInDesignが一年経った今、バージョンが1.5になるものの、Nexpo2000では昨年と殆ど同じデモが繰り返されていた。ソフト面ではQuarkのQPSにおけるCopyDeskに相当するAdobe InCopy という、InDesignと連動して動くテキストエディタが新たに付け加わったが、これらでQuarkの商売に何らかの打撃を与えるようなものではなかった。
これはInDesignの出荷が昨年の当初の予想よりも何ヶ月か遅れて、昨年中にInDesignを使ったシステムを仕上げる予定のところが間に合わなかったことと、この春のバージョン1.5騒動などの要因があるのだろうが、InDesignの売り物であるモジュール性を活かした応用というのは、「Adobe+インテグレータ」の取組みが必要で、これも今は遅れる要因になっているようだ。
このようなわけで、2000年6月のNexpo2000にはInDesignに期待して集まった人もいて、InDesignのデモをしているブースは人気が高かったものの、目新しいものはいくらも見られなかった。アメリカではQuarkのユーザの多くはこの1年のうちにInDesignも買ってみたようであるが、当初「Quark Killer」と呼ばれていた時にような衝撃的なことが突然起こるはずもない。この1年間に何度か書いてきたように、InDesignのスタートはスローである。
しかしInDesignへの取組みは続いているし、減っているわけではない。一方QuarkはQuarkXpress5.0でWEBデザイン機能に力を入れている。AdobeはInCopyを出したことからわかるように、レイアウト作業から編集作業に踏み込んだので、コンテンツ管理機能が避けられないようになり、QPS相当のものは出すことになるかもしれないが、今後は両社が正面からぶつかるものでは、ますますなくなるかのようである。
InDesignのこれからの動きを見る上では、InDesign自体の機能を理解するだけではなく、各インテグレータの個別システムを追いかけなければならない。インテグレータのInDesignへの思いはさまざまである。従来からQuarkを使おうとはせずに、自社専用レイアウトシステムに固執していたところが、InDesignに代えてしまうというDTI社は強力なInDesign派であるが、まだInDesign中心のインテグレータは多くはない。
実際のシステムは、Quark用に原稿やテンプレートを吐き出すエディトリアルシステムが、InDesign対象に切りかえるところが一部あり、どちらかというとQuarkに吐き出すだけでなくInDesign向けにも吐き出せるようにする「オプション派」のBaseviewなどが主流である。さらにInDesign用のプラグインとか、自社システムとInDesignのインタフェースを作っているところはいろいろある。それらの代表的なものをnexpo2000の出展の中から拾うと、次のようになる。
AdLizard AdLizard.comの、ブラウザを使った意匠広告の制作システム。
ACT Advanced Publishing Technologyの、エディトリアル用ワークフロー、コンテンツ管理システム。
MediaDesk Advanced Technical Solutions,Incの、データベースとWordを使った編集システム。
Prestige Content Management System Atex Media Solutionsの、制作管理システム。webも連動。
ProductionManagerPro Baseview Products,Incの広告管理システムと、テキスト編集のIQue Server。
NewsDesk, AdDesk CCI Europeの、クロスメディア編集システムと、広告ワークフロー。
AdSpeed5, PageSpeed5, SpeedWriter5, ImageSpeed5 DTI(Digital Technology International)の統合新聞制作システム。
CyberPage Geac Publishing Systems,Incの、データベースを使った編集システム。
JazBox Harris Publishing System Corp.の、データベースを使った編集システム。新製品。
PageDirector Managing Editor Inc.の、代表的な割付システムと、広告ワークフロー。
promo.planner MediaBridge Technologies,Incの、クロスメディア出版システム。
AdScan Pongress Newspaper Systemsの、版下をスキャンしてEPS化する自動ワークフロー。
ART Press Computer Systemsの、印刷用広告をWEBに展開するシステム。
Insiight Content Management System Integrators,Incの、編集ワークフロー管理。
Smart Style, Smart Layout WoodWing Softwareの、テキスト編集用プラグイン。
これらアメリカでのInDesignの動向と編集システムのこれからの考え方については、7月4日のnexpo2000報告 : T&G研究会拡大ミーティングにおいてもとりあげる。
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2000/06/27 00:00:00