フルデジタルワークフローでのプルーフ・検版

プルーフとは?

 校正,プルーフ,検版などさまざまな言葉が使われるが,これらはすべて「チェック」すなわち間違い探しである。つまり,すべては望むべき結果との比較である。比較して,同じでない場合,あるいは,その差が許容範囲を越えている場合は修正する。これが校正,プルーフ,検版に共通の基本的な意味である。これらは印刷物製作というワークフローのなかで,ある工程の完成物を次の工程に渡す時に必要なチェック作業と捉えられる。
同じチェックなのに呼び方が異なるのは,従来,これらのチェック作業が工程ごとに独立した方法で行われているからである。デジタル化でワークフローの変化が進展すれば,こうした呼び方も変わっていく可能性もある。

 最近の印刷関連メディアは何かというとCTPを取り上げて,CTPのための色校正やカラーマネジメント,ワークフローの改善などの必要性を強調する。しかし,これは話が逆で,もともと重要なのはワークフロー全体のデジタル化,すなわちコンピュータ化であって,それを抜きにしてCTPそのものの長所や短所を議論してもあまり意味はない。
いい換えると,CTPはネットワークをベースとした製作ワークフローのなかに置いて初めて,その力を発揮できるパーツのひとつなのである。CTPが中心になってワークフローが動くわけではなく,むしろ,ワークフロー変革の起動力のひとつがCTPだと考えられる。従って校正,プルーフ,検版についても,デジタルワークフローからみた総合的な検討が必要である。

プルーフの種類

 校正・プルーフ・検版は本来,最も重要な作業のひとつであるにもかかわらず,従来あまりクローズアップされてこなかった。その大きな理由のひとつは,アナログであれデジタルであれ,ワークフローが分断されているうちは,各工程の独立性が強く,チェック作業がそれぞれの工程における補助的な作業という意味しかもたなかったからである。
しかし,フルデジタルになって各工程が接合されると,チェック作業が各工程同士の接合面(インタフェイス)となるわけで,ある意味では,これからのワークフローの要になるといっても過言ではない。

 そうであれば,何のチェックをどの段階でどのように行うか,改めて体系的に捉え直す必要がある。各工程が分かれている時は,クライアントが校正するにしろ印刷会社の責了にするにしろ,あるいは色校正を行うにしろ検版を行うにしろ,その場で完結したチェック作業が行えた。
しかしワークフローが統合されると各工程の独立性が薄れ,どこからどこまでをだれがどのように責任をもつのかあいまいになる。例えば,最近はPDFによる校正が話題だが,本格的なPDFワークフローのなかで,だれがPDFを作るかという問題も指摘されている。

 校正・プルーフ・検版が,これまであまりクローズアップされてこなかったもうひとつの理由は,これらが主に人間の知識と経験に依存する作業だったからである。しかし,この点もまた,ワークフローのデジタル化によって変化することは間違いない。
むろん,人間が目で見て「チェック」する作業はおそらく最後までなくなることはないだろう。しかし,必要に応じて機械にやらせたり,ある程度,自動化することは可能である。そこで必要になるのは,それをどのような形でワークフローのなかに取り込んでいくかということである。何もかもコンピュータにやらせるということではない。

 以上のことから,従来の校正,プルーフ,検版というような分類は分類として尊重するが,ここではネットワーク利用やワークフローの統合などの見地から,これらをまとめてチェック作業と捉えて考えてみたい。

ネットワークと校正

 今後,ワークフローの統合に向けて,実質上,最も重要になるのはネットワーク技術の利用である。これはもはや遠回りな話ではなく,ネットワークこそ,これからのパブリッシング―― 印刷・出版製作の欠くべからざる要件であって,ネットワークが基盤になければワークフローも築きようがなくなるだろう。ましてCTPやPDFもすべてネットワークがあっての話である。こうした前提に立てば,ことさらリモートプルーフなどという言葉を使わなくとも,校正作業でいかにうまくネットワークを利用するかが,大きなポイントであることは明白である。

 リモートプルーフの現実的なポイントは,データの転送量と出力機である。また,当然ながらカラーマネジメントも考慮しなければならない。実際,製品としても,回線サービスとプリンタという組み合わせのサービスが提案されている。ただここでも,結局,いちばん大事なのは,どこのだれとどういうやり取りをするかをきちんと詰めておくことである。
DDCPやカラープリンタによるオフライン校正でも,問題は品質より,むしろコミュニケーションだといって良いだろう。まして,リモートプルーフでのポイントはクライアントであれ工場であれ,相手とのやり取りに何が必要かを考えたネットワークを構築することである。しかし,そう考えれば,これはネットワークだけの問題ではすまなくなり,結局,全体のワークフローの問題に発展する。

 Vio,WAM!Net,GTRAXなど,ネットワークサービスが欧米ではある程度定着しており,日本でも登場時には話題を呼んだが,その後あまり浸透していない。その理由としては,ひとつには通信料金などのサービス自体の要因もあるが,やはりネットワークをベースにしたワークフローが,まだ印刷・出版界に確立されていないことだろう。たとえ安くて簡便なネットワークシステムが提供されても,それに載せるべき仕事の流れができていなければ利用は進まない。逆に,大きな需要があれば欠点は解決されていくというのが応用技術の特徴でもある。

 しかし,実際問題として,どのような形でネットワーク利用に取り組んでいくかは難しいところである。こういう時は,まず理想的なあるべき形を設定した上で,そこへ向かう段階的な現実目標を設けるのが良いだろう。

 第1ステップとしての社内LANは既に不可欠だし,すぐにも実現できることである。第2ステップとして,離れた場所にある工場や支社などと,本格的運用を前提とした実験的なネットワークを結んで,データのやり取りやリモート校正を実施する。ここで,例えばISDNが良いのか,あるいは何らかのネットワークサービスを利用するか,もっと別の方法を考えるかを判断する。これがうまくいけば,第3ステップで取引先との協議を行うことになる。

ワークフローと校正

 ワークフローを考えるといっても,ここでは内容のチェック,すなわち原稿チェックや文字校正は除外しよう。するとPostScriptベースのワークフローで,まず問題となるのはPostScriptエラーの検出と訂正である。ここでは無駄な出力と,それにかかる時間をなくすために,プリフライトチェックを行うことが主流になりつつある。
プリフライトチェックソフトはもう何年も前から紹介されているが,現在では画面上で各版別にチェックできる検版に相当する機能や製版機能,面付け機能など,多様な機能を備えるようになった。PostScriptエラーの対応は,基本的にはDTPアプリケーションからRIPまでの処理工程部分でのやり取りだから,この部分ではあまり問題なく導入が可能だろう。

 それに,望むものとの比較という文脈でいえば,PostScriptエラーは望むべき正しい結果に対して間違いだということが明らかだから,原則として,たんにそれを漏れなくチェックする自動的・機械的な作業が行えれば良い。

 問題は色校正である。これについてはカラーマネジメントが中心的話題になるので,ここで詳しくは触れないが,もうおわかりのように色校正の問題は,結局,正しい姿,望むべき結果がそもそもあいまいだというところにあり,やっかいである。クライアントであれ担当者であれ,いつまでも個人の目を基準にしていては,ワークフローのなかに色校正をしかるべく組み込むことは難しい。ましてやリモートプルーフなどは到底不可能である。

 カラーマネジメントは「色合わせ」ではないことを今一度確認しておきたい。「マネジメント」とは,文字どおり管理することであって,「色を合わせる」ことではない。色校正の効率化,自動化のための仕組みと割り切って,純粋に機能面からCMSやリモートプルーフシステムを検討すべきである。数値化して対応をとっているにもかかわらず,さらに人間が目でチェックして「合う」とか「合わない」とか言うのはおかしい。それくらいならカラーマネジメントなど考えず,始めから人間がチェックするワークフローを組み立てるほうが効率的である。

検版

 「検版」は何ともあか抜けない用語だが,以上のようにワークフローを考えてくると,「版」そのものをチェックする検版作業がデジタルワークフローにおける最大のネックであることがわかるだろう。アナログとデジタルが混在した今のワークフローだからこそ,「検版」が重要なのだとも考えられる。
しかし,最終成果物が印刷という「物」である限り,それを検版と呼ぶかどうかはともかくとして,デジタルとアナログの接点におけるチェック作業がなくなることはない。フルデジタルへの過渡期だから検版が重要なのではなく,そもそも最も重要だった工程が,デジタル化の進展でようやくクローズアップされてきたのだと,積極的に捉えて取り組んだほうが良いのではないだろうか?

 検版作業でチェックされるのは,@文字化け,ごみ,傷,汚れ,A網点,B画像品質,C現像ムラ,などである。これらのチェック項目をデジタルワークフローにおいて,どこでどう吸収するかということが問題になる。文字化けはプリフライトでチェックでき,対応できる。画像品質は広い意味でのカラーマネジメントで対応可能だろう。
しかし,ごみや傷,汚れは版自体の問題だし,網点は当たり前だが,網点生成してチェックしなければならないから,検版という工程はどうしても省くことはできない。逆にいえば,デジタル化,コンピュータ化されるワークフローのなかで,最後まで残されるチェック作業が検版である。

 現状の検版作業ではアナログとデジタルが併用されている。「版」のチェックであるからにはこれはむしろ当然で,実際,メーカーの提供する検版装置にも,文字どおりアナログ・デジタル両方に対応するものがある。ただ,デジタル・アナログといっても機械化・自動化するからには,そこで何らかのデータ化が行われる。デジタル検版ではRIP後のTIFFデータなどをピクセルレベルで比較するが,アナログ検版では比較する版を重ねて光を当てたり,CCDなどを利用して取り込み,違いを表示するような仕組みである。

 PAGE2000の展示の特徴のひとつが各種検版ツールの充実であった。ツールとしては地味で目立たないものだが,メーカーが敏感に需要動向をつかんでいることがわかる。PAGE展ではPDFワークフローやネットワーク,データベースなどを利用した大がかりなシステムが話題となったが,検版ツールはこれらと無関係ではない。統合的なワークフローを構築するということは,ひとつ一つの工程をきちんと組み上げて前後につないでいくことであって,その意味で,検版をどうするかを考えることは,文字どおり,デジタルワークフローへの第1歩,試金石となるだろう。

 今回の企画特集ではDS技研,プロスパークリエイティブ,ソフトウエアトゥーの各社に協力いただいた。製品としてはデジタル検版やプリフライトチェックなどの分野に相当するが,その工程だけではなく,ワークフロー全体を考えた導入を検討したい。

月刊プリンターズサークル 2000年7月号より