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印刷ビジネスの価値を高めるネットワーク

高速ネットワークの利用
今年は,IT戦略というキーワードがいろいろなところで目につくようになった。日本印刷技術協会主催のPAGE展でも「グラフィックアーツのIT戦略」というタイトルをつけていたが,このIT戦略は,ネットワークをどう利用するのかがキーになっている。ネットワーク利用という視点では,社外と接続するためのWAN技術と社内のLAN技術を何のために利用するのかがポイントになる。

1999年から,グラフィックアーツ業界向けのネットワークサービスが出てきており,印刷企業同士,または顧客との間でどのように利用できるのかが模索されている。これらは専用線を利用した専用サービスで,特定の企業間で利用するためのサービスである。また,最近ではインターネットを利用したサービスも多く出てきており,ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)と呼ばれるサービスビジネスが新たに登場し,ネットワークを介してさまざまなアプリケーションサービスが利用可能な状況になりつつある。

ネットワーク利用の先進国である米国の印刷業界では,ネットワークをどう利用しているのか。今,米国の印刷業界ではさまざまな吸収・合併が行われている。これは印刷業界が厳しい競争のなかにあり,競争に勝つための拡大が行われていることを意味している。そして,印刷サービスを全米で展開するため,全土をカバーする営業拠点や出力拠点を展開しているが,この背景にはネットワークの普及がある。

印刷会社がこのような吸収・合併などによるグループ化を行うと,受けた仕事をこなす上で,品質や処理レベルの整合性が必要になる。また,当然ネットワークの整合性も必要になる。つまり,すべてのデジタルデータがネットワークを通じて交換され,どこで処理し印刷しても,同じ色や同じ印刷物が得られるというデータの整合性,処理の整合性,出力品質の整合性が求められることになる。米国では,このような環境を自社が構築する高速なバックボーンネットワーク上に実現する企業から,WAM!NETやVioなどのネットワークサービスの利用により実現する企業がある。

実際には,データセンターでデータ処理の集中化を行い,出力の色管理を行うことにより,どこの営業拠点で受注したものでも,同じ結果が得られる仕組みを提供できる。そのために高速ネットワークを利用する。また,データセンターによる集中化によって,顧客がどこにいても自社のデータを参照利用できる仕組みを提供できる。このようなネットワーク利用が米国では行われている。

日本でも始まる高速専用線サービス
99年から,日本でも高速なネットワークサービスが開始されている。米国で利用されているWAM!NETやVioの日本進出に加え,日本企業によるGTRAXと,出そろってきている。

WAM!NETは,米国を中心にヨーロッパ,アジアなどに普及し,日本でも日本ワムネットからサービスが提供されている。ノックと呼ばれるネットワークの接続センターと接続し,社内にはNAD(Network= Access= Device)と呼ばれるゲートウェイ装置を置くことで,相手にデータを送り,かつ,いつ相手が受け取ったかの履歴を見ることができる。WAM-NETのサービスは,基本的にはネットワークアウトソーシング事業で,WAN側はすべてWAM!NET側で面倒をみてくれる仕組みである。日本でのサービスでは1.5Mbpsで,これは,1時間で約400MBの転送の保証が可能である。また,接続方法としては,アクセスポイントを設け, ISDNを使ったユーザへの接続サービスも行っている。これには,4-SightISDN Managerを使って接続できるようにもなっている。ISDN Managerは,扱うデータがそれほど多くないユーザを,NA Dは大容量のデータを扱うユーザを想定している。

Vioはブリティッシュテレコムとサイテックスの共同企業が取り扱うサービスで,ヨーロッパや北米などの各地でサービスを受けることができる。国内では,ISDNやATMなどの通信回線を利用し,取り扱うデータ量に応じて64Kbpsから135Mbpsまで拡張可能である。ジョブデリバリサービスは,ジョブチケット方式により入出稿情報が管理でき,送信側,受信側の双方でデータの送達確認ができる。

遠隔地のPSプリンタに出力できるリモートプルーフィングサービスは,センターで遠隔地のプリンタ情報や色管理情報を管理する。

GTRAXは大日本スクリーン,富士フイルム,NTTコミュニケーションズから提供されるデジタルネットワークサービスである。全国をカバーする大規模なネットワークにより,各地のクライアント,広告代理店,デザイン制作会社,印刷会社を結びつけることが可能である。全国に110カ所以上のアクセスポイントを備えていて,ユーザは,ダイヤルアップを含む64Kbpsから6Mbpsの高速専用回線で接続ができる。エクストラネットの構築を支援する「企業間LAN接続」,大容量ファイルを安全に送受信する「コンテンツ配送サービス」などの機能があり,大規模なセントラルサーバにより,画像・文字データなどのさまざまな素材を共有し,送受信によって自在に活用できる。

これらの3つのサービスは,今年中には本格的な利用が始まりそうであり,企業間を高いセキュリティで結ぶサービスとして利用できるようになる。

ISDN利用による高速なデータ転送
専用線サービスを利用するほどデータ量が多くなく,頻度も高くないユーザ向けには,ISDN利用のネットワーク転送がコストパフォーマンスが良い。ISDNは通常では,64Kbpsまたは128Kbpsであるが,印刷業向けのデータには,ISDNを何本か束ねてさらに高速でデータを送ることができるアプリケーションがある。例えばノヴァテックが代理店となっている,HERMSTEDT社のGrand Central Proでは,Macintoshに接続してISDNを最大4チャネル利用し,10MBのデータを3分で送ることができる。

Tooが国内総販売代理店になっているWAM!NET Transmission Manager(従来の4-Sight iSDN Manager)は,やはりISDNを束ねて送るものである。高速なMac用のデータ転送を行える装置として,実績を上げている。

これらの装置は基本的に,専用線サービスまでを必要としないユーザ層や用途向けに低価格なネットワーク環境を提供している。

インターネット利用のサービス
WAN技術の進歩により,今年はさらに高速なネットワーク利用への第一歩が踏み出されそうである。背景にはNTTの提唱するFTTHがあり,またバックボーン用の光ファイバ上で,複数のデータを束ねて高速に伝送する技術であるWDM(Wave length Division Multiplexing)のような,ギガビットからテラビットの高速バックボーンを構築する技術などが実用可能になってきている。

このためインターネットの高速化も可能になり,今後はインターネットを利用したネットワークサービスも多く出てくると思われる。専用線や専用サービスなどのネットワーク利用を行うには,自社のネットワーク構築が必要であり,ネットワークの利用拡大に伴い,構築の負担は増えてきている。そのため,この負担などを減らす意味からも,ネットワークサービスのアウトソーシングなどの要求が高まってきている。このような背景から,ASPというビジネスが登場してきている。

これは,インターネットなどのネットワークを通して,さまざまなアプリケーションを提供するサービスである。単純にサーバを利用させるサービスや,ECなどのデータセンターのサービス,さらに社内向けとしては,基幹アプリケーションの利用を提供するサービスなども,これに当たる。そのような位置づけのサービスのうち,コンテンツのデジタルデリバリサービスなどに利用できるe-Parcel(e-Parcel Digital Delivery Service)は,印刷業向けのサービスとして利用されている。

これは,米国e-Parcel社(マサチューセッツ州)がプロトコルレベルから開発した技術をベースとしたサービスで,初期投資不要で,ユーザは利用した配送料のみを支払う「デジタル世界の宅配便」である。クライアントとしてはWindows版,Mac版の利用が可能で,印刷業でも使いやすい。専用のソフト(無料)を導入することにより,暗号や圧縮が自動的に行われ,確実に相手に送られる。また,プログラムモジュールやサーバの子機の導入によるVPNの構築も可能で,e-Parcelを電子物流のエンジンとして活用している。

このようなインターネットを利用したサービスは低価格で導入できる上,使いやすいものである。今後,インターネットの高速化がさらに進めば,さらに大容量のデータをも扱うことが可能になる。

インターネット上のサービスの利用という意味では,顧客との受発注やコミュニケーションをサポートするようなアプリケーションも利用可能になりつつある。今までは,こうしたことを行うにはシステムを作成する必要があったが,現在は,ネットワークを利用してシステムを借り,顧客との間で利用するような環境が整いつつある。これらもインターネット上で使えるサービスである。

インターネット上のアプリケーションサービスは,データのデリバリだけではなく,受発注などのEC関連の利用も可能にしつつあり,低価格でシステム化が可能なネットワーク利用として大いに期待されている。

LANなどのインフラ整備
外へのネットワーク利用として,IPネットワークサービスが普及することにより,LANとのインテグレーションもさらに進むことになる。このため,LANの高速化やセキュリティ対策が今後,検討すべき課題になってくる。

LANの高速化においては,ギガビットイーサネットの利用になるが,最近は,ギガビットイーサネット対応のスイッチングHUBの低価格化が進んでいる。このため,LANのバックボーン側でギガビットイーサネット化を検討できる時代になってきた。スイッチングHUBは,高速化,低価格化,さらに高機能化が進んでいる。スイッチング機能も,レイヤ2,レイヤ3,レイヤ4,またVLAN機能など,高度な機能を搭載し,複雑なネットワークを制御できる装置になってきている。

さらにサーバ機能の高速化という点では,アクセスが集中するところの負荷分散を実現するための装置などが登場している。負荷を分散するためには,サーバを複数台にする必要があるが,これを実現するクラスタリングやロードバランスなどを実現する装置が出てきている。

またサーバ装置が複数になる場合,データソースにどのサーバでもアクセスできるようにするためのストレージ技術も整いつつある。ストレージエリアネットワークは,ディスクやテープ,その他ストレージ類をネットワーク接続して,どの装置からでもアクセスできるようにするネットワークである。

高速化と同時に,信頼性と安全性も検討する必要がある。社内外がすべてネットワークで結ばれると,ネットワークは信頼性が重要になり,また,外部からの侵略に対するセキュリティなども重要課題になってくる。このため,ネットワークやサーバ装置の二重化などの信頼性の構築,ファイヤウォールなどのセキュリティ製品の導入,そして,高度化するネットワーク技術などを外部へ委託するアウトソーシングの利用なども検討課題になってくる。

最近は,ネットワークの監視や認証,セキュリティなどを外部へアウトソーシングできるサービスが出始めている。リモートで監視や認証を行うサービスである。

月刊プリンターズサークル 2000年8月号より

2000/08/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会